藤井聡太・七冠、初の海外対局(ベトナム・ダナン)も先手番・角換わりで確実に勝利~2023(第94期)棋聖戦・第1局
いきなり、本題とは違う重い話から書いとこう。将棋の第79回・学生名人戦の決勝戦(その他)で、スマホ不正が発覚。一旦、優勝者となった男子学生(愛知大学4年)が失格となって、順位は繰り上がりとなった。NHKまで大きめに報道。
朝日新聞社などが後援してるとはいえ、主催は全日本学生将棋連盟。学生が基本的に性善説で運営してたからこそ、起きてしまった残念な事件だろう。普通に考えれば、今回だけとはとても思えない。全国大会の決勝戦でスマホのAI将棋ソフトを見たくらいだから、他でもやってると考えるのが自然。
既に名前も顔写真も拡散してるから、取り返しのつかない事になってしまった。自業自得、本人が一番悪いのはもちろんとして、運営にも一段と配慮が求められる。規定の文面だけ厳しくても、その適用が緩ければ意味がない。ひょっとすると、運営スタッフもコロナ明けで慣れてなかったのかも。
一般に、大勢の人間を相手にする時は、性善説は危険。性悪説とは言わないまでも、一部の人間が不正を行う可能性が十分ある。この事を考慮する必要があるのだ。
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プロの将棋界では、7年前(2016年)の疑惑騒動以来、非常に厳しく管理されてるはず。特に、動画でライブ中継されてる場合、たとえ2日制の対局でも、不正はほとんどあり得ない。AIの読み筋が公開されてるから、棋士の指し手がAIと不自然に一致してるとすぐに周囲や視聴者から指摘が入るはず。
実際、藤井聡太・名人&七冠の指し手を見てても、それほどAIが示す最善手と一致してるわけでもない。今回の棋聖戦・第1局でも、終盤にかなりの悪手を指して、優勢な局面から一気に互角になってしまったほど。逆に、先日の叡王戦みたいなAI超えの即詰みを見つけることもある。
さて、藤井棋聖の対戦相手になったのは、最近絶好調の佐々木大地・七段。28歳で、初めてのタイトル戦。この日は、師匠の深浦康市・九段から譲られた和服を着てた。ベトナム・ダナンの高級リゾート(ホテル三日月グループ)にて開催。
ちなみに深浦九段(51歳)は、「藤井キラー」と呼ばれる棋士の1人でもある。藤井との対戦成績、3勝1敗。勝率、7割5分。この日は弟子の晴れ舞台を、abema動画で解説しながら優しく見守ってた。
戦型は角換わりからの腰掛け銀。上の上の図は、後手・佐々木の側から角を交換して来た局面(10手目)で、公式棋譜サイトより。
角換わりは、コンピューター将棋の世界だと、先手が圧倒的に優勢らしい。先手必勝みたいな声まで上がってるほど。ただ、激しい将棋になるから、人間が最後まで勝ち切るのは簡単じゃない。1手のミスで逆転するのが、人間の将棋の怖さ。
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上図は、後手・佐々木の38手目、4一飛の局面。まだ、この辺りまでは前例もあるし、2人とも研究範囲みたいで、指し手が非常に速い。持ち時間が短め(4時間)という事情もある。
4筋に飛車を回って先手の攻めを受け止めるのなら、最初から玉は5二とかにした方がジャマにならない気もするけど、それはそれでまた別の流れになるわけか。
先手の藤井は、かまわず4五桂と仕掛けた。2二銀、7五歩、同歩、5三桂成で、強引に桂馬を交換。さらに角を打ちこんで、角金交換で相手玉に迫る。人間なら優劣が分かりにくい局面。先手は飛車を攻めに使えてないから、攻めが細くて切れてしまいそうにも見える。AIの形勢判断だと、ほぼ互角になってた。
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その後、ジワジワと藤井優勢になって行った後、下の局面が大きなポイントだった。
後手・佐々木の84手目、4五角。これは3八飛成からの即詰みを狙う手で、後手の4四桂もよく効いてるから、意外と受けが面倒。後手玉は、1三銀と上がれば逃げ道を確保できる。
AIが推奨してたのは、5三角の攻めや、3六歩の受け。ところが先手の藤井は、5二とから清算して、取った銀を6七に打って受けた。形勢は一気に、優勢から互角へ急落。
ただ、その後また急激に先手優勢になったから、藤井の感覚はそれほど悪くもなかったのかも。その後の、91手目・1七角という攻撃が、飛車と桂馬の両方を狙う手で、厳しかったのだ。藤井の得意な、遠見の角。飛車を取れば、8二飛が攻防の手になる。
結局、後手の敗着みたいな緩手は、その直前の90手目、8六歩だったようだ。AIが示してたのは、4三金の受けや、3六歩の攻め。私の感覚でも、飛車の逃げ道も確保できるし、4三金がいいと思う。
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最後は藤井の113手目、4四桂の王手金取りを見て、佐々木が投了。公式ブログより。以下、玉が逃げれば、角打ちや7三歩、5四銀とかで、一手勝ちらしい。アマチュアならまだ、8七飛の王手くらい指すと思うけど、金を持ってないから7六玉と逃げられてしまって困る。佐々木は慎重になり過ぎたのか、持ち時間で苦しくなったのも失敗だった。
なお、評価値の推移グラフは上の通り。藤井としては、2回も互角に引き戻されてしまう、珍しい流れ。とはいえ、これでまた、藤井七冠は夢の八冠へと一歩近づいた♪ 歴史的な偉業を期待しつつ、それでは今日はこの辺で。。☆彡
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