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女性AI研究者・新井紀子の『シン読解力』とRST(リーディング・スキル・テスト)、問題例の批判的解説

新井紀子という名前は、ここ10年くらい、AIや数学・論理・教育の話でよく見聞きする。理系の専門家として売れてる女性の1人。このブログでも既に扱ってるつもりになってたけど、ブログ内検索をかけてみると、一度も扱ってないらしい。

    

そこで今日は、時間がない中、今年(2025年)の3月に出版された著書『シン読解力』の最初の方に出て来る問題を見てみよう。「シン」はサブカルチャーから借りた言葉で、新・真・深という意味だと思う。表紙には、「学力と人生を決める もうひとつの読み方」と書かれてる。

   

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その基礎的な読解力(リーディング・スキル)は、本を読むだけでは不十分だけど、技術としてトレーニングすれば、才能の有無に関わらず身につけることができる、とされてるようだ。企業にも浸透しつつあるらしい。さて、その中身、実体はどうだろうか。

    

  

    ☆   ☆   ☆

では、彼女たちが作り出したRST(リーディング・スキル・テスト)の問題例を一つずつ、見て行こう。

  

まず、問題02、係り受け解析。ネットでも何度か話題になってた有名問題、「アミラーゼ構文」

   

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そもそも私なら、元の文章は次のように一工夫して書く。改行は別に無くてもよいし、色分けも不要だけど、学校その他の授業なら、その程度のことはしてもいい。

   

 アミラーゼという酵素は、グルコースがつながってできたデンプンを分解する。

 しかし、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

    

2つの文に分けて、1つ目の文の主語・主部の節「アミラーゼという酵素は」の直後に読点「、」を入れる。すると、似たような文が2つ並んでいて、どちらも同じ主語だということが分かりやすいはず。

  

デンプンとセルロースが対応してるのも、一目瞭然。どちらも、同じ主語アミラーゼを「係り受け」てる。よって正解は、①デンプン。

   

   

     ☆   ☆   ☆

続いて、問題04、推論。つまり、学校教育でも実社会でもしばしば重視される、論理的思考

    

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私なら、「本当は『判断できない』けど、出題者や採点者は『まちがっている』を答だと思ってるんだろう」と推論して、仕方なく「まちがっている」と答える。これこそ、シン推論力。あるいは、シン適応力♪

       

要するに、素直に表面的に読むだけなら、森林が減って今では31%しかないけど、昔はもっと森林が多かったということ。だから、森林ではない部分は69%より少なかったことになる。だから、「70%以上が森林ではない部分だった」というのは、まちがっていると。

   

しかし、「失われた」というのが、1990年から2010年にかけて新たにプラスされた森林も加味した総体的な表現なのか、それともマイナスの部分だけ取り上げた表現なのか、曖昧で不確定。

   

その意味で、「シン正解」は、「これだけからは『判断できない』。ただし、『失われた』という情報が、新たに出来た森林も既に考えに入れたものなら、『まちがっている』」。

  

言い換えると、「・・・ただし、回答に際して、新たに出来た森林は気にしなくてよいという条件なら、『まちがっている』」。  

    

     

     ☆   ☆   ☆

さらに、問題05、イメージ同定。文章に適合するイメージ(図、円グラフ)を選び出す。

      

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これも、問題文や円グラフが良くない。1つの文の中で、違う意味のパーセントを2つ書いてるから、読者が迷うのは自然なこと。

  

円グラフも、①③④は論外として、正解とされてる②も不親切で不自然。

「0.28×0.35=0.098=9.8%」

という計算と単位変換を暗算ですぐ出来る人は、非常に少ないし、出来る必要もない。

    

私なら、2つの円グラフ(選手全体と、外国出身選手の全体)を書くか、元の文を例えば次のように書き換える。

   

 メジャーリーグの選手のうち28%は、アメリカ合衆国以外の出身の選手である。

 そうした選手の出身国(アメリカ以外)の中では、およそ35%のドミニカ共和国が最も多い。

     

もし円グラフに、②のように「ドミニカ共和国 3.8%」と書きたいのなら、元の文にその数字を入れるべきなのだ。「シン文章グラフ対応付け力」。

  

 そうした選手の中では、ドミニカ共和国の出身者が最多で、メジャーリーグの選手のうち、およそ9.8%である。

   

 

    ☆   ☆   ☆

最後は、問題07、具体例同定。与えられた説明に対して、その具体例を選び出す。

     

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これまた、問題が良くない。少なくとも、不親切。「直接金融を利用している主体(人や会社)として当てはまるもの」を選ぶのに、正解の④の貸し手は大学になってる。

   

これを正解としたいのなら、「直接金融を利用している主体(人や組織)」などと書くべきなのだ。あるいは単に、「直接金融を利用している主体」とだけ書くとか。そうしないと、カッコ内に書かれてない大学だけが仲間はずれで浮いてしまう。

    

新井は、どういうわけか②を選ぶ人が多いと書いて、不思議がってるが、それは明解に説明できる自然な選択。

     

①と③は銀行だから、間接金融でダメ。④は大学だから、主体とできるのか不明で選びにくい。よって、消去法で②になる。しかも②は、人と人だから、主体としてふさわしいのだ。

   

お年玉は返す必要がないと言っても、長い期間で広く考えれば、返してると考えられる場合も少なくない。そもそも、最初の説明文に、貸し借りした後の返済の話までは書かれてない。

  

    

    ☆   ☆   ☆

シン読解力も重要だろうが、シン出題力、シン作文力、シン問題作成力も大切。いずれにせよ、実用的な国語力を問題形式でトレーニングする発想自体には賛成する。

    

本来なら、そうした能力はもっと自然に養われるべきものかも知れないけど、SNS時代にそれは難しすぎる要求だろう。案外、より国語力をアップできる、シンSNSが要求されてるのかも。

   

それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

    (計 2405字)

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