生成AIによるディープフェイク映像・音声の功罪、近未来ドラマと世界の状況〜NHKスペシャル『創られた“真実”』
ディープフェイクという言葉は数年前から話題になってるし、言葉で表された内容的には、私にとって新しい点はなかった。ただ、ドラマで物語になると感情移入しやすいし、ドラマ部分にせよドキュメンタリー部分にせよ、映像・音声の持つインパクトというものはやっぱりある。
ディープフェイクは映像・画像と音声によるものだから、テレビが扱うのに適した素材。ただ、省かれてる言語情報は自分で補うことになった。とにかく、真面目に視聴したから、まとめと感想の記事をアップしとこう。
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NHKスペシャル『創られた“真実”』、ディープフェイクの時代。脚本は大石哲也。主演は青木崇高。ディープフェイクを用いた企業犯罪で妻・真奈美(入山法子)を殺された夫、佐藤晃を演じた。
犯罪の解決には最後に成功したけど、詐欺に引っかかって自殺した妻は戻らないし、佐藤自身もディープフェイク映像との向き合い方には苦悩。最後に、妻のフェイク映像を削除しようとしたけど、本当に削除したかどうかは分からないように映してた。
おそらく、大半の視聴者は削除したと思っただろうけど、削除ボタンの画面と、エンターキーを映す画面の間で切り替えがあったし、削除を完了したことを示す映像は映ってない。演出は四宮秀ニ。
最後は、娘の麗美(白山乃愛)がこっそりお母さんのフェイク映像を楽しむシーン。困惑する叔母・洋子(本仮屋ユイカ、自殺した母=妻の妹)の表情は映ったけど、消しなさいといった指示やアドバイスは出さなかった。そもそも、仮に削除したところで、何度でも新たにこっそり創り直せるのだ。多くの場合、無料で簡単に。
ちなみに、私はその種のものを作ったことはないけど、わりと近いうちに試してみようかとは思ってる。あと数年は、身近な人間に関しては、本物との区別ができると思ってるけど、その先は区別できなくなりそう。単に試すだけなら、今のうちだとは思う。
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番組は基本的に、事実を考慮した作り話、「ファクチュアルドラマ」だけど、ドキュメンタリー部分も少し入ってた。冒頭、いきなりインパクトのある言葉が登場。
「私たちは真実かフェイクか見分けのつかない“ポスト・リアル社会”に生きている」。
このサイバーセキュリティーの専門家は、チェックポイント(CHECK POINT)社のピート・ニコレッティ(Pete Nicoletti)で、有名人らしい。
少し前に流行った言葉「ポスト・トゥルース」は、情報の真偽が分からない状況を指してたけど、ポスト・リアルは映像や音声の真偽さえつかなくなった状況を表してる。
ただ、ちょっと強調し過ぎだとは思う。今後、数十年経っても、目の前の物事については区別がつくはず。分からないのはあくまで、機械を通じた映像や音声だけなのだ。触覚や嗅覚などについては、まだまだ発展途上。そもそも、いくらリアルな映像の食べ物でも、食べることはできない。
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番組のかなり後には、フェイクを発見する会社リアリティ・ディフェンダー(現実を守るものという意味)の専門家が、こう話してた。CEOのベン・コールマン(Ben Coleman)。
「信じるものがどんどん変わっていく世界に 私たちは生きているのです」
変化の速さはその通りだけど、これもあくまで、言語情報と映像と音声に関する話。目の前の飲み物を信じる点については、変わらないはずなのだ。少なくとも、実際に飲んで大丈夫だった後では。本当に飲食できるフェイクが流通する未来が到来するとしても、数百年以上は後のことだろう。。
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2024年の世界の不正アクセス300万件の中で、ディープフェイクは21万件。前年比4倍。具体的にどうやるのかは色々だろうけど、とりあえず私は、顔認証とか指紋認証といった生体を使うタイプは避けてる。このドラマでも、顔認証がフェイク映像で突破されてた。

大統領選挙の前、候補者のトランプやカマラのフェイク映像がちょっと話題になってたけど、深刻な被害にはなってないはず。常識的に明らかに嘘っぽいから。本物なら、大量のニュース報道が流れ続けるはず。

