藤井聡太七冠、AI超えの絶妙手「9六香」で永瀬拓矢九段に逆転勝利!、香車を打つ場所と9七の合い駒~2024王座戦・第3局
別に結果論で言うわけじゃなくて、一発で逆転しそうだなと思ってabema動画をジーッと見てた。藤井聡太・王座の2連勝で迎えた、2024年(第72期)王座戦、第3局。終盤に入って、永瀬拓矢九段の有利・優勢が継続。
ただ、すぐ終わりそうな局面になっても、アベマのAI評価値(期待勝率)はそれほど大きく離れない。普通なら、永瀬90%vs藤井10%くらいになりそうなものなのに、たかが80vs20とか、70vs30が続いてる。
しかも、お互いが1手指す度に数字は揺れ動いて、65vs35くらいまで接近することも多かった。AIでさえ、それほどハッキリしない将棋の終盤を、人間が2人とも1分将棋で考えてる。藤井七冠の驚異的な終盤力、詰将棋の圧倒的実力を考えると、一発逆転は十分あり得る状況だったのだ。
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上図は、後手の藤井の146手目、9六香の局面。間違いなく、これから長く語り継がれる妙手の1つで、しかもAIは指せない(指さない)手だ。人間が人間に対して放った、ミスを誘う妖しい勝負手。
もちろん、先手の永瀬が金で取れば、8七金ですぐ詰むから、9七に合い駒することになる。金や銀だと、攻撃力が落ちてしまうから、9七歩の合駒が自然。
ただ、局後の永瀬の感想によると、第一感は9七桂だったらしい。危ない悪手に見えるけど、これが最善手。唯一の正解だったから、永瀬が優勢のままだった。ところが1分将棋の秒読みだと、9七桂で自玉が詰まない(後述)ことを読み切るのが難しい。
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そこで普通に9七歩と合い駒した途端、評価値は大逆転。そのまま藤井の勝利、初防衛となった。
評価値の推移グラフは、真下に急降下。将棋ならではの、一瞬の形勢逆転。たぶん、AI同士のコンピューター将棋では起きないだろうから、人間ならではのドラマと言える。
藤井が八冠になった、去年の王座戦・第4局の時ほどではないけど、投了する前の永瀬の仕草や表情が印象的だった。すぐ間違いに気づいたはずだから、その後は「負けました」と投げるまで、自分の心の動揺と向き合うことになる。
動揺と言えば、abemaの映像スタッフも動揺♪ 一瞬、「永瀬拓矢九段 勝利 第4局は・・」と表示してたのを私は見逃さない・・というか、実は待ち構えてたのだ(笑)。ただし、ミスへの対応は非常に素早かった。1.5秒くらいで訂正された気がする。
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さて、伝説となるはずの藤井の9六香。なぜ、そんな中途半端な場所から打ったのか? 実は、別の将棋AI(水匠電竜)だと、9一香と離して打つ方が評価が高かったのだ。
ちなみに、もっと評価が高いのは9一飛だった(ある瞬間の分析で)。私もたぶん、9一飛と指して、ずっと遊び駒になってた大駒を活用する。自玉の受け、守りにも使えるかも知れない。
それはさておき、もし9一香なら、先手の永瀬は9四歩と捨て駒すればいい。藤井が取ると、もともと9四香と打ったのとほぼ同じ局面になるから、上図ではもともと9四香と打った局面にしてある。
これなら、先手は普通に9七歩と合い駒すればいい。9四香が後手の玉の逃げ場所をジャマするから、その後、7三銀で詰ますことができる。9二玉、8二金、9三玉、8三金、同玉、7二馬、7四玉、6四成桂など。
藤井が9二香とか9三香なら、もう少し簡単に先手が勝てる。藤井が9五香なら、先手は同馬で取ればいい。
したがって、9六香という打ち場所は絶妙だったのだ。もちろん、先手が正しく9七桂と指せば逆転しなかったけど、アベマの解説者2人もかなり興奮してたから、プロ棋士でも1分では選べない正解だった。
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ところで、先手の永瀬が9七桂と指してたら(上図)、先手玉は詰まないのか? 危なく見えるけど、調べてみると、確かに詰まない。
後手が8八金なら、同銀で詰まない。同銀成、同金と進んで、先手の金がよく受けに効いてる。ちなみに、8八同金だと同銀成で詰んでしまう。
後手が9九金なら、同玉、9七香不成の時、9八歩の合い駒で詰まない(9七同金なら8八銀で詰み)。
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なお、YouTubeのアユムの将棋実況(AIは水匠電竜)をチェックすると、そもそもあの9六香の直前の局面で、アベマのAIほどには評価値が離れてなかった。後手9一飛なら、たかが「先手有利」となってるから、まだまだこれからの将棋。
それどころか、9六香、9七歩と進んでも、「互角」の形勢と判断してた。後手の7八銀には、8八金打と守って粘るらしい。アベマのAIの判断とどっちが正しいのか分からないけど、時間もないし省略しよう。
とにかく、あらためて藤井七冠の終盤力の凄さに感動させられる名局だった。やはり、人間同士の対局はドラマチックなのだ。それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 1985字)
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