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オイラーもガウスも「素数階段」とは言ってない、素数定理の正式な発見者はルジャンドル(原書・AIチェック)~『笑わない数学』素数

一般に、何かが現実にあることの証明ならともかく、何かが現実に無いことの証明は非常に難しい。現実の世界を調べ尽くすことはほとんど不可能だから。

     

ただ、現実にあることの証明が世界で発見できないのなら、あるとは認められない。私は昨夜から、英語・ドイツ語・フランス語・ラテン語(オイラーの使用言語)を使って検索しまくったが、どこにも存在証明は見当たらなかった。だから今現在、こう言っていいと思う。

  

 オイラーもガウスも、「素数階段」とは言ってない。

  

  

    ☆   ☆   ☆

だから、それを前面に押し出したNHK『笑わない数学』素数でも、根拠となりそうな映像が一つも示されなかったのだ。毎度お馴染みの小文字の説明もなかったし、エンドロールにも書かれてない。単に、数学監修・小山信也と書かれてるだけだった。

   

テレビ番組に関する専門家の監修があまり信用できないことについては、今まで多数の指摘を具体的に行って来た。理数系でも同様。まして、理数系ではあまり重視されない歴史的な事実に関してなら。

    

初回放送日が1年9ヶ月も前(公式サイトの日付は2022年3月26日)の情報バラエティに、今さら歴史的な間違いを指摘したところで、それ自体にはあまり意味がない。既に再放送からも1週間が経過したので、検索アクセスも期待できない。

   

ただ、その間違いは、特に日本のネット界で地味に拡散してるようなので、誰かが歯止め役を果たすべきだと思う。微力ながら、マニアック・ブロガーが先陣を切ってみる。

 

    

     ☆   ☆   ☆

まずは、簡単な事実、ファクトの確認。

   

素数の並び方の謎に挑むことにしたオイラーは、まず、素数を自分の手で一つ一つ探すことから始めました。そして頭の中で、いわばこんなものを想像してみたんです。数字が書かれた階段。ただし、段が上がるのは、素数に出会った時だけ。名付けて、素数階段です・・・素数階段をひたすら上り続けたオイラー」。

    

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「いわば」というボカシ言葉を最初に入れて、逃げ道を確保してるのは分かる。しかし、少し後で「名付けて」と語ってるし、番組の中盤は、オイラーからガウスまで、天才2人が素数階段を登って行ったという話がメインになってた。

     

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     ☆   ☆   ☆

素数階段とはもちろん、足で登る物質的な階段ではない。その素数が、小さい方からカウントして何番目なのか。あるいは、ある自然数以下の素数が何個あるのか。1つ1つカウントしていく頭と手の作業を、階段のイメージにしたもの。

   

例えば、5という素数は3段目で、3番目の素数。また、8は4段目の自然数で、8以下の素数は4個(2,3,5,7)。

  

数学をある程度、理解してる人なら、素数階段のイメージがカウントに役立ってないのが分かるはず。むしろ、カウントした後に階段はイメージできるのだ。例えば、2、3、5、7に続いて、5番目の素数は11。だから、11から階段の5段目に上がる、とか。

  

そもそも、素数階段に対応するような英語・ドイツ語・フランス語・ラテン語は、学問的にはほとんど使われてない。ということは、素数階段とは、日本の一般人向けの説明で使われる簡単なイメージだろう。オイラーやガウスはもちろん、他の数学者でさえほとんど関係なく。

   

   

    ☆   ☆   ☆

自分でさんざん調べた後、最後に念のために、ChatGPT(model4)にもたずねてみた。本当にオイラーが素数階段などと言ったのか?

  

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GPT4 「素数階段」とオイラーに関する情報が見当たらないのは、おそらくそのような概念がオイラーに直接起因するものではないからかもしれません。オイラーは素数に関して多くの重要な貢献をしましたが、具体的に「素数階段」というアイデアについての記録はありません。

 

・・・・・・ですので、素数階段は後の数学者や教育者がオイラーの貢献に触発されて作ったものか、もしくは素数の性質を説明するための現代的な教育ツールの一つである可能性があります

   

    

別に対話型AIを絶対的な「根拠」にしてるわけではないので、念のため。最終確認の段階での、一つの(有力な)情報ということだ。    

    

    

    ☆   ☆   ☆

続いて、ガウスと素数定理について。番組では、オイラーのすぐ後に続いた天才としてガウスを紹介した後、こう説明してた。

   

ガウスが発見したのは、最終的には『素数階段の高さ』と『自然対数表の計算』がピタリと一致するという事実だったのです」。

  

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曖昧な表現なので、真面目に番組を見て覚えてる人しか正確な意味が分からない。

   

xを無限に大きくしていく時、

 (その自然数x以下に何個の素数があるのかを表す数)

    = x/logx

   

「素数定理」と呼ばれる式で、普通は π(x)~x/logx などと書かれてる(変数はnとも書く)。xが素数なら、π(x)(パイ・エックス)は何番目の素数なのかを表すことになる。分母のlogxはxより遥かに小さい数だから、両辺ともに大きい数になるが、xよりは小さい。「~」で表される近似が極限limとどう違うのかは、まだ理解してない。

  

   

    ☆   ☆   ☆

この辺りについて、英語、ドイツ語、フランス語のウィキペディアで調べると、ガウスの名前も一応挙げられてるけど、フランスの数学者ルジャンドルの方が扱いが大きい。それは当然で、最初に出版の形で提示した人物だから。

  

一例として、素数カウント関数に関するドイツ語ウィキペディアの一節を見てみよう。歴史の項で大きく扱われてるのは、ルジャンドル。それに対して、ガウスは名前を挙げてるだけのような扱いだ。

  

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アイデアを思いついただけなら、まだ15歳か16歳だったとされるガウス少年(1792年か93年)の方が先だったかも知れない。しかし、ガウスは論文や著書にはしてないし、その草稿もない。

  

下は、ガウスが書いた手紙(1849年)の一部。ルジャンドルの著書『数の理論』(初版1797-98、ガウスがここで確認してるのは第2版)で、素数カウントの公式 n/(logn-A) を見たことが書かれてる。変数は、ここではn。インターネット・アーカイヴで公開中。

         

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ルジャンドルの『数の理論』は日本語訳もあるが、ここではネットで発見したフランス語の原文を引用。分母には、未知の定数としてA、Bが使われてる。Bの符号は、+でも−でも同じこと。下は初版。

   

1808年の第2版は大幅に内容も書き方も変わってるが、大きな数に対してはほぼA=1、B=-1.08366となって、ガウスが手紙に書いてる内容と実質的に合ってる。どちらもフランス語版ウィキのリンクより

     

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   ☆   ☆   ☆

というわけで、

 素数定理の正式な発見者は、ルジャンドル。

   

要するに今回の番組は、有名な2人の天才オイラー、ガウスと、一般人がイメージしやすい階段を前面に押し出した、大まかな情報バラエティということになる。

    

とはいえ、それが無ければ私もここまで調べることはなかった。最初の導き役としては、上手くできてる番組だろう。それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

    (計 2846字)

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