近代ロケットの父・ゴダードの名言「昨日の夢は、今日の希望であり、明日の現実になる」、英語出典(『ROCKET MAN』)
先日は打ち上げ「中止」だった、日本の国産ロケットH3初号機。今回(23年3月7日)は「失敗」となった。といっても、失敗の様子は動画を見ても分からない。遥か上空で、第2段エンジンのトラブルが発生したらしいから。
このニュースについて、私は先日の「中止」騒動と合わせて感想を書こうと思ってたが、やはり止めとこう。それより、再度の打ち上げの前日(3月6日)、朝日新聞・朝刊のコラム「天声人語」が面白いエピソードを紹介してたので、そちらを取り上げる。
「・・・ゴダードは液体燃料ロケットの打ち上げに史上初めて成功し、近代ロケットの父と呼ばれた。名言を残している。『昨日の夢は今日の希望であり、明日の現実となる』
▼これをあいさつのたびに引用した生徒会長がいたというから驚く。中学時代の諏訪理さん。2千倍を超える競争を勝ちぬいて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士候補の一人となった。46歳での合格は歴代最年長だそうだ・・・」

☆ ☆ ☆
当サイトでは、今まで、多数の名言を扱って来た。名言サイトの類は世界中にあるが、日本語、英語その他、言葉の出典を書いてないことが多いし、しばしば本人が語ってない偽物の言葉も掲載してる。それをうっかり引用してるテレビ番組も少なくない。
今回も正直、キレイ過ぎる言葉だからちょっと不安だったけど、どうも本物らしい。1次資料として、日記と報道が残ってるようで、それらを元にした本格的な伝記(2次資料)もすぐ発見。名言の出典探しとしては、わりと簡単な部類だった。実物を見ておこう。

『ROCKET MAN』、David A. Clary(デビッド・クレイリー)著、2003年。インターネット・アーカイブで限定公開されてた。巻末に付いてる大量の注と文献を見るだけで、かなりの労作だろうと想像できる。
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下が、ゴダード(Robert H. Goddard)の言葉を引用した箇所。第1章「記念日」。1904年、高校の卒業式で、卒業生の男子代表として行った演説のラスト。

途中までの英文は、ごく大まかに文脈だけ書いとこう。── 我々は無知だから、未来について確実なことなど何も語れない。真剣に誠実に努力して初めて、将来を予言できるのだ ──。
・・・and he should derive courage from the fact that all sciences have been, at some time, in the same condition as he, and that it has often proved true that the dream of yesterday is the hope of today and the reality of tomorrow.
そして誰もが、次の事実から勇気をもらうべきなのだ。すべての科学は、ある時期、自分と同様に未熟だったが、しばしば真実だと示されてることがある。昨日の夢は、今日の希望であり、明日の現実なのだ。
細かい話だが、最後はbe動詞の現在形「is」があるだけで、科学の歴史の事実を述べてる。だから、朝日新聞の「明日の現実になる」という翻訳は選ばず、「現実なのだ」と訳しておいた。もちろん、現実になると訳した方が一般ウケするだろうし、文法的・慣用的にもおかしくはない。
ちなみに、ゴダード本人にとっての一番の「記念日」は、この演説の日ではなく、その5年前だったらしい。はしごを作って、木に登って、遠くを見たそうだ。はしごが、ロケットの比喩。木が、宇宙や星(火星とか)の比喩、メタファーだろう。
☆ ☆ ☆
なお、ゴダードのスピーチの全体は、夢は現実になるというような明るい話ではないようだ。むしろ、現実にするまでの大変な道のりに焦点を当ててるのだろうと思う。
実際、タイトルも、「On Taking Things for Granted」。普通に訳すと、物事を当たり前だと考えることについて。当たり前で済ませる発想が、エラーにつながるという考えもあったらしい。
ただ、このタイトルには、もう一つの意味が密かに重ねられてると思う。自分の夢は必ず現実になる。そんなの当然だ。この熱い人間的な思いこみは、新分野の開拓者にとって重要なのだ。もちろん、成功するとは限らないどころか、失敗の方が多いだろう。しかし、多数の失敗がやがて、革新的な成功につながる。
ただし、誰がいつ成功者として輝けるのか。それはなかなか分からない。神のみぞ知るとまでは言わないが、専門家でも予測困難だろう。「昨日の夢は、今日の悲観であり、明日の非現実となる」。これもまた、厳しくありふれた事実なのだ。
それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 1938字)
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