1~7の数字を並べた整数A、Bの和が9723になるのは何通りか(高校・場合の数)~開成中2023年入試、算数・問題5の解き方

今年(令和5年)も、開成中学の入学試験が終了。算数の問題だと、最後の問題5が面白そうに見えましたが、解いてみると、ここ最近の面白問題の中では最も簡単だと感じました。元々、例年のような難問ではない上に、親切で分かりやすい誘導がついてます。解き方を教えてくれてるのです。

      

ただ、それは私が高校数学を知ってる大人だからかも知れません。問題文の中で丁寧に解き方が説明されてますが、それは高校1年の数学の「場合の数」と呼ばれる所で本格的に扱われる話で、高校1年生にとっては教科書の章末問題くらいのレベルです。

   

しかし、それを優秀な小学生がどう感じるのかはよく分かりません。確かに、もし自分が小学6年生の時なら、かなり難しく感じるでしょう。そもそも問題文も長いし、時間も短いので。

   

   

     ☆     ☆     ☆

それでは、問題5の(1)から、解法や考え方を解説して行きます。問題文はいつものように、四谷大塚HPから引用させて頂きます。

   

[5] 1、2、3、4、5、6、7 の7種類の数字のみを並べてつくられる整数 A、B を考えます。例えば、5、73、1422 は整数 A、B としてふさわしいですが、8、939、4016 は 8、9、0 の数字をふくむので整数 A、B としてふさわしくありません。

 整数 A、B の和で新たな数をつくることを考えます。例えば、A + B = 20 になる A、B の組は、次の表のように 10通り考えられます。

   

230204a

  

次の空らんア~キにあてはまる数をそれぞれ答えなさい。

      

(1) A + B = 96 になる A、B の組について考えます。A、Bの一の位の数字は、その和が6になるので、次の表のように5通り考えられます。

 

230204b

    

このうち、Aの一の位の数字が 5、B の一の位の数字が1であるものを調べると、A、B の十の位の数字は,その和が9になるので、次の表のように6通り考えられます。

   

230204c

   

このことから、A + B=96 になる A、B の組のうち、Aの一の位の数字が5、Bの一の位の数字が1であるものは、6通りあることがわかります。

これを参考にして考えると、A + B=96 になるA、Bの組は [ア] 通りあることがわかります。

    

  

(解答) 同じように考えると、「A の一の位の数字が 4、Bの一の位の数字が2であるもの」も6通り。「Aの一の位の数字が 5、B の一の位の数字が1であるもの」も、「Aの一の位の数字が 5、B の一の位の数字が1であるもの」も、「Aの一の位の数字が 5、B の一の位の数字が1」であるものも、それぞれ6通り。

よって、全部で、6×5=30(通り) ・・・アの答

   

   

     ☆     ☆     ☆

(2) A + B=971 になるA、Bの組について考えます。

971=960 + 11 に着目して考えると、A、Bの一の位の数字は、その和が11になるので、次の表のように4通り考えられます。

  

230204d

     

また、(1) の結果を参考にして考えると、A + B = 971 になる A、B の組のうち、A の一の位の数字が7、B の一の位の数字が4であるものは、[イ] 通りあることがわかります。
これを参考にして考えると、A + B = 971 になる A、B の組は [ウ] 通りあることがわかります。

   

  

(解答) A、Bの十の位と百の位だけで考えると、A+B=960となる組合せは(1)より30通り。

よって、A の一の位の数字が7、B の一の位の数字が4であるものは、30通り。 ・・・イの答

   

一の位の数字の組は4通りあって、どれも同様なので、

A、Bの組の全部は、30×4=120(通り) ・・・ウの答

   

   

    ☆     ☆     ☆

(3) A + B = 972 になる A、B の組について考えます。

A、B の一の位の数字は、その和が12と2のどちらかになるので、次の表のように4通り考えられます。

   

230204e

      

● A + B = 972 になる A、B の組のうち、A の一の位の数字が 7、B の一の位の数字が5であるものは、[エ] 通りあります。

● A + B = 972 になる A、B の組のうち、 A の一の位の数字が 1、Bの一の位の数字が1であるものは、[オ] 通りあります。

これらを参考にして考えると、A + B = 972 になる A、B の組は [力] 通りあることがわかります。

   

  

(解答) A の一の位の数字が 7、B の一の位の数字が5であるものは、十の位と百の位だけで考えるとA+B=960だから、(1)(2)より、30通り。 ・・・エの答

同じく、A の一の位の数字が 6、B の一の位の数字が6であるものも、30通り。A の一の位の数字が 5、B の一の位の数字が7であるものも、30通り。

  

次に、 A の一の位の数字が 1、Bの一の位の数字が1であるものについて考える。十の位と百の位だけで考えると、A+B=97。(見方を変えると、970。)

よって、十の位だけの和なら7だから、A+Bの十の位は、6+1、5+2、4+3、3+4、2+5、1+6の6通り。

また、百の位だけの和なら9だから、A+Bの百の位は、7+2、6+3、5+4、4+5、3+6、2+7の6通り。

したがって、A の一の位の数字が 1、Bの一の位の数字が1であるものは、6×6=36(通り) ・・・オの答

  

以上より、A + B = 972 になる A、B の組は全部で、30×3+36=126(通り) ・・・カの答

 

      

     ☆     ☆     ☆

(4) A + B = 9723 になる A, B の組は [キ] 通りあります。

    

(解答) まず、A+Bの一の位は、7+6、6+7、2+1、1+2の4通りある。

A+Bの一の位が7+6か6+7の場合、十の位以上だけで見ると、A+B=971。

よって(2)より、それぞれ120通りある。

  

次に、A+Bの一の位が2+1か1+2の場合、十の位以上だけで見ると、A+B=972。

よって(3)より、それぞれ126通りある。

  

以上より、A+B=9723になるA、Bの組は、

 (120×2)+(126×2)=492(通り) ・・・キの答

   

   

     ☆     ☆     ☆

この問題には、何か隠された意味とか背景があるような気もしますが、今のところ分かりません。サイコロの目(1~6)に、7を加えてヒネっただけかも知れません。1~6だけだと、最後の7+6とか6+7という話が使えないので、もっと簡単になってしまいます。

    

ちなみに高校ではよく、A、Bを作る数字に0を入れた問題が出ます。その場合、左端(先頭)の数だけは0が使えないから、ちょっと面倒になります。左端だけ別扱いにするわけです。この問題の最後の(4)なら、左端の千の位だけは数え方をちょっと変えるということです。

   

ともあれ、受験生やご家族、学習塾などの皆さん、どうもお疲れさまでした。それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

     

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      (計 2930字)

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桜(ソメイヨシノ)の開花予想と、気温の時間積分(1次関数、2次関数)~2023年共通テスト数学ⅡB・第2問〔2〕

今年(2023年、令和5年)の共通テストの数学(ⅠA、ⅡB)は、かなり簡単になってるので、受験生としてはラクだったろうけど、半ば理数系のブロガーとしては物足りない感じもある。

   

とはいえ、面白い題材を使って工夫された問題ではあるし、恒例行事として、数学ⅡBの記事も1本書いとこう。桜(ソメイヨシノ)の開花予想を、積分で求めるという話だ。

   

高校数学の積分など使わなくても、小学校の算数でも十分通じると思う。例えば、毎日の最高気温を足し算して行くだけでも、それなりの近似式は求められるはず。それをヒネって高校数学ⅡBを使う形にしたのが、この問題なのだ。

   

問題はまた、河合塾HPから頂いた。既に、国語、数学ⅠA、情報関係基礎の記事はアップ済み。

   

   

     ☆     ☆     ☆

ではまず、第2問〔2〕(1)から。

  

230129a

   

解答

(定積分)=〔(1/10)x²+3x〕(0≦x≦30)

     =90+90

     =180 ・・・タチツの答

   

(不定積分)=(1/300)x³-(1/12)x²+x+C 

         ・・・テトナ、ニヌ、ネの答

   

感想 極端に簡単なウォーミングアップ問題だけで、15点中の6点を与えてる。これだけで4割だから、既に前年の平均点みたいな割合。前年の問題が難し過ぎたとして、かなり批判・反省があったということか。

   

  

    ☆     ☆     ☆

次の(2)からが本題。まず(ⅰ)

     

230129b

    

230129c

    

230129d

    

230129e

    

230129f

    

