家賃滞納3ヶ月で明け渡し(強制退去)、法律(借地借家法・民法)の条文には明記されてないけど〜『正直不動産2』第6話
先日の情報理論記事の冒頭に書いたように、今週の火曜の夜はバッテリーが切れそうな端末しか手元に無かったから、テレビも動画も見れない状況。仕方なく、先に電子書籍で原作マンガを読んだ。ビッグコミックのキャンペーンで、ドラマ化された話はその後からしばらく無料公開されてる。
自分の端末で試してみればすぐ分かることだけど、動画でドラマを見るのと、電子書籍でマンガを読むのとでは、情報量も時間も大違い。もちろん,ドラマの方が遥かに量が多いのだ。
ということは、原作マンガを実写ドラマにするのは非常に大変で、かなり違った作業になるということ。この辺りの調整の中心になるのが、出版社だと編集者、テレビ局だとプロデューサー、ということになる。
漫画家 ↔︎ 編集者 ↔︎ プロデューサー ↔︎ 脚本家・演出家
しかも、連続ドラマの場合、脚本家や演出家が複数いることも珍しくないから、ますます大変だろう。昨日(水曜)の夜になってようやく見れた今回の『正直不動産2』第6話だと、脚本家は清水匡(まさし)、演出家は金澤友也。
いつものように、基本的なあらすじ・ストーリーや台詞はほぼ原作通り(第109直、第110直、「家賃滞納」)。ただ、その肉付けはかなり違ってた。
☆ ☆ ☆
その話をする前に、ここは非営利の一般人ブログだから,個人的な話を入れときたい♪
私はもちろん(?)家賃滞納の経験はない・・・と書きたい所だけど、田舎から首都圏に出て来てまだ間もない頃、アパートの家賃の支払いが「1日」だけ遅れたことがあった♪ 1日というより、正確には「半日」(笑)。単に、うっかり忘れてただけのミス。
すると、まだ朝8時くらい(!)だったと思うけど、近所に住んでる大家さんのお母さん(お婆ちゃん)がいきなりやって来て、怖い顔と声で家賃の請求 (^^ゞ 皮肉でなく、いい社会勉強になった♪ 実は、大家さん自身は物腰の柔らかい女性だったけど、賃貸契約は厳しい世界なんだな・・と思い知らされた経験の一つだったのだ。他にも20回くらいあるけど(笑)
☆ ☆ ☆
さて、原作とドラマで共通する話の中心は、家賃滞納。劇団員の清川明日美(美山可恋)。演劇の練習でバイトできなくて3ヶ月滞納というのは、私の感覚だと論外♪ 「家賃を払えない私は夢を諦めなきゃダメですか?」。「はい、当たり前です」(笑)
ちなみに、十影(板垣瑞生)のアドバイスはまた別の話になる。「家賃を払えない」のではなくて,「『高い家賃を払えない』あなたは、『安い家賃を払えば』、夢を諦めなくてもいい」という話だから。
それにしても、大家(梅沢富美男)に滞納分を免除してもらうのは、かなり甘いと感じる。
実は原作だと、「新型感染症の影響」でバイトをクビになったという話になってた。コロナの最初の1年半くらいは、お店や会社が休みになってた程の異常事態だったから、それなら分からなくもない。ドラマだと、劇団の練習という普通の話に変更してるから、私はツッコミたくなったのだ。
何度か書いてるように、私が昔バイトしてた有名ホテルでは大勢の劇団員が働いてて、スケジュールもかなり自由で時給も高かった。今だと尚更のこと。都会で時給1200円くらいのアルバイト募集はいくらでもある。1日6時間、週休2日でも、月に15万円ほどの収入。劇団員をやりながら、元の家賃59000円もちゃんと払って、それほど無理な生活でもない。
ちなみに、ドラマでコロナの話を避けた理由は、おそらく社会的・政治的なものだと思う。去年の5月からは、風邪やインフルエンザみたいなものと似た扱いになったから、国営放送としても避けたんだろう。実際、NHKニュースでのコロナ報道も激減。この冬のコロナ第10波も、ほとんど扱われてない。1日あたりの新規感染確認が10万人くらいに達してても。
☆ ☆ ☆
家賃滞納3ヶ月に関する話は、原作とドラマでほぼ同じ。さすがに、やや控えめな注意深い説明になってた。理由はカンタン。そんな話は法律に明記されてないし、裁判の判例も色々あって不確定なことだから。
上の画像は、借地借家法の該当箇所の条文。下の画像は、民法の契約に関する条文。どちらにも、滞納3ヶ月で明け渡しとかいう内容は入ってない。それどころか、かなり手厚く借り手(賃借人)を守るように出来てる。
法律の条文ではなく、不動産業界の実際の慣例としては、
オーナー側は明渡し請求が「できる」 (する、しないは別)