ドラマ部分の冒頭、「ストップ詐欺被害 私たちはだまされない」と可愛い顔でアイドルが啓発。ところがこの草薙美玲というキャラクターもフェイクで、実際は無愛想で冴えない男性社員だった(失礼)。
そう言えば、最近話題になってるのは、本物の警察の電話番号を用いた詐欺。これが怖いのは、どうやってるのか仕組みが解明されてないということ。とりあえず、電話番号のフェイクというものもごく一部ではあるらしい、と認識しとこう。
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物語のスタートは、外資系の大手企業・サンシャイン生命の顧客情報漏えい。外国との情報のやり取りで、共有フォルダを使うという話になってた。23万件だと、1件30ドル(4500円)として、総額10億円以上の被害と計算。

使われた手口は、ディープフェイクのビデオ会議。リアルタイムでフェイク参加者を創り出して、本物の人間を騙す。4分割の画面の右下が、担当者の真奈美で、騙されて顧客情報を送ってしまった。
皮肉なことに、その真奈美が助けを求めたのが、DIPLEX(ディプレックス)という専門企業。実はここのチーフ・坪倉が犯人だったのに、そうとは知らない真奈美は犯人に助けを求める。もちろん、解決はせず。
ただ、その記録があったから、自殺の後に夫が転職して潜入。犯人逮捕につながった。ちなみに坪倉を演じた泉澤祐希は、2006年のドラマ『白夜行』で主人公・亮司を演じた子役らしい。かなり違って見えるけど、芸歴は長いと。
犯人特定の決め手は、専用ソフトによるフェイク会議映像の解析。作成したPCが坪倉の物だと判明。その一方、佐藤の娘をイジメてるような動画を作成したのが、娘自身だということも、解析で判明。本物のイジメ動画は裸の映像だから、代わりになる動画をこっそり父親のPCで作ったらしい。
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結局、真奈美は責任を取る形で自殺。幸せな家庭は壊れて、娘の態度もおかしくなる。ただ、叔母の洋子とは仲良しらしい。本仮屋ユイカを久々に見たけど、この髪型も含めて、私の好みの美人♪ 妻の役でも良かった。

ディプレックスという会社は、別に犯罪組織ではなくて、フェイクで人助けをするという建前らしい。ここで中国の実際のニュースが紹介されてた。孫が亡くなった父をフェイクで蘇らせて、祖母を慰めると。中国でその種のサービスが流行ってるという報道は、私も見たことがある。

微妙だったのは、一応、正義の側に立ってる夫と義妹が、フェイク映像で顔認証を突破してたシーン。まあ、亡き真奈美と近い親族だから、問題になることはないだろうけど、使用規約的にはおそらく禁止事項のはず。
AIが作ったフェイク映像が、パソコンの顔認証の命令に従って顔を動かす。妙な状況に,本人、つまりフェイク映像の真奈美も笑ってた。

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逮捕された坪倉は、「庶民を搾取する大企業を懲らしめたかった」と供述。ありがちな、個人的「正義」に基づく犯罪。ドラマ的にはむしろ、単なるゲーム感覚の犯罪に見えた。

番組のドキュメンタリーパートでも2回ほど映し出されてた、本当の事件。「偽テレビ会議で送金指示」、「詐欺 生成AIで巧妙化」、「英で40億円の被害」。
日経新聞(2024年6月29日)朝刊の記事を確認すると、香港系のアラップ(Arup)という企業らしい。
日本で増えそうだというのは、要するに今までは、言語が複雑すぎてフェイク詐欺が難しかったから。ところが最近は、日本語でもアラビア語でも平気になったから、詐欺が増える見込みとのこと。番組でも、実際の日本語フェイク映像が流れてた。
偽メールなどを使った詐欺はBEC(ビジネスメール詐欺)と呼ばれて、世界で月間6600万件との事。費用がゼロに近いから、異常に多くなってる。私も最近は毎日、50件くらい受信してるから、迷惑フォルダから削除するだけでも面倒だ。
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自分で調べて気になったのは、いつもの事ながら、日本の海外報道の遅さ。日経が6月末に報じた事件は、英語圏だと5月半ばに報じられてる。上はCNN。40億円と書く代わりに、2500万ドルと書かれてる。

個人的には、ディープフェイク自体より、それが流通してる暗黒世界、「ダークウェブ」の方が遥かに不気味で怖い。そもそもここは、普通の人間にはアクセスできないし、無理してアクセスすると想定外のリスクもありそうだから。
まあ、当面の間は,ダークウェブ自体の取り締まりは無理だから、そこから普通の世界に出て来た犯罪や犯罪者を厳しく扱うしかない。意外に長くなったので、今日はこの辺で。。☆彡
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