一筆書きできない道、奇点を2コに修正すべき&万力で締め付けられる黒い心、光と影の映像美~『教場0 風間公親』第1話
最近、あまりテレビドラマを見なくなってるけど、たまに見ると、やっぱり面白い。あまり予備知識を持たず、睡眠3時間半の仕事直後にボーッと見始めた、フジテレビ『教場0(ゼロ)』第1回。最初から最後まで引き込まれて、ホントに目が覚めた。
私が一番、素晴らしいと思ったのは、映像の美しさと巧みさ。演出・プロデュースは、中江功。ただ、その映像の良さを語る前に、すごく惜しい映像ミスについて説明しとこう。
犯人「日中弓」の名前の「一筆書き」が、できない映像になってた問題♪ 数学パズルでよくある話だから、私はリアルタイムですぐ気付いた。「奇点」が3コあるから、一筆書きは不可能。
これは長岡弘樹の原作や、君塚良一の脚本のミスじゃなくて、美術さんの制作ミスだと想像する。で、誰も気付かなかったか、気付いたけど直さなかったか。
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amazonで原作小説『教場0』と『教場X』の電子書籍サンプルを見ると、ドラマ第1回は、2つのストーリーを組み合わせてる。前半が、小説『教場0』の第1話「仮面の軌跡」。小説とドラマは、かなり違いもあるように見えたけど、ポイントは同じ。
上はテレビ画面と字幕。「『日中 弓』は一筆書きで書ける」。谷本(濵田崇裕)が、主人公の1人である刑事の卵・瓜原(赤楚衛二)に種明かしするシーン。
タクシーで殺された被害者・芹沢健太郎(久保田悠来)が、直前にタクシーの進路の道筋で残した、ダイイング・メッセージ(死の伝言)。その謎を風間公親(木村拓哉)が読み解いたことが、犯人の逮捕につながった。
この映像だと一筆書きできないことは、ツイッターの一部でも話題になってた。ただ、あまり突っ込みツイートは多くなかったから、気付かなかった視聴者が多かったんだと思う。さらに、数学的な説明や代案まで示してたツイートは一つも見当たらなかった。マニアック・ブログの出番だろう♪
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曲がった直線で描いた道筋の図で、線が偶数本(2本、4本、6本・・)出てる点を「偶点」、線が奇数本(1本、3本、5本・・)出てる点を「奇点」と呼ぶ。上のテレビ画面では、奇点は3コある。
一筆書きできる道筋で、普通の点は、そこに入る線と出る線、合わせて2本が1セットになってるから、偶点になる。一方、始点(スタート地点)は、そこからいきなり線が1本出るから、フツーは奇点。終点(ゴール地点)も、そこで線が1本入って来て終わりだから、フツーは奇点。
ということで、一筆書きができる道筋は、ほとんどの点が偶点で、2つだけ奇点になる。ただし、始点と終点が一致する時だけ、例外的に奇点は0コ。すべて偶点になる。
結局、一筆書きできるかどうかは、奇点の数が0コか2コになってるかどうか、そこだけで判別可能。テレビ映像では奇点が3コあるから、一筆書きできないとすぐ分かった。
では、どんな映像なら一筆書きできたのか? 例えば下のように、「日」から「中」に向かう途中でちょっと右側に回り道すれば良かったのだ。このように修正しておけば、奇点は2コだけ(始点と終点)になってた。ブルーレイとDVDに収録される際には、訂正される・・ことはないだろうね♪ 買うのはキムタクその他のファンだろうから、そんなの気にしないはず。
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後半は、小説『教場X』の第1話で、ドラマのサブタイトル『硝薬の裁き』はこの後半から付けられたものだ。そのためなのか、後半の方が映像に力が入ってたと思う。フジテレビのドラマ(特に月9)の伝統だろう。
分かりやすい映像美は、瓜原が火薬アレルギーという点に気付くシーン。新人の彼と「バディ」(男2人組)を組む指導官・風間は、1人で同上で剣道の鍛錬。明暗が鮮やかなその剣道シーンと、瓜原が1人で謎を考えるシーンが、切り返しショットの形で組み合わされてた。