解答

 S(t)=〔(1/10)x²+3x〕(0≦x≦t)

     =(1/10)t²+3t

     =400

∴ t²+30t-4000=0

∴ (t+80)(t-50)=0

xは0以上だから、tも0以上。よって、t=50 。

したがって、開花日時は50日後。選択肢の4が、ノの答

  

感想 問題文の日本語が不十分。出題者は、tはx日後のxを表す値(パラメーター)だから理解できるだろう、という考えなのだろう。しかし、「開花がt日後とすると、S(t)=400である」などとする方が明確。

  

  

     ☆     ☆     ☆

続いて、最後の(ⅱ)

   

230129g

    

230129h2

    

230129i

   

解答

 x≧30でf(x)は増加するので、

 (30≦x≦40でのf(x)の定積分)

    (40≦x≦50でのf(x)の定積分)

よって、ハの答は、選択肢の0

  

(1)より、(0≦x≦30での定積分)=180

また、問題文より、(30≦x≦40での定積分)=115

さらに、(40≦x≦50での定積分)>115

   

∴ (0≦x≦50での定積分)

    >180+115+115=410

∴ (0≦x≦50での定積分)>400

    

一方、(0≦x≦40での定積分)

     =180+115=295

∴ (0≦x≦40での定積分)<400

   

したがって開花日時は、40日後より後、かつ50日後より前

結局、ヒの答は、選択肢の4

   

   

    ☆     ☆     ☆

感想 簡単すぎるのはともかく、積分の不等式を考えさせるのは実用的で良い発想。現実の世界では、近似も含めて、不等式の方が遥かに重要なのに、高校までの算数と数学はほとんど等式を扱ってる。そもそも、定積分の定義にも不等式がひそかに入ってるので、もっと不等式の問題が増えていいと思う。もちろん、平均点の低下には何か対策を施すとして。

      

というわけで、今年の共通テスト記事もこれで一段落ついた。なお、今週は久々にやや少なめ、計13663字で終了(暫定)。また来週。。☆彡

    

      (計 1346字)

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トランプの4種の絵柄(ハート・スペード・クラブ・ダイヤ)を並べた暗号と解読方法~2023年共通テスト・情報関係基礎・第2問

今年(2023年)の共通テスト・情報関係基礎も、第2問が凝った出題になってるが、去年(回文)ほど奇妙な問題ではないし、トランプの絵柄だから親しみも持てる。ストーリーも受験生向けに、(テレビ)ゲームを意識して創られてた。

    

ただ、相変わらず問題文が長いので、試験場で60分で高得点を狙うのはなかなか大変だと思う。読むだけでも面倒で、じっくり論理的に考える余裕はあまりない。

    

いずれ新必修科目『情報Ⅰ』に完全移行すると、こういった謎解きパズルみたいな問題は消えてしまうのかも。今のうちに、ブログ記事を書いとこう。ちなみに、去年の記事は下の通り。今年の国語と数学でも、既に記事をアップしてある。

  

 普通の文字列を回文の連結へと分解する方法と、回文ファンの「幸いさ」~22年共通テスト情報関係基礎第2問

   

なお、日本人にとって「ソリティア」というと、PCに入ってる Microsoft のおまけゲームが有名。試しに探してみると、Windows 10 にも入ってた。後でプレイしてみたい。

  

230126k

    

ソリティア(solitaire)というのは元々フランス語(発音はソリテール)で、名詞の場合、1人きりの人とか1人遊び用のゲームを指す言葉。だからソリティアには、多数または無数の種類が存在する。この問題自体も、ソリティアの特殊な例なのだ。

   

 

     ☆     ☆     ☆

では、第2問(必答問題)の問1から。問題は、河合塾の特設サイトからお借りした。情報関係基礎には独自の「分析」も平均点予想も掲載されてないのが残念だが、受験者数も読者も非常に少ないからだろう。

   

♡(ハート)、 ♠(スペード)、♣(クラブ)、♢(ダイヤ)、4つの文字を、スペードとハートの2文字だけに変換する暗号の話で、なまじ文字数が少なくてそれほど変化しないので、逆に間違えやすいかも知れない。

   

230126a

    

230126b

230126c

    

平文(元の通信文)が ♡♣♢♣ (ハート・クラブ・ダイヤ・クラブ)なら、暗号文は、♡ ♠♠♡ ♠♠♠ ♠♠♡ だから、アの答は、選択肢の。ここでは分かりやすさのため、暗号文にスペース(空白)を入れて区切ってある。

     

また、暗号文が ♠♡ ♡ ♠♡ なら、もとの平文は、♠ ♡ ♠ 。イの答は、選択肢の

さらに、暗号文が ♠♠♠ ♠♠♡ ♠♡ ♠♡ ♡ なら、平文は、♢ ♣ ♠ ♠ ♡ 。ウの答は、

   

この変換ルールだと、♠ ♠ ♠ ♠ という4文字の暗号文にはならないから、エの答は、

最後が ♡♠で終わる文にもならないから、オの答は、

    

最後がスペードの暗号になるのはダイヤのみで、その場合、スペードは3つ連続する。ただし、それは問1のみ。次からルールが少し変更されるので、最後が ♡♠ になることもある。

   

  

     ☆     ☆     ☆

ウォーミングアップで少し慣れた所で、問2暗号化のエラーとその対策方法、復元(修正)について。

  

230126d

   

230126e

    

230126f

   

暗号文が ♡ ♡ ♠♠♡ なら、♡の数が奇数(3コ)なので、最後のおまけとして♠を加える。カの答は、

暗号文が ♡♡♠♬♠♡♡ なら、最後がハートだから、ハートの数はおまけを除いて偶数のはず。よって、♬は♡。キの答は、

  

♡が偶数なら、おまけは♡1コ。♡が奇数なら、おまけは♡0コ。よって、どんな暗号文でも、「♡の数が奇数の文」になる。クの答は、

  

その性質を使うと、1文字だけ♬になった暗号文で、「ハートの数が偶数の文」なら、♬は♡だったはず。ケの答は、

    

♠♡♠♠♬♬♡♠ という暗号文の場合、最後がスペードだから、ハートの数は奇数のはず。よって、♬2コの内、片方だけが♡だから、♬♬は ♡♠ か ♠♡ 。よって、コとサの答は、1と2。順番はどちらでも可。

   

    

    ☆     ☆     ☆

最後の問3は、第三者による暗号の解読。暗号にとっては死活問題の、安全性、セキュリティの話。

    

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230126h

   

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230126j

    

もし、平文の ♡ が、暗号では ♠ 1文字なら、情報2より、他の文字の暗号は「♠からは始まらない」。シの答は、

文頭が ♠ の暗号文の割合は、表3の右側4つの値を足して、10+20+20+10=60%。スの答は、

文頭が ♠♠ の暗号文の割合は、表3の右端2つの値を足して、20+10=30%。セの答は、

   

さらに、平文の ♡ が暗号で ♡ 1文字の場合。♠の暗号の文字列zは、情報2より♡では始まらないから、♠ から始まるはず。ソの答は、

文頭がスペードの平文の割合は30%だから、表3で ♠ から始まる箇所を見ると、zは ♠♡(♠♡♡10%+♠♡♠20%)か、♠♠(♠♠♡20%+♠♠♠10%)。タの答は、

 

最後に、王子が予想した暗号化の方法Bでは、♡ を ♡ 、♠ を ♠♠ にするから、♣ は、♠♡ で始まって20%の割合。つまり、♣ は ♠♡♠ 。よって、チの答

♢ は、♠♡ で始まって10%の割合だから、♠♡♡ 。よって、ツの答

   

   

    ☆     ☆     ☆

以上、解き方も含めて解答を書いて気付いたのは、4種の絵柄のマークを入力するのが面倒だということ。試験場で手書きでマークを描くのも時間がかかる

 

絵柄の代わりに、ハ、ス、ク、ダと書く方が速いだろうが、それだと問題と合わないし、トランプの感じも出ない。そういった意味でも、見た目より手間がかかると思う。

 

とはいえ、去年の奇問よりは遥かに分かりやすい。それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

     (計 2136字)

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バスケットボールのシュートの軌道(リングへの放物線)、高身長プロ選手と普通女子~23年共通テスト数学ⅠA・第2問〔2〕

2023年1月15日(日曜)に実施された大学入学共通テストの数学ⅠAは易しくて、去年より大幅に平均点が上がるらしい。

    

