円x²+y²=3上に有理点がない証明、円x²+y²=2と楕円曲線y²=x³+2の有理点の求め方と計算~『笑わない数学2』第8回
NHKのバラエティ的な教養番組、『笑わない数学』第2シリーズの最終回(第8回)は、BSD予想。バーチ・スウィンナートン=ダイナー予想と書くと、2人の名前の切れ目が「=」の所のようにも感じられるけど、「・」の所で切れてる。バーチと、スウィンナートン=ダイナーの2人。
名前だけでも分かりにくいし、理論も計算も非常に難しい話だから、30分番組ではこんな感じか。前置きの簡単な高校数学で時間を使って、肝心の高度な話は終盤だけ。ほとんど具体的な説明抜きで、あっという間に終わらせてた。
最後に、BSD予想に使われた計算結果の整数(自然数)がズラッと順に映し出されてたけど、その1つ1つがどれも大変な値。各楕円関数(方程式)ごとに、「素数pを法とする解の個数」Npを調べ尽くす必要がある。
だからこそ、数学界での研究の進展もゆっくりだったし、彼ら2人も昔の最先端のコンピューター、EDSACⅡを使って延々と調べたらしい。今のスーパーコンピューターとかだと、彼らが使ったデータを出すだけなら速いのかも。
☆ ☆ ☆
Npの式の変形だけなら分かるし、映像に出た部分だけなら論文の内容も理解できるけど、ここでは前置きになってた高校数学の話を補足的に解説してみよう。解説も計算も証明も、かなり省略されてたから、あらかじめ知ってる人や、すぐに自分で計算した人しか分からないと思う。
まず、xy平面の円x²+y²=2の上にある有理点。これは、すぐ分かる1つの点(1,1)を通る直線を使って、図形的・イメージ的に大まかに説明されてた。実際に計算してみよう。
点(1,1)を通る、傾きa(有理数)の直線の式は、y=a(x-1)+1。これを円の式に代入して、xの2次方程式を求めると、
x²+{a(x-1)+1}²=2
展開・整理すると、
(a²+1)x²-(2a²-2a)x+a²-2a-1=0
x=1以外の共有点(一致する場合、つまり接点の場合も含む)のx座標をpとすると、2次方程式の解と係数の関係より、2次と1次の係数(正負の符号は逆転)に着目して、
1+p=(2a²-2a)/(a²+1)
∴ p=(a²-2a-1)/(a²+1)
☆ ☆ ☆
よって、このpも有理数になるし、その時のy座標も有理数になるから、もう1つの交点も、有理点。
例えば、番組で映されたa=2の場合なら、p=-1/5で、交点の座標は(-1/5,-7/5)。a=1/2の場合なら、p=-7/5で、交点は(-7/5,-1/5)。ちなみに、この2点は直線y=xに関して対称の位置。なお、a=-1の時には、ただ1つの接点(1,1)のみになる(元の点のみ)。
同じ論法で、元の点が有理点で直線の傾きが有理数なら、もう1つの点も有理点になる。
x²+y²=2の有理点は、いくつのグループに分けられるのか、その話は番組ではなかったし、私も今現在ハッキリとは分からない。直感的にはただ1つのグループだと思うけど、グループ分けの定義も厳密には明示されてなかった。傾きを表す有理数aの数は無限にあるから、有理点の個数全体が無限なのは明らか。
☆ ☆ ☆
続いて、円x²+y²=3上に有理点がないことの、背理法による証明。
1. 有理点があると仮定する。
2. x=A/C、y=B/Cとおける。ただし、A、B、Cは、同時に同じ数で割り切れない整数(互いに素)。
ちなみに、この互いに素という条件は、自分で作り出すもの。まず、xを表す分数とyを表す分数を適当に書いて、A、B、Cを同時に割り切れる最大の数(最大公約数)で割ればいい。そうした点は省略されがちな所で、番組でも説明はなかった。
3. A²+B²=3C²
4. A²+B²は3の倍数
5. AもBも3の倍数。
これは、A=3a+m、B=3b+n(m,n=0,1,2)とおいて計算すれば分かる。
(3a+m)²+(3b+n)²=3C²
m²+n²=3(C²-3a²-2am-3b²-2bn)
