算数・数学の自由研究コンクール最優秀賞(文部科学大臣賞)、数学的・論理的間違いの指摘、修正案と感想
一昨日、2026年2月19日、Yahoo!で偶然、数学関連の記事を見かけた。南日本新聞社が配信した記事で、実際の時期的には昨年末ごろの出来事。

「世界の人口爆発を止め、社会を発展させる方程式 ━━ 中3女子が弾き出した『教育支援の有無で158億人の差』・・・2100年、私たちはどちらを選ぶ?」
教育政策の費用対効果を数学的に考察したとされる中学生のレポートに、6つある最優秀賞の1つである文部科学大臣賞が授与されたとのこと。
「算数・数学の自由研究」作品コンクール。主催は理数教育研究所、去年の第13回・2025年度は、国内外から小中高生14000人近くが応募してるから、国内で最大規模の大会と言ってもいい気がする。高校生にとっては、しばらく休止中の数学甲子園の決勝戦の代わりみたいな内容。

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今回の作品の作者はあえて明記しないし、学校名も書かないが、中央審査委員と委員長、選考基準は引用させて頂こう。文字入力は控えるが、有名人たちの名前が揃ってる。予選みたいな地域選考やブロック選考はまた別。

誤解を避けるために、最初に経緯と意図を書いとこう。私はすぐ、元の作品に目を通した後、ヤフーのコメント欄で190付いてたコメント全てに目を通した。すると、数学的・論理的な具体的内容を書き込んでるものは見当たらなかった。
しかし、私は一読してすぐ、様々な問題点がほぼ理解できた。もちろん、最優秀かどうかは、他の全作品との比較で決まることだから、私には分からないし、関係者の誰にも分からないだろうと思う。作品が多過ぎるし、3段階の選考。しかもおそらく、分業による選考だろうから。
けれども、記事になってた1つの作品だけを読むと、論理的な循環、回り道して元の仮定に逆戻りしただけだろうと感じたし、計算式の書き間違いか入力ミスも複数、すぐに指摘できた。
学校の担当の教師は生徒の自由と自主性に任せて、中央審査員も大まかに見て選考しただけだろうか。単なる数学好きのブロガーとしては、真面目に真正面から作品のロジックと数式を批評・評価してみよう。
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さて、作品の全体はpdfファイル10ページで、公式サイトで公開されてる。研究テーマ(タイトル)は、「未来を変える教育支援 ━ 世界人口とGDP(国内総生産)から考える ━」。
最初に気になったのは、本題ではないものの、冒頭の目立つ位置に掲げられたグラフ。

教育年数とGDPが正の相関関係を持ってる右上がりのグラフから、「教育を受けた年数が長い国ほど、一人あたりの経済水準が高い傾向にある」としている。
間違いとは言い切れないが、冒頭でいきなりそう書くのはかなり危険。教育のプラスの効果を最初から前提してる形になってしまうし、そうした読み方は逆に「経済水準が高い国ほど、教育年数が長い」と言うことにもつながってしまう。そうすると、教育というより、経済水準を上げるべきだという話になってしまうのだ。
さらに、このグラフの出典として末尾に挙げてるリンク先は、単なる知識共有サイトの1つに過ぎず、そこにある出典とされてるものも、元をたどると単なる英語のWikipediaの投稿。一般人の作者の名前が付いてて、米国の経済の教科書から引用してるようだ。
その教科書は無料公開されてないから、確認はできてないけど、本来ならその辺りの信頼できる1次資料を出典として挙げるチべき所。まあ、そうした学問的な作法は、高校や大学で学んで行けばいいとも言える。
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それよりも、最初の計算モデルと計算式が問題。ここでもう、主要な結論に到達してるのだ。もし教育支援がないと、人口が爆発してしまう、という結論に。



最初に普通の公式(高校数学の基本の等比数列)を挙げて、75年後の人口の計算例を1つ書くまでは問題ない。毎年同じ割合で人口増加が進むはずはないが、経済の理論でよくある大まかな近似的仮定。
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ところがその後、「仮想モデル」という言葉を用いて、奇妙な式変形と主張に導いてる。
要するに、75年後の人口を先に仮定して、そこから成長率r(人口増加率)を逆算。元の普通の公式を、
r=(P(75)/P0)の(1/t)乗-1 と変形して、P(75)には何か仮定の値を代入。P0は現在の人口80億人。
その75年後の仮定の値はおそらく、ネット上にある最悪の仮定の1つ、258億人を使ってるのだが、それを75と書き間違えてしまってるから、ほとんど意味不明な式になってる。
そして、そこで算出したrの値を元の普通の公式に代入して、75年後の人口を計算してるようだ。
そうすると、元の7年後の人口の仮定、258に戻るだけ。高校なら、関数と逆関数の合成とか、演算と逆演算の合成ということで、何も変化は生じない恒等変換。分かりやすい簡単な例だと、ある数Xを2倍した後、2分の1にすれば、元のXに戻るだけということ。
ただし、計算の途中の数値が長いので、その近似の仕方(小数第2位以下は四捨五入とか)で非常に小さいズレが生じる。実際、258だったのが、266.4億人にズレてる。
それが仮想モデルAの実態であって、仮想になってないし、論理的に循環させただけ。教育支援の話も実質的に入ってない。それらしきグラフに見えるものを添えてるだけで、仮定にも計算にも利用されてない。
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モデルBも同じことで、「80(75)」と書いてる部分は書き間違い。正しくは、「P(75)」。
ひそかに使われてる75年後の人口の推測値は、おそらく国連が出してるものの上限で、109億人。これも出典も説明も無しの引用で、ほとんどの読者には分からないこと。
そこから、モデルAの時と同様に増加率rを逆算した後、そのrの値で75年後の値を計算し直してるから、元の値とほぼ同じ108億人になってる。
近似計算でわずかにズレただけ。例えるなら、3を2.1倍した後、2で割って、3.15になったような計算プロセス。
そして、ここでも、教育支援の話など挿入されてないのだ。この後のお金(費用・経済)の話も、基本的に同様のレベルの議論で、もう省略しよう。
代案としては、まず簡単な間違いを訂正、説明不足を補って、本当に自分で「仮想」した別のモデルを新たに導入すれば、全体の形は一応、整うはず。
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こうした内容の作品を、有識者扱いされてる有名人たちが数学の文部科学大臣賞に選んで、マスメディアが、教育の価値を示す方程式を新たに見出した研究のように報道してる。
さて、どうだろう? 生徒の自由研究の奨励だから、「細かい事は気にしない」ということか。批判より褒めるのが大切なのは、今の青少年教育の常識だとか。関係者の皆さん、読者の皆さんに、あえて漠然と問いかけることで終わりにしよう。
単なる数学好きとしては、出典の話はさておき、論理的・数学的な問題点や改善法を明確に指摘しておいた。ではまた。。☆彡
(計 2889字)

























































































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