ヒトラーのベルリンからミュンヘン五輪のテロへ、ドイツ、ユダヤ(イスラエル)、パレスチナの対立の歴史~NHK『映像の世紀』
前から指摘してるが、今回の内容もまた、副題の「バタフライ・エフェクト」にはなってない。小さな蝶の羽ばたきが、時空を遥かに超えて巨大な影響を与えるという、新シリーズの建前が実現されてないのだ。
普通の大きな出来事のつながりを描いた歴史番組になってるから、タイトルバックの青白い蝶のロゴも単なる飾りになってしまってる。公式サイトより。
☆ ☆ ☆
だからと言って、視聴が退屈だったかというと、そうでもない。私はいつも、番組の予定を全く知らずにたまたまNHKプラスの動画で見てるのだが、五輪、ドイツ、ユダヤ(イスラエル)、パレスチナの複雑な関係をあらためて考えるキッカケにはなった。
パリ五輪直前の2024年7月22日に、「オリンピック 聖火と戦火」と第する回を放送したのは、もちろん昨年の秋から続くイスラエルとパレスチナ(ハマス)の激しい戦争が背景にあるが、1972年・ドイツ・ミュンヘン五輪のテロから半世紀ということもあるのだろう。
今の状況と半世紀前とは、確かにかなり似た部分がある。(表面的には)先にパレスチナの過激派がイスラエルを攻撃。NHKはなぜかスルーして、綺麗な話にまとめようとしてたが、実はテロの後、イスラエル側からの報復が数倍の規模で行われたらしい。最近の戦争の激しさから考えても、おそらく激しい報復は事実だと思われる。
☆ ☆ ☆
番組は、戦争を休止するという近代五輪の平和的な目標・理想から始まるが、いきなり現実を突きつけられる。第一次世界大戦で五輪は中断。
その後、1936年のベルリン五輪は、ヒトラーのキャンペーン(国家宣伝)が有名。「新生ドイツの力を世界に示さねばならない」。
米国のユダヤ人たちは、ヒトラーのユダヤ迫害に激しく反発して、五輪ボイコット運動を展開。ヒトラーらしき男が持つ血のついた斧と、黒い影、下の赤い英文が不気味。「GERMANY WANTS TO SEE YOU」。ドイツはあなたに会いたがってるよ。さあ、おいで。右下の太い木が、次のユダヤ人犠牲者だと。木の左側には、人間の上体が赤く描かれてるようにも見える。
☆ ☆ ☆
もちろん、ドイツが直接、五輪でユダヤ迫害を行うはずはない。ヒトラーにとっては、平和で寛容に見えるドイツを無理やりアピールする晴れ舞台だったから。レニ・リーフェンシュタールの芸術的な記録映画『オリンピア』も利用して。
ただし、ゲルマン民族の優位性は、外見的に誇示したい。そこで選ばれた聖火の最終ランナーは、長身で青い目、金髪、美しい走りと体型のフリッツ。確かに、一目見ただけで、普通に美しいと思ってしまった。
陸上の中長距離選手、フリッツ・シルゲン。ランニング・シャツを正しく短パンに入れて、細身で締まった肉体を強調。頭脳も優秀で、競技場の電気通信システムも設計。
ヒトラーとしては、走り幅跳びも自国の選手に優勝して欲しかったが、激闘の末に米国の黒人レジェンド選手・オーエンスが勝利。白人選手は素直に黒人の勝者を讃え、観客も拍手した。ヒトラーも渋々と拍手したのだろうか。
☆ ☆ ☆
その次の1940年は、東京五輪で日本が世界にアピールする予定だったが、第二次世界大戦で中止。番組はベルリン五輪の36年後、同じドイツのミュンヘン五輪へと飛ぶ。
パレスチナのテロ集団、ブラック・セプテンバー(黒い九月)のメンバー。テレビカメラの前に姿を現すあたりは、時代を感じさせる。イスラエル選手らを人質にとってるとはいえ、今なら直ちに狙撃されるリスクもある。要求は、イスラエルの刑務所のパレスチナ人の解放。イスラエルは拒否。
この様子が世界にテレビ中継される中、意外と周囲は普通だったらしい。五輪は差し当たり継続。選手たち(?)が芝生に寝そべってくつろぐ姿も映ってた。避暑地のバカンスの雰囲気。まあ、今現在でも、遠い外国の戦争のニュースを見ながら、我々はくつろいでるから、似たようなものではある。
この頃のドイツは、テロ対策が弱かったようで、結局、11人全員が殺害される最悪の結末。当時の朝日新聞・夕刊(9月6日)を見ると、直ちに報復の可能性が伝えられてた。「五輪テロ 報復の悪循環を懸念」。
ところが、NHKのこの番組どころか、当時の朝日新聞も、イスラエル側による報復についてはほとんど伝えてなかった。情報が不確かだったからなのか、あるいは、ゲリラやテロに対する否定的姿勢が反映された政治的配慮なのか。「敵の敵は味方」。ゲリラを叩くイスラエルは味方だと。
☆ ☆ ☆