請求が、相手や裁判所に承認されることがある (不承認かもしれない)
つまり、3ヶ月滞納したからといって、「すぐに」強制的な立ち退きになるとは考えにくい。というより、そんな厳しい話はネット検索でもなかなか見当たらないし、3ヶ月滞納者がどうなったかを調べた大規模な統計調査データも見当たらない。ケースバイケースで曖昧だからこそ、例の家賃保証会社というものも使われるようになってる。
☆ ☆ ☆
曖昧さを逆手にとって、わざと「3ヶ月近く」の滞納を続ける賃借人がいて困ってる・・という賃貸人の相談が、専門家のサイトで紹介されてた。去年の秋の日付けだから、つい最近のこと。弁護士法人ALG。
ドラマでは、15年前の十影親子に対する厳しい取り立てが、なぜか単なる「借金」になってた。
あれは原作だと、十影の父の家賃滞納なのだ。ドラマのマダム(大地真央)が話してたような、十影の祖父のせいだという話も、原作のこのエピソードには無い。ドラマみたいな、愛情あふれる優しい父親のイメージも、原作には無い。
子どもの頃、父の家賃滞納で厳しく辛い体験をしてたからこそ、大人になった今、劇団員の家賃滞納に適切なアドバイスができる。主役の永瀬(山下智久)やヒロインの咲良(福原遥)よりも。これなら筋が通ってるのだ。急に十影が有意義なアドバイスをしたことに関して。
ドラマでは、なぜ単なる借金へと変更したのか? 理由として一つ考えられるのは、現在の不動産業界への配慮。過去の強引な取り立てが社会問題になったから、平成18年(2006年)に業界の自主規制ができたらしい。原作ではそう説明されてた。多少は改善された業界に、あまりブラックなイメージを植え付けたくはない。そんな配慮が(無意識的に)働いてるのかも。
☆ ☆ ☆
最後に、「本並劇場」について。あれは明らかに、渋谷からも近い若者の街・下北沢に実在する「本多劇場」をもじった名前。40年前から続く有名な聖地で、座席数386だからまずまず立派。逆に言うと、チケット販売のノルマが劇団員にのしかかるかも。チケットもフツーに高いのだ。私が全く知らないキャスト・スタッフの公演でも、普通料金が1万円近くの設定。
上のポスターだと、公演日が2024.2.15(今日♪)~2.18になってる。これは、この劇場の普通の公演だと短い方だと思う。そもそも、かなり準備して、たった4日の本番だと、劇団経営も苦しいはず。
今現在のラインナップだと、メジャーな南海キャンディーズだけは3日間になってた。これは、他の仕事がいくらでもあるからだと思う。特に山崎の方は人気タレントだから。
☆ ☆ ☆
なお、公園で練習してた劇団員・明日美の「私たちなんて誰かのアバター 不快だったら夢を見ただけだって許してくださいね
」というセリフは、脚本的にテクニカル、技巧的だった。
「夢見る少女、甘えたこと言ってる場合じゃないだろ? 働いて家賃払え!」と視聴者の一部(笑)に思わせた直後に、解決策を提案。現実の住まいと夢の演劇の両立案。しかも、やる気も知識も無さそうなZ世代代表の若者・十影から。「はるかぜ弁当」の看板娘(死語♪)に、「春よ来い」(サブタイトル)。
私自身は高校時代に一度だけ演劇を仕切ったことがある・・という話は、またいずれ。要らない? いや、私が喋りたいのだ。「不快だったらブログを読んだだけだって許してくださいね」♪ ではまた。。☆彡
cf. 「どこ向いてるんだ?」、タワマン大好きの永瀬財地(さいちん♪)〜『正直不動産2』第1話
写真と違うムービー(動画)の長所、全体の空間的・時間的つながり〜第2話・使用貸借契約と解除
もしも家族が仲良しなら、小さな家でも、おもちゃのピアノでも関係ない〜第3話・狭小住宅(ペンシルハウス)
テレビドラマの脚本と原作マンガの比較、共通点と違い〜『正直不動産2』第4話・賃貸保証会社と人の信用
偽善とは、表面的な善意から不幸な代償を生み出してしまう行為や意図〜『正直不動産2』第5話・フラット35
ノックスの探偵小説・十戒(英語)、犯人は物語の序盤に登場、探偵は犯人ではない〜第7話・契約の誘引
浮き沈みの激しい不動産(ワンルーム・マンション)投資、始まりは80年代・バブル期〜第8話・無限ループ地獄
サブリース契約、03年最高裁判決で業者が強気に、12年アベノミクス緩和で一般人オーナー急増〜第9話
(計 3494字)
(追記149字 ; 合計3643字)
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