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映画『マミー』が一部で話題、和歌山カレー事件と林真須美・死刑囚の冤罪説・無罪説の短い感想

冤罪という主張がある事件というのは、今までもいくつか自分で調べてみたが、どれも情報量が多くて複雑で古くて、非常に考えにくい。その中でも、これは最も分かりにくい事件だと思う。

  

あと、近寄りがたい事件でもある。というのも、この種の主張には政治的な傾向(または偏り)が見られるから。冤罪の主張は、国家や強大な権力への批判と結びつきやすい。特に、国家権力による市民の殺害(死刑の執行)は許しがたい。だから、左寄り、リベラル、左翼といった集団とのつながりが強いのだ。

  

映画の宣伝文を、誰がどう書いてるか。あるいは、冤罪を主張する本を推薦してるのは、誰なのか。それらの人達は、他の場でどんな主張や行動を示してるのか。あまりにも明確に、政治的な立場・姿勢と結びついてるのだ。同じような立ち位置の人にとってはプラスの効果をもたらすだろうが、私はそうではないので、逆にマイナスの印象を感じてしまう。

  

とはいえ、確かに客観的に再考の余地があるかも知れない死刑判決ではあるので、ごく簡単に全体を見渡した感想を書いとこう。ちなみに私は数年前から、和歌山カレー事件(1998年7月)に冤罪説があるのを知ってたが、調べたのはつい最近になってのことだ。林真須美・死刑囚がいまだに執行されてないのも知らなかった。

   

   

     ☆   ☆   ☆

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映画『Mommy マミー』(監督・二村真弘)のポスターの真ん中には、白い文字で「母は、無実だと思う。」と書かれてる。背景には、青く澄んだ空。もう、これだけで、潔白、冤罪を主張する映画なのは明らかだ。「26年目の挑戦」で再審と逆転無罪を勝ち取りたいと。

    

映画のタイトルを見ても、林死刑囚に好意的な人物(長男)の「思い」が大切にされてるのが分かる。もちろん、裁判の判決と肉親の思いは(ほとんど)関係ない。下は、長男の名前で出版された書物『もう 逃げない』(ビジネス社、2019年)。

  

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母親が有罪にせよ、無罪にせよ、子どもは別のはずだが、現実の社会ではそうは行かない。その点は非常にお気の毒だが、冤罪説が正しいかどうかとは直接的に関係ない。捜査や裁判で母を弁護する機会はいくらでもあっただろうから、今からだと決定的な証言が必要になる。しかし、この表紙には、それらしい文言は全く書かれてない。

  

   

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上は、2009年に最高裁が上告を棄却した翌日の朝日新聞・朝刊(2009年4月22日)。朝日のこの朝刊だけでも、かなり詳しく報道されてる。まして、全国紙すべて、テレビ・雑紙の報道全体、3つの裁判の判決に目を通すと、大変なことになる。

   

夏祭りのカレーに、猛毒のヒ素(亜ヒ酸)が混入して、4人が死亡、63人が中毒。これが中心の事件だが、他にもヒ素による殺人未遂が認定されてるので、常識的には冤罪とか無実・無罪のイメージは持ちにくい。

  

仮に、裁判に数々の不十分な点や間違い、不正があったとしても、それは司法の手続きの問題であって、事の真相は別問題。もちろん、「疑わしきは罰せず」という言葉は建前であって、実際には、「十分に疑わしきは罰する」のだ。

   

最高裁では5人の裁判官の意見が一致してるから、少なからず疑わしいのは確かだろう。公開されてる判決もそうなってる。「本件上告を棄却する」、「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されていると認められる」。

   

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最も大きな論争点は、カレーと同じ亜ヒ酸・ヒ素が、林の自宅などから検出されたという点。冤罪説は、科学的に間違いだと強く主張してる。下は、河合潤『鑑定不正 カレーヒ素事件』(日本評論社、2021年)。

  

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この本は、amazonの電子書籍読み放題で読めるが、正直、これを読んでも、「京都大学のある1人の教授が、鑑定は不正だと強く主張してる」ことが分かるだけで、その教授の主張が正しいのかどうかは分からない。

      

そもそも、「はじめに」の書き出しの文章は、あまり科学者的とは感じなかった。「裁判と鑑定の滑稽さを際立たせる」。これはジャーナリストやライター、評論家の書き方だ。

  

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もし正しいのなら、なぜ再審請求が認められないのか。権力の腐敗とか傲慢さという話に持ち込むと、いわゆる陰謀説の類に近づく。むしろ、他の間接的な証拠や「消去法」(他の人では混入できないことを示すやり方)で十分だから、と考える方が自然だろう。

      

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田中ひかる『毒婦 和歌山カレー事件 20年目の真実』(2018年)は、長男の著書と同じ出版社から出たもの。動機なし、自白なし、はいいとして、物証なしというのはよほどの新事実がない限りは認められない。そして、この表紙(と帯?)を見るだけで、それほどの新事実は書かれてなさそうに感じる。

   

   

     ☆   ☆   ☆

というわけで、色々と情報を見渡しても、よく分からないというのが事実だ。もし今後、再審で逆転無罪になっても、世間的な印象はあまり変わらないと思う。社会復帰の道も非常に険しいはず。

  

なお、私は死刑制度にはあまり賛成してない(必ずしも反対ではない)ので、執行されないことにあまり異議はない。家族との面会や差し入れもあるようだから、もうしばらくこのままの状態でいるのが妥当な落とし所か。

   

それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

     (計 2138字)

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