24年の時を経て、1996年、アトランタ五輪。近代五輪100年の記念の年に、パレスチナ選手団の参加が承認された。この参加も命懸けだったと思う。ベルリンのテロで家族を殺された遺族が、パレスチナを祝福する姿が強調されてた。内心はおそらく複雑だったと思われるが。
実際、現在のパレスチナは、イスラエルがパリ五輪に参加することに反対してる。五輪の理念はさておき、人間的に自然な反応だろう。そして、ウクライナに侵攻中のロシアは、パリ五輪に参加しない。反発が強過ぎて、参加できなくなったという方が正確だろうか。
ユダヤとかイスラエルの問題は、昔、色々と調べたことがあるが、正直よく分からなかった。民族と地域・国の歴史が、複雑で長すぎるのだ。戦後の80年くらいで考えると、実力行使を続けるイスラエルが悪いようにも感じられるが、紀元前のイスラエル王国とか、その前のカナンの状況まで遡ると、何が史実かさえ分からなくなるのだ。
イスラエルとパレスチナは、実は人数的にはほぼ同じというのも状況を複雑にしてるだろう。パレスチナが少数派のイメージがあるが、どちらも1000万人弱らしい。ただし、パレスチナ人はあちこちに分散してるから、少数に見えてしまう。
さて、日本はいつまで平穏を保てるのか。日米安保が揺らげば、直ちに危険が生じるのは確実。残念ながら、しばらくは米国の核の傘に守ってもらうしかない。サイバー戦争の激化やAIの発達で、事態が劇的に変化するかも・・とか思いつつ、今日はそろそろこの辺で。。☆彡
(計 2519字)
| 固定リンク | 0
« 27時間テレビの100kmマラソン2024、優勝賞金1000万円の全力バトルに感動!&気温27.5度プチジョグ | トップページ | コロナ感染者数、第11波で下降トレンドを突破して上昇、ワクチン「定期接種」は10月開始か&「風邪」回復で短めのジム »
「スポーツ」カテゴリの記事
- 福原愛ちゃんの活躍期が卓球ブームのピークか、引退後は減少(観るファンの数は別)~卓球人口の推移(レジャー白書 2024)(2024.12.10)
- 人気女性騎手(ジョッキー)藤田菜七子がスマホ不正使用で突然の引退、まだ27歳、本当の理由は?&7km走(2024.10.12)
- 2024パリ五輪、スローガンはフランス語の掛け言葉「五輪を広く開こう=目を大きく開いて世界を見よう」~雨の開会式の感想(2024.07.27)
- ヒトラーのベルリンからミュンヘン五輪のテロへ、ドイツ、ユダヤ(イスラエル)、パレスチナの対立の歴史~NHK『映像の世紀』(2024.07.23)
- 大谷翔平の日本語会見と新・通訳アイアトンの英語訳、賭けの送金をめぐる微妙な違い2ヶ所&長めの出張終了(2024.03.27)
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 福岡・博多で77年間、自転車の流し屋台わらび餅、買ってもらうのがうれしい♪ ~ NHK『ドキュメント72時間』(2024.10.26)
- NHKスペシャル『ジャニー喜多川 "アイドル帝国"の実像』、スタートエンターテイメント出演再開の告知特番(2024.10.22)
- 『雲上を駆ける! 第39回・乗鞍ヒルクライム2024』(NBS長野放送)、YouTube動画で見た感想(2024.09.24)
- やす子24時間マラソンの2日目と「同じ道」を9時間で歩いて「検証」した YouTuber、実際は6割弱の距離(29km)を歩いただけ(2024.09.12)
- 直前の欠場、「パリ五輪は、まだ走れ!っていうメッセージ♪」~カンテレ『前田穂南が走れなかったオリンピック』(TVer動画)(2024.09.06)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 積立預金2、今でも申し込める高島屋「スゴ積み」、実質年利15%の計算式と解説&今季ハーフ3本目、まずまず♪(2024.12.06)
- 韓国は感情的or感情豊か?、45年ぶりの「戒厳令の夜」は6時間で解除、仮想通貨も暴落から急回復&7km走、好調(2024.12.05)
- ヤマダデンキの幻の積立預金、実質年利18.5%(!)の計算式と解説&7kmラン&計14kmウォーク(2024.12.03)
- 前澤友作、金配りの次は株配り、「カブアンド」未公開株はさんまがCMしてるから信頼できそう?♪&再び10kmウォーク(2024.11.26)
- 元ソニーのパソコン・VAIO、このココログ(nifty)と同じくノジマが買収&レース直前プチラン、古い靴でも好調(2024.11.14)
コメント