河合塾の予想では、前年の平均38点から19点も上がって、今年は57点。5割増しの大きな変化だから、出題者サイドもレベル設定に苦労してるようだ。来年はまた少し難しくなるのかも。

   

  

     ☆     ☆     ☆

そんな中でも、あくまで高校3年生くらいの若者が興味を持てそうな問題作りが意識されてる。今回、扱う数学ⅠAの問題は、バスケットボールのシュートの軌道。背が高くて腕も長くてジャンプ力もある(?)プロと、わりと普通の女子の比較。わりと普通といっても、この女の子もかなり背が高い選手だろう。

     

バスケットボールやバレーボールは、明らかに身長が高い方が有利で、トップ選手は極端に背が高いことが多い。野球もしばしばその傾向があるから、私はサッカーや卓球の方が公平なスポーツだと思う。あるいは、体重別の格闘技とか。

     

もちろん、そんな事は問題を解くのに関係ないので、さっそく問題と解答、解説に移ろう。問題文は長いが、面倒な数式変形や計算の結果は教えてくれてるので、かなり親切な問題だと思う。平均点を上げるための工夫や努力が見られる。

    

ちなみに、私は受験生ではないブロガーなので、家で気楽にやってるが、記事を書く前に、何も書かずに暗算で解いてる。今回なら、最後の小数とルートの計算まで。朝日新聞のパズルを解く時もなるべく頭の中だけで解く。詰将棋みたいなもので、頭の体操。脳トレ。慣れると、頭で解く方が速いことも多い。

     

ただし、先日、記事にした漢字抜け熟語(難易度5)は難し過ぎたので、解く時に文字を書いてしまったし、ネット検索も何度もかけてしまった。さすがに、59コの漢字と63コの熟語が相手だと、脳内メモリーが不足する。

     

    

      ☆     ☆     ☆

問題文は、河合塾(産経)のHPから借用した。

    

230117a

   

230117b

   

230117c

   

  

第2問 〔2〕   

(1)(解答)

 y軸方向に-3、平行移動した放物線を考えると、点(0,0)、(4,0)を通るので、

 y=ax(x-4)=ax²-4ax

  

よって、C₁の式は、上の放物線をy軸方向に+3、平行移動して、

 y=ax²-ax+ ・・・キ、クの答   

∴ y=a(x-2)²-a+ ・・・ケ、コの答

    

(感想) 軽いウォーミングアップだが、平行移動せずに解くと、少しパワーと時間をロスするかも。キ、クの答と、ケ、コの答が全く同じなのも、試験場では不安になるはず。

  

C₂の式は、y=px²+qx+3とおいて、点(4,3)の座標を代入すると、q=-4p+1/4と求められる。

∴ C₂: y=px²-(4p-1/4)x+3

  

a=-2、p=-1とすると、グラフは下の通り。関数グラフソフト「GRAPES」使用。C₂の頂点の方が僅かに右にあるのが確認できる。

    

230117j

   

  

     ☆     ☆     ☆

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(2)(解答)

C₁の平方完成した式より、「プロ選手の『ボールが最も高くなるときの地上の位置』」は、2。Mのx座標4との距離は2。

C₂の平方完成した式より、「花子さんの『ボールが最も高くなるときの地上の位置』」は、2-(1/8p)。これはリングの左側のはずなので、Mのx座標4との距離は、2+(1/8p)。

C₂の2次の係数pは負の数だから、2+1/8p < 2

よって、「花子さんの『ボールが最も高くなるときの地上の位置』の方が、つねにMのx座標に近い」。サの答は、選択肢の

   

(感想) 計算しても簡単だが、計算しなくても2つの放物線のグラフを大まかに(頭の中で)書くだけでわかる。特に、花子さんのシュートの軌道が低い場合をイメージすると、最高点がリングに近いことが分かりやすい。計算で解く場合、pがマイナスの値だということを忘れてしまうと間違える。

  

なお、「花子さんの『ボールが最も高くなるときの地上の位置』」2-(1/8p)は、pがマイナスのまま0に近づくと、無限に大きくなる。これは、ボールがリングの下から上に通る場合なので、ゴールやシュートとは認められない。また、それが可能なのかどうかも微妙になる。ボールの上側がリングの下側に当たりそうなので。

     

    

     ☆     ☆     ☆

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230117g

    

230117h

  

230117i

    

(3)(解答)

再び、y軸方向に-3、平行移動した放物線で考える。

y=ax(x-4)が、点(3.8、(√3)/15)を通るので、

(√3)/15=-0.76a

∴ a=-(√3)/(15×0.76)

   =-(√3)/11.4

   =-()/57 ・・・シスセソの答

  

(1)のC₁の式(平方完成)より、シュートの高さは、-4a+3。

上のaの値を代入して、 

20√3/57+3≒3.6

  

よって、シュートの高さは、プロ選手が約3.6、花子さんが約3.4。

したがって、プロ選手の方がボール約1個分(直径0.2)、高さの値が大きい

タの答は、選択肢のチの答は、選択肢の

     

   

(感想) ADの長さくらいは受験生に求めさせたくなる所だが、そこで間違えるとその後も全滅するから、平均点が大幅に下がってしまう。それを避けるために、丁寧な誘導やヒントが付けられてる。ただ、√3の値は、1.732だけで十分のはず。近似値1.73でも問題は解ける。

     

数学好き、理屈好きにとっては、線分DMが円と接するという考えが引っかかる。それは、わりと考えやすい十分条件であって、必要十分条件を求めるには、放物線が円と接して、しかも常に放物線の方が上にあるための条件を計算することになる。その場合、この問題設定よりは、放物線の軌道が僅かに低くなる。

  

ただ、計算が面倒だし、実はセンターや共通テストの数学記事はアクセスがかなり少ないので、これ以上は止めとこう。国語の方が遥かにアクセスが多いし、情報の記事も数学よりはアクセスが多いのだ。数学の解答や解説は誰でも書きやすいし、予備校や塾と似たものになるからだろうと想像。

  

それに対して、情報の記事は珍しいし、国語は内容的に全く独自のものを書くことが可能。ともあれ、今日のところはこの辺で。。☆彡

  

      (計 2456字)

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誰が、何に、どれほど飢えているのか?~梅崎春生『飢えの季節』(初出『文壇』2巻1号、2023年・共通テスト・国語)

☆追記: 小説全体を読んだ感想記事を別に新たにアップした。

 梅崎春生『飢えの季節』、全文レビュー~戦後の日常・欲望・幻想をユーモラスに描くエッセイ私小説 )

   

    

    ☆     ☆     ☆

10年ほど前から、センター試験(現在は大学入学共通テスト)の国語の記事(特に小説関連)を書き続けて来た。

   

その中でも、アクセス数や熟読者数が多い記事が2種類、4本ある。去年(2022年)の黒井千次『庭の男』の記事(試験記事全文レビュー)と、18年の井上荒野『キュウリいろいろ』の記事だ(試験記事全体レビュー)。

      

この2つの小説には共通点がある。普通に問題文だけを読むと正直、あまり面白くはない。前者は変な話で、後者は平凡にも見える。しかし、小説全体を読んだり、深く読み込んだりすると、非常に興味深いのだ。ポイントはどちらも、小説の題名に表れてる。

    

「庭の男」とは誰で、何者なのか? なぜ、庭にいるのか? 「キュウリ」とは何のメタファー(比喩)で、「いろいろ」とはどんな種類なのか? もちろん、そうした考察・分析は、大規模の受験のレベルを超えたものになる。センターや共通テストでは、当たり障りのない「普通」の答を素早く求める力が求められてるのだから。

    

そして、その「普通」とは、基本的には出題者や学校・塾・予備校の教師が決めて、それを素直に学んだ生徒が繰り返していくことになる。コピペ的な再生産。しかしそもそも、小説とか小説家というものは、普通の枠を大幅にはみ出したもののはずだ。

   

その典型が、去年の小説。問題ではカットされたり、スルーされたりしてたが、実は、特殊な性の問題が小説全体で展開されてたのだ。その刺激的な部分を取り除いたのが、試験問題と正解になってた。

  

ちなみに問題・正解・分析は、河合塾の速報ページより。どの予備校・マスメディアでも、夜遅くの22時過ぎになって、ようやく公表。

    

    