特に素晴らしいのは、道場の床に、風間の影がキレイに映ってる所。CGで合成したにせよ、なかなか作れない映像だと思う。もちろん、床の影は、瓜原を暗示するイメージだ。離れてるけど、2人が一体となって事件を解決、成長してると。
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一方、分かりにくいけど見事だったのが、パパ(市原隼人)が逮捕(連行)された直後の、可愛い娘・麗華ちゃん(山田詩子)の描写。小説だと、名前の漢字は「麗聲」。
パパが殺人犯だと、自分が教えたために、1人ぼっちになってしまった。たった1人の家族に対する裏切者になった形。正しいことをしたと思いたいけど、パパはママを殺して知らんぷりしてる犯人を殺したんだから、すごく悪い事とは思えないし、むしろパパに「ありがとう」と感謝したいほど。
強く締め付けられるような心の痛みを表現する省庁が、パパの工場(製作所)の万力(まんりき)だったのだ。ツイッター検索をかけると、ツイートが全く無かったから、ほとんど誰も気付かなかったということになる。
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万力とは、非常に強い力で締め付けるための工具で、私は中学の技術の授業で使ったと思う。あと、生まれ育った実家にあった気もする。上の写真は、amazonより。左端の棒みたいな部分をクルクル回して、上側のカニの爪みたいな部分(シルバーになってる所)で挟み付ける。税込8000円ちょっと。
ドラマではラスト、パパが捕まった直後、まず灯りが消えた蛍光灯が映される。続いて、ドライバーや錐(キリ)みたいに、細長くて尖った物が映される。胸を突き刺すような苦しさの象徴表現。
そして、望遠(ズーム)レンズを使って、手前の万力のボケた爪の間から、麗華ちゃんの手が映される。まるで、パパを裏切る形の絵を描いてしまった手に、罰を与えるように。
最後はクックリと、万力の爪と麗華ちゃんの後ろ姿が映される。どちらも、真っ黒な状態。ただし、遠くの窓から光が差し込む中で。
実は、万力は、下のお絵描きシーンにも組み込まれてた。パパが銃を作る(想像の?)シーンの映像として。パパは、殺人と火薬アレルギーで娘を苦しめる万力になってしまってるし、パパ自身も、ママひき逃げ犯人や罪悪感という万力に締め付けられてる。
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なお、麗華ちゃんが黒いクレヨン(?)で絵を描くシーンは、知る人ぞ知る、昔の公共広告機構(現在のACジャパン)の名作CMに似てた。カンヌ国際広告賞などを受賞した作品で、私も最近、朝日新聞で知ったばかり。ドラマもCMも、子どもは言葉を喋らない代わりに、黒い絵を描く。
上が、今回のドラマの映像。そして下が、20年以上前の電通のCM「imagination/クジラ」。男の子が、ひたすら画用紙を黒く塗り続ける、ちょっと不気味なCM。ただし、最後に綺麗なオチがあって、インパクトがあるし、色々と考えさせられる。副題は「子供から想像力を奪わないでください」。作者・高崎卓馬氏の記事で動画公開中。
ちなみに、ドラマの前半だと、殺人の犯人、日中弓(内田理央)の伊達メガネ(?)のレンズに、自分の裸体の画像が映り込んでたのが面白かった。あれも、昔の名作映画へのオマージュ(敬意を込めた模倣)だと思う。見覚えがあるのだ。
というわけで、素晴らしい映像表現のドラマになってた。一筆書きは出来ないけど♪ 平均世帯視聴率は12.1%、個人視聴率は7.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。それでは今日はこの辺で。。☆彡
cf. いじめ不登校の子どもの母親、担任教師への殺意から自分が逃げるべき
~『教場0 風間公親』第2話
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