NHK朝ドラ初(?)、『虎に翼』で男性同性愛に近いものが登場、抑制された表現はむしろ異性愛の告白(よねから轟)に見える
私はブログもメールもニフティだから、ニフティ内の話題というものを毎日、目にすることになる。昨日は、コメントランキングの3位に、「朝ドラ『同性愛』に賛否の声」という見出しが出てた。
実家を離れて以降、朝ドラを見たことはほとんど無いが、『虎に翼』については1ヶ月前、当時の国家試験の問題についてマニアックな学術系記事を書いてた。この記事も、キッカケは、ネットで少しだけ話題になってたのが目についたからだった。
朝ドラ『虎に翼』で受験、昭和初期(戦前)の国家・高等試験問題とAIの解答〜司法科・選択科目「論理学」、繋辞(コプラ)の意義
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話を戻すと、ニフティが話題にしてたのは、日刊ゲンダイの記事で、「オープニングには『ジェンダー・セクシュアリティ考証』の担当者が記載されており」と書かれてた。
個人的には、誰がそんな担当者になってるのかが気になって、色々と調べたわけだが、ここではその前川直哉というマイノリティ研究者については触れないことにしよう。普通に、テレビドラマを1回見た感想・解釈・分析を軽く書くことにする。
ちなみに、前と合わせて2回の放送しか見てないので、悪しからず。ただし、他のドラマその他のレビューなら過去、大量に書いてる。
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先に、結論を書いとこう。普通のドラマの視聴者よりも、高齢者や女性が多いと思われる朝ドラとしては、非常に上手い描き方だった。
十分に抑制された穏やかな表現だし、僅か1回見ただけでも、話の流れを巧みに作ってるのが分かる。脚本家、吉田恵里香。演出家、梛川善郎。
番組冒頭、花岡(岩田剛典)という若き男性判事のニュースが紹介される。戦後の食糧難の時期に、ヤミの食料を拒否して餓死。32歳、妻と子ども2人を残して。
聞いたことがある話だなと思ってネット検索すると、山口良忠という実在モデルがいたらしい。ドラマで映された新聞記事には、遺書のようなものが掲載されてたけど、確認できた範囲だと、内容は山口が実際に書いたものだった。ただし、山口の死因は餓死が元になって生じた栄養失調であって、いわゆる飢え死にではなかったようだ(byウィキペディア)。
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ニュースが出た後、仲が良かったらしい大学の男の同級生・轟(戸塚純貴)が道端に座り込んで、ヤケ酒を飲んで酔っ払ってる。
すると、女の同級生・よね(土居志央梨)が足で蹴って来る。短い髪、顔つき、服装、振る舞い、どれも男性のように見える。当時なら、なおさら男性的に見えたはず。
よねが地下室のような所に轟を誘って、水を手渡す時、空襲の火傷の痕が見える。つまり、他人にあまり見せたくないようなもの、「傷」のようなものを先に意図的に見せたのは、よねの方なのだ。
そして、新しい日本国憲法の第14条を確認した後、男性同性愛に近いものの表現に入る。男性同性愛のようにも見えるもの、と言う方が、より正確。「すべて国民は、法の下に平等であって・・・性別・・・社会的関係において差別されない」。もちろん、性的少数者LGBTQ関連の話に向かう流れを作る、前置き。
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その後、花岡の死について、轟が「しかたあるまい」と冷静に語ったから、よねが核心に触れる。
死んだ相手に強がって何になる?
強がる? 何だよ 急に
惚れてたんだろ? 花岡に
この後、よねは、「別に白黒つけさせたいわけでも白状させたいわけでもない。腹が立ったなら謝る。ただ、私の前では強がる意味がない。そう言いたかっただけだ」とフォロー。
轟は「俺にもよく分からない」と返した後、「でも」に続けて、具体的な思いを色々と挙げて行った。そこには別に、恋とか愛とか好きとかいう言葉は入ってない。単なる男同士の友情とも取れるような熱い言葉を選んで並べてたのだ。最後は、涙。。
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ネットでは、よねの女性同性愛の可能性を指摘する声もあったが、私がこの第51回を見た限りだと、そこまでは言えない。
そもそも可能性としても、LGBTQのLというよりは、TQあたりだろう。自分という人間的存在の性と、生物学的な性の関係が、今のところハッキリとは一致してない状態。
むしろ、上のシーンのよねは、轟の熱い思いを受けながら死んだ花岡に嫉妬してるように見えた。だから、「死んだ人間に・・・」と言うセリフも、むしろ「死んだ人間に嫉妬して何になる?」と自分に問いかけたように感じたのだ。
そして実際、その後のドラマは、普通の異性愛の告白成功のような形に進んで行った。よねが轟に手を差し出して、わざと突き放したような語り口で、自分の仕事を一緒にやらないかと誘う。轟が同意して、握手。その手をすぐに離したよねは、恥ずかしくて照れたようにスタスタとその場を離れて行った。
この後、どうなるのかはともかく、非常に上手いドラマ作りで、朝ドラ初の(?)同性愛の導入としては見事な出来だった。ただ、同性愛が好みでない、受け入れられないといった人も今現在、少なからずいるので、多少の反発は仕方ないことだろう。
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なお、『セクシー田中さん』事件も意識したのか、脚本家は直ちに長い釈明文をXで公表してた。
もっともな見解だが、ちょっと気になるのは、「透明化」という説明の分かりにくさと曖昧さ。非常に大勢の視聴者を相手にするのだから、もっと分かりやすく言う方がいいと思う。例えば、次のように。
「今までのエンタメは、現実にいる一部の人たちを描かないようにしてました。私は、そうした人たちを描き続けたいのです」。
可視化とか見える化といった用語も使わず、今まで描かなかった人たちを描きたい。簡単にいうと、そうゆう事だろう。そして、それは大切な事だというのが、現代の先進国で有力な(リベラルな)考え。NHKの現場でも主流の考えなのだ。
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もちろん、そう思わない人たちへの一定の配慮も必要だからこそ、今回のドラマでは物語的な流れを作った後、抑制された表現に留めて、さらには普通の異性愛のように見えるものまで挿入。みんなをホッとさせる展開を構成してた。
バランスの取れた見事な仕事だと思う。それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 2527字)
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