      ☆     ☆     ☆

今回の小説「飢えの季節」も正直、普通に読むと面白くはないし、目新しさもない。ロシアがウクライナへ侵攻している現在、戦争の悲惨さを具体的に語ることは教育的に重要だろうが、それだけでは小説独特の価値には届かない。

   

これは私の「個人の感想」というより、かなり多くの感想だろう。ツイッターのネット民たちも、盛り上がってないのだ。せいぜい、主人公の「私」は女性かと思ってたら、実は男性だった・・とかいう感想が目につく程度。

     

戦争または敗戦の直後、食べ物その他、極度に飢えた主人公が、入社後に「夢」を語ってしまって挫折。退職して、新たな生き方へと向かう。問題文の切り取り方や設問、正解から考えると、出題者サイドは、夢や「新たな生き方を模索しようとする気力」(問6)を強調したいようにも見えるが、おそらく元の小説全体は、その逆の内容だろうと想像する。

    

   

      ☆     ☆     ☆ 

例えば、問題文の中央の一文。「・・・ただ一食の物乞いに上衣を脱ごうとした老爺。それらのたくさんの構図にかこまれて、朝起きたときから食物のことばかり妄想し、こそ泥のように芋や柿をかすめている私自身の姿がそこにあるわけであった。こんな日常が連続してゆくことで、一体どんなおそろしい結末が待っているのか。それを考えるだけで私は身ぶるいした。」

   

唐突に現れた、不気味な感じの老爺は、去年の小説なら、庭の立て看板の男(庭の男)に似てる。それは、自分自身の暗い闇の部分を、強調して可視化させる外的存在なのだ。内部の極端な投影としての現実。共同便所の横のうすくらがりで、寒いのに外套もなく、汚れてやせ細った身体で必死に食べ物にすがりつこうとする人間。「人間というより一枚の影」。

   

金儲け主義の会社を辞めた後(問題文の最後)も、「勇気がほのぼのと胸に」と書いた直後、会社についてこう書いてた。「曇り空の下で灰色のこの焼けビルは、私の飢えの季節の象徴のようにかなしくそそり立っていたのである」。

   

そう。会社を辞めた所で、悲惨な現実は目の前に「かなしくそそり立って」いるままなのだ。自らの無力さを感じさせる、強大な負の秩序として。

   

その強大な壁みたいな限界は、自分の中にもあるかも知れない。夢見ることさえ不自由なほど。あるいは、不自由すぎて僅かな夢を見ることしかできないほど。

    

問題文にある夢は唯一、「緑地帯には柿の並木がつらなり、夕昏散歩する都民たちがそりをもいで食べてもいいような仕組」のみだった。空腹で柿を勝手に食べても捕まらない社会。この夢が「都民の共感を得ない筈は」ないと思いこんでたら、会社では散々の悪評。「ただただ私は自分の間抜けさ加減に腹を立てていた」。

    

なお、これがどの程度「私小説」的な実話を含んでるのか分からないが、作家(著者)もあまり夢や勇気に満ちたリアルライフには見えない。「58年ごろからの心身不調に加えて過度の飲酒による肝硬変のため」、50歳で死去。年齢だけ見るなら、ほぼ当時の男性の平均寿命と思われるが、死に方が気になるところだ。アルコールへの飢えは、別の欲望の歪曲だろう。

    

    

      ☆     ☆     ☆

おそらく、小説の全体を読むと、底なしの暗さがさらに確認できると思うので、今年も後ほど別記事で全文レビューを書こうと思ってる。今日は全文が手元にないし、今週は既に制限字数15000字をかなりオーバーしてしまったので、もう止めよう。

       

なお、小説の初出の信頼できる情報がほとんど見当たらないし、問題文には「一九四八年発表」と書かれてるだけだが、おそらく、雑誌『文壇』第2巻・第1号(1948年、前田出版社)だろう。

     

原題は、「飢の季節」らしい。「え」がないし、旧字を使った『飢ゑの季節』(大日本雄弁会講談社)でもない。雑誌の最後に掲載されてることもあり、元のページ数は不明だが、短編小説なのは確実。

   

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マイナーで短命、同人誌的な文芸誌なので、極端にデータが少ない中、他の号の非常に小さいカラー写真なら国会図書館が掲載してた。古書店の一部で扱ってるらしい。

   

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ともあれ、おそらくまた1週間か2週間後くらいに記事を書く予定。今週は計16402字で終了。ではまた来週。。☆彡

 

   

  

cf. 黒井千次『庭の男』全文レビュー~居場所も力も失った高齢男性(家の男)の不安と性的倒錯(窃視症)

 看板の視線への対人恐怖、軽い社交不安障害+限局性恐怖症か~黒井千次『庭の男』(22年・共通テスト・国語

 フィクションとしての妖怪娯楽と、フーコー的アルケオロジー(考古学)~香川雅信『江戸の妖怪革命』(21年・共テ・国語)

 妻、隣人、そして自分・・戦争をはさむ死の影のレール~原民喜の小説『翳』(2020年センター試験・国語

 妻と再会できた夜、月見草の花畑~上林暁『花の精』(2019センター試験・国語)

 自転車というキュウリに乗って、馬よりゆったりと♪~井上荒野『キュウリいろいろ』(18センター国語)

 「春」の純粋さと郷愁が誘う涙、野上弥生子『秋の一日』~17センター国語

 キャラ化されない戦後の人々、佐多稲子『三等車』~16センター国語

 啓蒙やツイッターと異なる関係性、小池昌代『石を愛でる人』~15センター

 昭和初期の女性ランニング小説、岡本かの子『快走』~14センター

 幻想的な私小説、牧野信一『地球儀』~13センター

 鷲田清一の住宅&身体論「身ぶりの消失」~11センター

    

      (計 2913字)

   (追記79字 ; 合計2992字)

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令和3年度、文科省・情報活用能力調査の調査問題例と正答(小中高、4年1~2月)、感想とレビュー

ネットを適当に飛んでたら、たまたま、文部科学省の情報活用能力調査のニュース記事を発見。軽い記事にちょうど手頃の内容なので、感想記事にしとこう。今週は月火の2日だけで7000字超も書いてるから、ごく簡単なレビュー。単なるまとめや紹介ではなく、批判も織り交ぜる。

     

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約1年前に行われた、情報活用能力の調査結果「の一部」が、令和4年(2022年)12月27日に公開された。小学5年生、中学2年生、高校2年生が対象。「速報結果」だから、後ほど詳しい分析も示されるのかも知れない。実際、前回の同種の調査(平成)については、詳しい結果が公開されてる。

     

ただ、今後の調査も考えて、基本的には問題は非公開とのこと。コンピューターを利用するCBT形式だから、小学生にとっては端末の操作だけでも大変。

  

問題には、小中高の共通問題が多いが、中高のみの問題もある。多数の問題から、生徒ごとに問題のセットを変えて出題。これでは、普通に考えれば、各生徒が異なるテストを受けたことになってしまうが、IRT(項目反応理論)によって「同一尺度で得点化」できるとのこと。

     

このIRTの信頼性や公平性に疑問を感じるが、その点はここでは省略。今回、公開された3問を見てみよう。どれも小中高の共通問題。

      

時間は30分×2とだけ書かれてるが、その時間で何問解くのかも公開すべきだろう。情報処理では速度が大切で、人それぞれの差も開く。1人あたりの問題数さえ公開したくないということだろうか? 受験者や実施した学校は把握してるはずだから、それで十分だと。配点も総得点の計算方法も書かれてないのに、総得点の分析だけかなり詳しく公開されてる。

   

   

      ☆     ☆     ☆

では、調査問題例1。環境問題のウェブページの正確な理解。

      

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残念ながら、5項目のリンク先の内、最初の1項目である「オゾン層の破壊」しか公開されてない。要するに、これだけで正しい選択肢が1だと分かる、と担当者は考えてるのだろう。2~5の選択肢は明らかに間違い、という考えもあるのかも。

   

ポイントは、最後の1文。「フロンガスは温室効果ガスでもあり、地球温暖化を防ぐためにもフロンガスの規制は重要です」。これを読んで、最も適切な選択肢が「フロンガスは地球温暖化をもたらす」だと判別させる。

   