よって、m²+n²は3の倍数。 ∴(m,n)=(0,0)
したがって、A=3a、B=3bで、共に3の倍数。 (5の証明終)
6. A²+B²は9の倍数
7. 3C²も9の倍数
8. C²は3の倍数
9. Cは3の倍数。これは、5と同様の議論で簡単に示せる。
以上より、A、B、Cを同時に割り切れる整数3がある。これは2と矛盾。
したがって、円x²+y²=3上に有理点があるという仮定は誤り。
つまり、円x²+y²=3上に有理点は存在しない。 (全体の証明終)
☆ ☆ ☆
そして、いよいよ楕円曲線の上の有理点の求め方。
まず、y²=x³+1について。
すぐ分かる自明な有理点は、(-1,0)、(0,1)、(0,-1)。
最初の2つの点を通る直線の式は、y=x+1。これを楕円曲線の式に代入して、xの3次方程式を求めると、
(x+1)²=x³+1
展開・整理すると、
x³-x²-2x=0
x=-1,0以外の共有点のx座標をpとすると、3次方程式の解と係数の関係より、2次の係数(正負の符号は逆転)に着目して、
1=-1+0+p ∴ p=2
よって、もう1つの交点も有理点(2,3)だと分かる。
☆ ☆ ☆
同様の議論で、(-1,0)と(0,-1)を通る直線からは、有理点(-2,-3)が分かる。これで計5個の有理点。
最後に、(0,1)と(0,-1)を通る直線を考えると、y軸に平行な直線だから、もう1つの交点はない。ただ、その直線を、傾き∞や-∞と考えれば、無限遠点で交わると考えることも一応、可能。
だから、y²=x³+1の有理点の個数は、「答え 5個」と書いた下に小文字で、「無限遠点を含めると6個」と書いてた。
☆ ☆ ☆
そして、この記事の最後は、楕円曲線y²=x³+2の有理点の求め方。
すぐ分かる自明な有理点は、(-1,1)と(-1,-1)。この2点を通る直線からも、無限遠点という交点が求められると言うことは可能。ただ、番組ではスルーしてた。というのも、結論がそもそも無限個だから。わざわざ無限遠点という変な点を加えるまでもない。
この場合は、自明な有理点からの接線と曲線の交点を求めてた。接線の扱い方は色々あるけど、一番速いのは、
y²=x³+2の両辺をxで微分すること。すると、合成関数の微分法より、
2y・dy/dx=3x² ∴ dy/dx=3x²/2y
よって、点(-1,1)における接線の傾きは、3(-1)²/(2・1)=3/2
接線の式は、 y=(3/2)(x+1)+1
これを楕円曲線の式に代入して、xの3次方程式を求めると、
{(3/2)(x+1)+1}²=x³+2
展開・整理すると、
x³-(9/4)x²-(15/2)x-17/4=0
交点のx座標をpとすると、3次方程式の解と係数の関係より、2次の係数(正負の符号は逆転)に着目して、
9/4=-1-1+p (接点のx=-1は重解だから、-1と-1と考える)
∴ p=17/4
よって、もう1つの交点も有理点(17/4,71/8)だと分かる。y座標の計算式は、直線の式を用いて、 (3/2)(17/4+1)+1=71/8 。
同様の方法を使えば、有理点は無限個ありそうな気はするけど、証明は大変そうなので、とりあえず省略。途中で元の点に戻ってしまう循環が生じないこと、接線が点(-1,0)(次の接線を引く時に困る点)を通らないことを示す必要がある。
☆ ☆ ☆
なお、前の楕円曲線y²=x³+1では、接線は役に立たない。というのも、3つの自明な有理点における接線は、どれも軸と並行で、自分自身を除く共有点が無いから。x=0は三重解になる。ただし無理やり考えるなら、x=-1での接線から、無限遠点という特殊な有理点を求めることは可能。
肝心のBSD予想そのものについては、またいずれ。難し過ぎるから、パスするかも♪ というわけで、やっぱり数式はmacOSよりWindowsの方が入力しやすいな・・とか思いつつ、今日のところはこの辺で。。☆彡
(計 3256字)
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