既に、環境の知識をかなり学んでる中高生ならともかく、小5の生徒には内容自体が分かりにくいと思うし、項目名と選択肢の内容もズレてる。この量の説明があと4項目分もあるのなら、情報量も多過ぎ。社会人でも、それら全体の説明を正確に理解する機会はかなり少ないはず。クリックして、全員にすぐリンク先が表示されたのかどうかも気になる所だ。

    

正答率は、小学生32%、中学生58%、高校生73%。小数点以下は、引用者が四捨五入。3問中、この問題で最も小中高の差が開いてるのは、環境問題の知識が響く問題だからだろう。

      

   

     ☆     ☆     ☆

次に、調査問題例2。明るさセンサーのプログラム(フローチャート)の完成。将棋の藤井五冠王を意識してるのか、「聡太」が主人公。

       

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これは、AとBの両方が合ってる場合のみが正解だろうか? 結果に明示されてないが、正答率が2つに分かれてないので、そう考えるのが自然か。正答率は、小学生41%、中学生62%、高校生69%。高校生の低さがやや目立つ。

   

おそらく、間違いの多くはBだろう。明るさセンサーが「明るい」と感知した時、「ライトが消える」を正答としてるが、問題文にそのような事は書かれてない。「暗くなったらライトが光る」と書かれてるだけだから、不十分か不親切な問題文だと感じる。

  

それ以上に間違いを増やしてしまったのでは?と思われるのは、センサーとライトを分けてること。家庭向けだと、それらは一体化されてるのが普通だろう。そう思ってる生徒にとっては、AもBも「明るさセンサーが・・」と書かれたカードを選んでドラッグするのは自然なこと。そちらが先に挙げられてるし、問題文の主体もセンサーだし、時間がないからだ。

     

私が出題者なら、問題文に、センサーとライトが別物であることを明記。また、「暗くなったらライトが光る」ではなく、「暗いならライトが光り、明るいならライトが消える」と書く。

    

「暗くなったら」と「暗いなら」が別の条件だということ、「暗いなら」の方が明確だということは、日常言語の論理における基本的知識だろうが、正確に理解・区別してる人は少ない。

  

   

     ☆     ☆     ☆

最後に、調査問題例3。フォルダの正しい理解と選択

    

携帯端末(スマホ、タブレット)を軽く使ってるだけの生徒だと、フォルダ自体が分かりにくいはず。フォルダではなく、「アルバム」という名前で呼ばれてることも多い。

    

例えば、iOSの「写真」アプリも、Androidの「フォト」アプリも、「アルバム」という名前を使ってる。デスクトップのフォルダの中のフォルダ、という三重の入れ子構造も、基本的にPCの特徴だろう。携帯端末では、二重の構造を使う程度。

     

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これは、旅行フォルダを開くだけで正解と判定されるのだろうか? 正答には、「『旅行』フォルダを開いた状態で『次へ』ボタンが押されているもの」と書かれてるが、問題文には、「進む」を押してくださいと書かれてる。

   

「次へ」と「進む」の関係の曖昧さが気になるが、正答率は高いから、誤解は少なかったのだろう。小学生52%、中学生76%、高校生84%

  

   

      ☆     ☆     ☆

以上、情報活用能力を求めることも、調査することも正しいと思うが、問題や調査、公開には気になる点も多かった。今後の改善に期待しよう。

  

1人1台の学校用タブレットが確保されてる場合、PCとは別に、タブレットの調査もあっていい。それに対して、スマホは個人的な物だから、調査には使いにくいかも知れない。

  

なお、キーボードによる1分間あたりの文字入力数は、小学生16文字、中学生23文字、高校生28文字。3分間で、総文字数285文字の入力を求めたそうだが、これも具体的な入力内容が全く書かれてないので、何とも言えない。

  

あまり入力が速くないのは確かだろうが、漢字が多いとか、英字の大文字・小文字・半角・全角の切り替えが多いと、面倒だと思う。入力しにくい記号もある。多数の変換候補が並んで、下の方でようやく表示されるとか。数字の半角・全角の区別は微妙だが、正しく指示されてただろうか。

    

ともあれ、いつの間にか長くなったので、今日はそろそろこの辺で。。☆彡

   

      (計 2649字)

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デジタル画像の可逆圧縮、「ランレングス(連長)圧縮」の簡単な具体例と説明、圧縮率の計算~高校『情報Ⅰ』

2022年度から全面的にスタートした高校の新必修科目、『情報Ⅰ』。先日アップした、音声のデジタル化の記事に続いて、今日は画像の可逆圧縮について書いてみよう。

  

綺麗なカラー画像(24ビット、約1678万色など)というものは、そのままデジタル表現するとデータ量が多くなってしまう。だから普通は、「圧縮」することになる。

  

ネット上で綺麗な写真などによく使われてるのが、JPEG圧縮。かなりデータ量を減らせるし、圧縮率90%くらいなら見た目も元の画像データとほとんど変わらない。しかし、JPEG圧縮画像から元の画像に戻すことはできない。非可逆圧縮(不可逆圧縮)だから。

   

  

     ☆     ☆     ☆

それに対して、元に戻せる可逆圧縮もあって、その1つがランレングス圧縮。これは、同じ色が連続してる時に、その色と連続の長さとで表す方法。「ランレングス」を直訳すると、「連続の長さ」になるから、例えば日本語では「連長圧縮」とも呼ばれてる。

    

最大手の東京書籍の教科書を見ると、わりと大きめ(16ピクセル×16ピクセル)のリンゴの画像でかなり短く説明してたが、データ量の変化まで完全に理解・計算できる高校生は少ないと思う。

    

見方を変えると、そこまで新カリキュラムは要求してないのかも知れない。だから、短い説明に留めてるとか。ただ、大人の私自身は面白かったので、もっと簡単な例でやや詳しく解説してみよう。

  

個人的には、ランレングス圧縮の画像を人間が手作業で作るのは大変だということが実感できただけでも意味はある。むしろ、元のオリジナル画像の方が、遥かに簡単に作れたのだ。あと、「ロジック」(論理)と呼ばれてるお絵描きパズルと似てることに気付いた。試しに後で、パズルの方もやってみるかも知れない。

    

   

      ☆     ☆     ☆

まず、極端に簡単な例から始めよう。

   

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上図は、横1列、6マスの画像で、後で見るリンゴの画像の下の段の左側だけ取り出したもの。マス目は、ピクセル(画素)と呼ばれる。左の2ピクセルが白、その右の4ピクセルが赤になってるから、ランレングス圧縮では、白2赤4のように表現する。図にすると、次の通り。黒い斜線部は、何も記録されてない部分で、教科書では「データ消滅分」と書かれてた。

   

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では、データ量はどう変化したのか、計算してみよう。色は、後でリンゴ全体を見る時に4色使うので、1ピクセルあたり2ビット(2×2)の情報量と考える。例えば、白は00、赤は01、グレーは10、黄色は11。2ケタの2進数で表せる。

    

元の画像は6ピクセルだから、(元のデータ量)=2×6=12ビット。

  

一方、圧縮後は、色が2ビットで同じ。連続の数は、最大で6ピクセル(1~6)だから、それぞれ3ビット(2×2×2)。上の例だと、2ピクセルは、010。4ピクセルは、100。3ケタの2進数で表せる。

  

だから、(圧縮後のデータ量)=(2+3)+(2+3)=(2+3)×2=10ビット。

∴(圧縮率)=10/12≒83%。

   

あまり圧縮されてないが、それほど色が連続してないし、可逆圧縮だから仕方ない。

   

ちなみに、数学的にはまぎらわしい言い方だが、「圧縮率の%の数字が大きい」ことを、「圧縮率が低い」と言うらしい。つまり、あまり圧縮されてないという意味。逆に、「圧縮率の%の数字が小さい」ことを、「圧縮率が高い」と言う。かなり圧縮されてるという意味。

   

だから教科書にも、「一般に可逆圧縮より非可逆圧縮のほうが圧縮率が高い」と書いてた。私は一読して間違ってると思ってしまったが、「高い」=「小さい」と読みかえるのなら正しい。例えば、ランレングス圧縮よりJPEG圧縮のほうが圧縮率が高い。

   

   

     ☆     ☆     ☆

続いて、64ピクセル(8×8)で描いたリンゴのデジタル画像。ちなみに、グレーはヘタの部分、黄色は光沢がある場所を表してる。

   

221213c

   

上図をランレングス圧縮すると、下図のように表せる。色と数の組合せは全部で28セットになる。横のピクセル数は10まで増えてしまうが、問題ないはず。教科書の図では増えてないが、それは同じ色の連続数が多い図にしてあるから。

            

221213d

   

では、データ量の計算。(元のデータ量)=2×64=128ビット。

   

(圧縮後のデータ量)=(2+3)×28=140ビット。

  

色の連続が少ないので、圧縮後の方がデータ量が増えてしまってる。

 (圧縮率)=140/128≒109パーセント

  

理論的には最初から予想できてたが、すぐに実例と出会うとは思わなかった。試しにGoogleで、「ランレングス圧縮 データ 増える」を検索してみると、その欠点を指摘する記事が色々とヒットした。

  

日本語ウィキペディアの「連長圧縮」の項目にも、欠点が指摘されて、その解決方法の説明も書かれてた(PackBits法など)。ここでは扱わない。

   

   

      ☆     ☆     ☆

最後に、意外と圧縮される例も示しとこう。4色で16ピクセル(4×4)の格子状の画像。

   

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ランレングス圧縮では、下の図のように表せる。

  

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これなら、かなり圧縮されてるように見える。圧縮後の計算では、横が4ピクセルだから、連続の数が3ビットではなく2ビットになることに注意。1ピクセルなら00、2ピクセルなら01、3ピクセルなら10、4ピクセルなら11と表せる。結局、色で2ビット、連続の数でも2ビット使う。色と数の組合せ(2+2ビット)が、計4セット。

      

(元のデータ量)=2×16=32ビット

(圧縮後のデータ量)=(2+2)×4=16ビット

(圧縮率)=16/32=50%

    

   

     ☆     ☆     ☆

以上から、単純なランレングス圧縮は、色の連続が多い単純な画像の時だけ上手く行くことが分かる。

  

あらためて、教科書の図が大きめに作られてた理由が理解できた。要するに、色の連続を増やして、本当に圧縮されるように配慮した図を掲載してるのだ。確かに、1つだけ例を挙げるのなら、成功例を挙げる方が教育的だろう。一般的な高校生にとっては。

   

それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

       (計 2442字)

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アナログの音のデジタル化(標本化=サンプリング、量子化、符号化)~高校『情報Ⅰ』(新必修科目)

前から気になってたが、高校の新しい必修科目『情報Ⅰ』の授業内容が分かって来たので、とりあえず簡単な記事を1本書いとこう。これを機に、記事のカテゴリーに「情報」を新設したので、今後は関連記事が増える予定。

  

ちなみに先日、共通テストの試作問題の記事ならアップしておいた。参考までに。

  

 データの正誤のパリティチェックと16進法、論理回路と真理値表

  ~2025年(令和7年度)共通テスト試作問題・情報Ⅰ

   

  

     ☆     ☆     ☆

さて、文科省の新学習指導要領に基づく情報Ⅰのカリキュラムは、一言でまとめるなら、広く浅い内容になってる。

  

ただ、浅いといっても新しい科目なので、生徒はもちろん、大人の多くもよく知らないと思われる話が多数入ってる。現役の高校1年生がどう感じるのかは分からないが、半ば理数系の大人の私にとっては、全体的にとても興味深い内容だ。

   

例えば、文字情報や画像の扱いについては、今までも何本か記事を書いてるし、ある程度の知識やイメージは持ってる。しかし、音声の具体的な処理方法についてはほとんど理解してなかった。アナログの音をデジタル化するとか、0、1の2つの数字で表すといった話なら何となく分かるが、理論(の初歩)は最近はじめて知ったこと。

    

自分の復習も兼ねて、自作の図と共にまとめ直してみよう。参考にしたのは、最大手・東京書籍の教科書『情報Ⅰ』。2章・情報デザイン、17節・音のデジタル表現。数学で昔からある2進法の話と、文字コードの話の次に置かれてる。

    

   

     ☆     ☆     ☆

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今、上のようなアナログ波形の音があったとしよう。横軸は時間(右向きが正)。縦軸は音の大きさでもいいはずだが、ここではカリキュラムに従って、電圧としとこう。普通の空気振動としての音を、マイクで機械に入力して、電気信号の波に変えた所から考える。

   

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適度な時間間隔で、飛び飛びの電圧の値を獲得する(赤い縦線の長さ)。この作業が「標本化」(サンプリング)。時間間隔が標本化周期で、上図では1マス分の横の長さで表されてる。

    

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標本の電圧(赤い縦線の長さ)に最も近い整数値(ここでは0以上7以下)を求める。これを「量子化」と呼ぶ。例えば、3.7なら4にして、7.2なら7にする。

  

上図では左から、1 4 5 7 5 2 2 5 4。これらは3ケタ(=3ビット)の2進数に直せるので、「量子化ビット数」は3

   

ちなみに、たまたま2.5とかの中途半端な値になった時は、2とするか3とするか、あらかじめ決めておけばよい。ただ、完全に真ん中の数になることは確率的にほとんど無いはず。

       

最後に、それらの数字を3ビット(=3ケタ)の2進数で表す。これが「符号化」で、結局こうなる。

 001 100 101 111 101 010 010 101 100

   

   

     ☆     ☆     ☆

続いて、計算問題を解いてみよう。音楽CDの1分(=60秒)あたりのデータ量を求めてみる。

  

1秒間に44100回のサンプリングで、それぞれ16ビットの数値で表す。さらに、左右2つのチャンネルで録音すると考えて、

       

(1分あたりのデータ量)

=16×2×44100×60 bit(ビット) 

=84672000 bit

=10584000 B(バイト)

≒ 10000 KB(キロバイト)

≒ 10 MB(メガバイト)

     

ちなみに、性格には1KB=1024B、1MB=1024KBだが、1024だと単位変換の計算が面倒だから、1000で済ませることは珍しくない。テストでは、1024で割り切れる値を出題するか、近似値計算にするか、変換不要にするか、どれかだろう。

     

とにかく、50分あたりだと約500MBだから、確かにCD1枚分の容量に近くなる。なるほどと納得。といっても、実際にはまだここからデータを圧縮するのかも知れない。

   

   

     ☆     ☆     ☆

最後に、サンプリングの周期について。つまり、どのくらいの時間間隔で電圧を獲得するか。

   

221210d

   

上図の青丸のように、音の波と同じ周期(横2マス分の時間)で電圧を取ると、青丸が横に並ぶだけで、上下の波にならない。ちなみに曲線は、英語版ウィキペディアのsin(サイン)曲線。すなわち、高校数学や物理の正弦波。

     

221210e

  

そこで、上図のように、元の音の波の半分の周期(横1マス分の時間)で電圧を取ると、青丸だけで上下の動きを再現できる。ただし、最善のタイミングで取る必要がある。

   

221210f

   

慣れてないと分かりにくい話なので、上図では周期を矢印で示した。赤い矢印の長さが、元の周期。青い矢印の長さが、サンプリングの周期。

  

   

     ☆     ☆     ☆

元の波の周期は一定とは限らないので、元の最小の周期の半分以下でサンプリングする必要がある。さらに、最善のタイミングで取るのはほとんど不可能だから、半分「未満」にすべきはず。要するに、なるべく細かく電圧をサンプリングするということ。

   

アナログ信号をデジタル信号へと変換する時、元の最小周期の半分未満の周期でサンプリングする必要がある。

  

ところで、周波数は周期の逆数。つまり、「周波数=1/周期」だから、周期が半分未満なら、周波数は2倍超。

  

というわけで、「標本化定理」(サンプリング定理)が導かれる。

  

アナログ信号をデジタル信号へと変換する時、元の最小周期の半分未満の周期でサンプリングする必要がある」。

  

大まかに言えば、なるべくきめ細かくサンプリングしないと元の音が再現できないということ。これだけで既にかなりの時間を取られてしまったので、今日のところはこの辺で。。☆彡

    

      (計 2225字)

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コロナ(感染症)の患者数の推移、数学理論による計算(SIRモデル)の入試問題(青山学院大・経済学部、2021年)

朝日新聞・朝刊(2022年11月17日)の教育欄に、感染症の数理モデルに関する受験問題の解説が掲載されてた。かなり変則的な応用数学の問題だが、やや意外なことに、経済学部の入試で出題されてる。

       

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明日へのLesson・第3週、クエスチョン。問題を通じて色々と考えてみようという企画。学習塾SEGの講師・大澤裕一の寄稿の形になってるが、本人の側から寄稿したのか、それとも編集部の依頼を受けた原稿を寄稿と呼ぶパターンなのか、ハッキリしない。担当記者(名前は不明)は冒頭、「解説してもらった」と書いてた。

   

一読して、明らかに難しい。一般的な受験生なら、よく分からないまま何とか部分点を狙う問題だろう。ところが解説者にとっては「面白い試み」で「アリ」。それに対して、共通テストの問題はダメらしい。「大学入学後の学問習得にほぼつながらない」し、「数学の基礎を問う試験としても疑問がある」。独特の強い主張だ。

    

   

     ☆     ☆     ☆

私がすぐ思ったのは、SEG(科学的研究グループ)らしいなということ。全国的にはあまり知名度はないだろうが、東京のエリート校中心に高校生を集めてる中規模の塾で、もともと東京大学の数学科の一部(大学院生・学部生)らが中心になって作った所だ。数学教育への独特のこだわりが強いし、全体的に目線が高い。

       

私の感覚だと、この青学の問題は確かに「面白い」が、やや変則的すぎて「奇問」に近い感もあるし、受験問題としていま一つ完成されてないと思う。もちろん、全国50万人が受ける共通テストには使えない。少なくとも、このままの形式では。

      

解説者は、大学入試に関して独特の自論を展開してるが、この問題の受験情報は書かれてない。問題の良し悪しを評価するためには、受験者集団の特性、解答時間、配点、合格最低点が重要になる。単なる数学研究や趣味の数学、義務教育などではなく、特定の人達にとって人生がかかったテストなのだから。

           

221119b

   

いわゆる赤本(教学社)とネット(パスナビ)で調べてみると、そもそもこの問題は、数学が得意な受験生用の試験(個別B方式)で出題されてる。しかも、数学は250点満点中の100点で60分。大問が4問だから、この感染症モデル問題(4番)の配点は25点前後で15~20分くらい。

        

受験生にとっては、数学の1番~3番がわりと簡単だから、唯一の記述式の4番では部分点で10点(配点の4割)ほど取れれば何とかなるだろう。合格最低点は250点満点の約7割。たとえ数学が60点くらいでも、配点150点の英語で十分取り返せる。

   

そうゆう事なら、この出題は、私もアリだと思う。ただ、具体的な出題の仕方にはもう少し配慮が欲しいし、赤本の模範解答にも少し疑問を感じた。数学好き、理屈好きのマニアとして。

    

   

     ☆     ☆     ☆

では、青学の問題文の前半だけ、引用させて頂こう。時期的には、日本でコロナ第3波が拡がった頃で、医療従事者や高齢者からワクチンを打ち始めようという話が出てた。

     

ある都市における感染症の流行の推移を、3つの数列の漸化式で表した。漸化式はn=1,2,3,・・・・・・で成り立つものとする。

  

 Sn₊₁ = Sn-βSnIn    ・・・①

 In₊₁ = In+βSnIn-γIn ・・・②

 Rn₊₁ = Rn+γIn      ・・・③

  

ここで Sn、In、Rn は、それぞれ第n週における未感染者数、感染者数、回復者数を表す。β および γ は、それぞれ感染率、回復率を示し、0<β<1、0<γ<1 とする。また、S₁=N>0、I₁=M>0、R₁=0、βIn<1とする。βN/γを基本再生産数、βSn/γを第n週の実効再生産数と呼ぶ。このとき、次の問いに答えよ。

 

(1)Sn+In+Rn を求めよ。

(2)βN/γ >1 を仮定して、Inのグラフ(nが横軸、Inが縦軸)をかけ。さらにその特徴を記述せよ。

(以下、(3)(4)は省略)   

  

      ☆     ☆     ☆

私がこの問題文を読んで、最初に引っかかったのは、In(感染者数)の意味だった。感染者数という言葉は、「第n週における」という説明がついても、複数の意味を表し得る。そこまでの累積数、その週における新規感染者数、その週において感染した状態にある人の数。

   

問題文と数式をよく読んで考えれば、その週において感染した状態にある人の数だと分かるが、それだけでも時間がかかる。そもそも、その数は、ニュースや各種解説であまり話題になってないのだ。一番、話題になって来たのは、その「日」における新規感染確認者数で、次が累積だろう。

  

だからこそ、英語版ウィキペディアのSIRモデルの説明ではの意味について明確に定義されてた。これまでに感染して、今現在、未感染者を感染させる能力を持ってる(Infectiousな)人達だと書かれてる。Sは感染しやすい(Susceptibleu)人達、つまり未感染者。Rは、SでもIでもなくなった(Removedな)人達で、普通の社会ではほぼ回復者に相当。

    

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あと、βやγは定数でいいのか?、という点も気になったから、元の論文の1つを確認してみた。解説者が書いてた、ケルマックとマッケンドリックによる1927年の論文とは、これの事だろうか。英語版ウィキの出典から飛んで、無料・無登録で読める。

     

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上に引用した箇所では、青学の問題と同じく定数2つを使ってるが、それは特殊なケースだとわざわざ書いてる。普通に考えれば、感染率も回復率も時間tに応じて変化する係数だと思われる。

     

   

     ☆     ☆     ☆

問題の(1)は、単に①②③の辺々を足し合わせるだけですぐ解ける。

 

 Sn₊₁₊In₊₁₊Rn₊₁ = Sn+In+Rn

          =N+M+0

          =N+M  

  

nが変化しても定数のままだから、n=1で計算すればよい。これだけで4点くらい取れるから、受験生的には一安心。

  

   

     ☆     ☆     ☆ 

しかし、次の(2)は考えにくい。キレイに解ける連立漸化式ではない、という点を理解するだけでも時間がかかるし、βN/γ >1 という条件式も分かりにくい。

   

βN/γを基本再生産数と書いてるが、この日本語だけでは意味が曖昧だし、なまじ時事ネタの知識を持ってる人は、余計に迷った可能性がある。ニュースなどで説明されてた意味と、数式での意味とが、なかなかピッタリ来ないのだ。

   

SEGの講師も、「全く免疫を持たない集団の中で、1人の感染者が平均して何人の二次感染者を発生させるかを推定した値」だと書いてて、これに似た説明がニュースや新聞でも目立ってた。しかしこれは、丁寧に説明しすぎで、数式から離れてしまってる。もっと、数式に即して考えてみよう。

   

  

     ☆     ☆     ☆

要するに、n(週の数)が増えるに応じて、Inが増えるか減るかがポイント。それを決めるのは、②の右辺の右側、βSnIn-γInの符号。今、かりにプラスとしてみよう。

  

βSnIn-γIn>0

∴ βSnIn/γIn > 1

   

ここで左辺の分母・分子をInで割って、Sn=N(初項)とすれば、条件式 βN/γ >1になる。この式は要するに、Inは一番最初に増えるという簡単な仮定なのだ。

    

一方、分母・分子をInで割る前の式 βSnIn/γIn を考えてみる。分子は、増えた感染者数。分母は、減った感染者数。要するに、増加/減少の比率、割り算であって、二次感染者を発生させるといった能動的・因果的な話と微妙に違ってる。

     

実際、朝日新聞のデータベースで検索してみると、明快でベターな説明が見つかった。20年7月7日、伊藤隆太郎記者。

      

「感染症学では、増減の割合を『再生産数』という。いろいろな計算方法があり、複雑になりがちだが、『今日の感染者を前日の感染者で割った値が、再生産数だと考えてよい』と、中山正敏・九州大名誉教授は解説する」。

   

だから、問題が「基本再生産数」という言葉を強調してるのも、受験生にとっては不親切すぎるのだ。知識が無ければ意味が曖昧だし、知識があれば数式と結び付けにくいから。(3)では基本再生産数と実効再生産数という言葉を使って(2)を説明させてるが、無用な混乱・困惑を招く恐れが強い。出題者と違って、受験生は理論も用語もよく知らないのだから。

      

    

      ☆     ☆     ☆

(3)では、等比数列という言葉をヒントに入れてるのだが、これも、理論を知らない受験生にとっては分かりにくいし、使 いにくい。②を変形して、In₊₁=(1+βSn-γ)In と出来たとしても、これを等比数列のように扱うのはかなり困難だ。

    

カッコ内は定数ではないから、公比のように扱うのは難しい。私ならむしろ、公比とすることはできないと考えた受験生の方を評価する。危うい単純化の誘惑を断ち切った、冷静かつ慎重な知性として。

       

赤本の模範解答では、nが十分小さい時にはSn≒NだからInが等比数列的に増加して(2倍、2倍・・とか)、nが十分大きい時にはSn≒0だからInが等比数列的に減少する(0.5倍、0.5倍・・とか)といった論法を使ってたが、その大まかな近似を仮に認めるにせよ、それではグラフの両端しか分からない。グラフの中央には、等比数列の話は使えないのだ。

    

出題者としては、「nが限りなく大きくなるとき」Inが0に収束する、つまり、感染の波が静まるという話に持って行かせたいのだろうが、それなら例えばInのグラフの右端についてだけ説明させればよいのだ。グラフの中央の処理で悩んでしまった受験生は少なくないはず。      

   

   

      ☆     ☆     ☆

記事が長くなり過ぎてるので、この辺で終わりにしよう。

   

ちなみに(4)では、基本再生産数を1より小さくするにはどうすればいいか、感染率と回復率を使って説明させてる。Nは定数だから、βN/γを小さくするには、β(感染率)を下げて、γ(回復率)を上げればいい。マスク使用や「三密」回避、医療サービスの充実などを書けば点数を稼げるはず。結局、配点25点として、10点取るのはそれほど難しくない。

    

なお、朝日の記事では、見出しが示す通り、数理モデルが「社会課題の解決 導く『武器に』」なると考えてるようだ。それなら、現実社会の感染状況との照らし合わせが必須のはず。

    

2020年から21年にかけての新規感染確認者数のグラフは、下の通り。NHKの特設サイトで21年・夏に保存してたものだ(ブログ記事に使用)。その時点で感染している人の数(問題ではIn)も、大まかな形としては似たような推移だろう。ここでの「感染者数」という言葉の使い方が、問題文とは違う点にも注目。

     

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山型に増えて減るだけなら、数理モデルなど必要ないし、数理モデルのおかげでコロナの被害が減ったという実感もない。有名人の「8割おじさん」、西浦博教授とかなら、そう自負するのかも知れないが。ワクチン以外で重要なのは、マスクと距離と換気であって、スーパーコンピューター・富岳の計算(シミュレーション)が多少の参考になった程度か。イメージ的に。

     

私はむしろ、数理モデルが現実離れした数学的フィクションになってないか、その点を考え直すべきだと思う。政策や専門家の提言とどのように関係して、結局どうだったのか。朝日新聞の担当記者には、そこまで追求して欲しい。数学の塾講師の寄稿だけに頼るのではなく、ジャーナリストの総合的能力、包括的知性を活かして。

      

それでは、今日のところはこの辺で。。☆彡

    

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データの正誤のパリティチェックと16進法、論理回路と真理値表~2025年(令和7年度)共通テスト試作問題・情報Ⅰ

高校で今年(2022年、令和4年)の春から、「情報Ⅰ」が必修科目となった。2025年(令和7年度)が共通テスト採用の最初となる予定。3日前の22年11月9日、試作問題が公表されたので、とりあえず最初の辺りだけチェックしてみた。感想を含めて、軽い記事としてアップしとこう。サンプル問題と正解は、大学入試センターで公開中。

   

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問1は、aもbも、初歩的なネット・リテラシー。ネットの使い方の常識を問う問題。aは要するに、常に注意すべきということで、正解は①。

  

「信頼関係のある相手とSNSやメールでやり取りする際も、悪意を持った者がなりすましている可能性を頭に入れておくべきである」。

  

別になりすましではなくても、相手が悪意を持ってるかも知れないし、ウイルスの類の仕業かも知れない。私はちょっと慣れた初級者時代、友達からのメールの添付ファイルを開いた途端、ウイルス対策ソフトが作動した経験がある。相手の名義は、私よりも経験の浅い初心者。それ以来、相手が誰でも警戒するようになった。

   

  

     ☆     ☆     ☆

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bの正解は当然、③。「特定のWebサイトだけでなく、書籍や複数のWebサイトなどを確認し、比較・検証してから判断する」。

  

ただ、実行はなかなか難しいし、あまり行われてないと思う。書籍はすぐには見れないのが普通だし、複数のWebサイトといっても、それなりの精度のサイトでないと意味がないどころか逆効果になってしまう。

   

あと、そもそも複数のサイトが独立の情報かどうかも怪しい。例えば、多くのサイトが1つのサイトをソース(情報源)にしてる場合、元の情報が誤ってると、それを参照・引用したすべてのサイトが同じ誤りを掲載してしまう。

    

最近のロシアvsウクライナ戦争とかも、非常事態での情報のやり取りだから、細心の注意が必要。日本のメディアやSNSを多数チェックしても、あまり(orほとんど)意味はない。

   

  

     ☆     ☆     ☆

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続いて問2は、「パリティ」について。語源的には、等しいという意味の英語だが、なぜかコンピューターの世界では、データを1、0の二進数で表した時、1が偶数コか奇数コかを表す言葉になってる。

  

上図では、送信データが01000110で、1が奇数個(3つ)あるから、データの右端にもう1ケタ、パリティビットを加えて、1とする。要するに、最も簡単なチェックだから、最低限のことしか分からない。

   

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空欄エの正解は、①。「パリティビットを含め、一つのビットの誤りは判定できるが、どのビットに誤りがあるかは分からない」。もちろん、それは、データの1の個数とパリティビットの数字が合ってない場合のみ。合ってれば、何も確定しない。少しだけ信頼度が上がるだけ。

   

この文の中央部分、「一つのビットの誤りは判定できるが」は、曖昧な表現だと思う。正確には、「少なくとも一つのビットに誤りがあることは分かるが」と書くべき。センターの作成担当者の方々、ご一考を。

   

例えば、011000001なら、右端のパリティビットだけ間違ってるのかも知れないし、最後の00も間違ってるのかも知れない。正しくは、011000110であって、3つのビット(桁)が誤りとか。まあ、今のデジタルの世界は非常に正確だから誤りは1つしかありえない、といった暗黙の前提(or思いこみ)があるのかも。

    

一方、16進法のは、10進法に直すと、×16+10=122。これを二進数に変換すると、01111010。1が奇数個(5コ)だから、パリティビツトのを右端に付け加えて、01111010。よって、オの答は、①。

  

    

     ☆     ☆     ☆

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最後は、1、0を入力して、1、0を出力する、論理回路。この1、0は、論理学との関連で「真理値」と呼ばれてるから、入力と出力の対応表は「真理値表」と呼ばれる。

    

論理回路の基本的な部品である論理積回路(ANDゲート)は、入力2つが1かつ1の時だけ1を出力。この「かつ」は英語でANDだから、AND回路とかANDゲートと呼ばれる。

  

論理和回路(ORゲート)は、入力2つの内、AまたはBが1なら、1を出力。「または」は英語でORだから、ORゲートとか呼ばれる。回路の図(小さい記号)がANDゲートと似てるから、要注意。

   

否定回路は、入力1つと出力1つの間で、1、0の数値が逆転する。これは、命題を否定すると真偽が逆転することに似てるから、否定回路とかNOTゲートと呼ばれる。例えば、「私はテンメイだ」は真の命題だが、「私はテンメイでない」と否定すると偽の命題へと逆転する。

   

  

     ☆     ☆     ☆

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(1)は、トイレが両方とも使用中の時にランプが点灯するから、入力が1かつ1の時に、出力が1。つまりAND回路で、カの答は、下図の選択肢の⓪。

  

   

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(2)は、3つのトイレA、B、Cの内、2つ以上が使用中ならランプ点灯。

  

よって、「A、Bが1かつ1」または「B、Cが1かつ1」または「C、Aが1かつ1」といった入力に対して、出力が1だから、省略表現でいきなり論理式を書いてしまうと、例えば次の通り(不完全だが自然な「選言標準形」)。

     

「(AかつB)または(BかつC)」または「CかつA」。よって、クの答は、または(OR)の回路である①。

     

真理値表は、これも省略表現するなら、(A,B,C)=(1,1,0),(0,1,1),(1,0.1),(1,1,1)の時だけ出力X=1になってるものを選択。キの答は、②。

     

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以上、初年度の問1(の試作)としては、適度な難易度の問題で、飛行機のトイレの具体例も面白かった。それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

      (計 2302字)

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