吾輩は『猫である』に挫折した少年である♪~テンメイ回想録13
昨日(16年4月1日)から朝日新聞の朝刊で連載が始まった、夏目漱石の代表
作の1つ、『吾輩は猫である』(初出1905年)。第1回は読破できたから(笑)、
今日も頑張るぞ!と気合を入れてたのに、どこにも見当たらず。説明もないか
ら、エイプリルフールかと思ったほど♪ 31日の朝刊トップに、「月~金曜に掲
載」と書いてあった (^^ゞ 分かりにくっ!
夏目漱石(本名・金之助)は1867年生まれで、亡くなったのは1916年。今年
で没後100周年だから、最初の長編小説を再び紹介しようってことらしい。ちな
みに漱石は、教師を経て朝日新聞社に就職してることもあって、少し前から新
聞で色々と再掲載されてる。
私が一番多く読んだのは、『心(こころ)』。110回中の8回くらいかな (^^ゞ 一
応、題名に関するマニアックな記事だけは書いたけど、どうも苦手意識が、私
の心に焼き付いてるのだ。
忍耐力には自信があるし、読書も好きで、長くても難しくても読むけど、漱石は
『坊っちゃん』しか読んでなくて、しかも高校1年だった♪ 最初の出会いの失敗
がトラウマ(外傷体験)になって、心が歪曲&抑圧されたんだろう。可哀想な、
坊っちゃん(=私)の心。。
☆ ☆ ☆
朝日の『吾輩は猫』連載初回の下に、「題字は橋口五葉装丁による初版単行本
(上編)をもとにしています」と説明されてたから、試しに検索。すぐに、国立国
会図書館・近代デジタルライブラリーの電子書籍がヒットした。橋口の死後から
でも100年近いから、著作権は消滅済みのはず。縮小コピペさせて頂こう。出
版社と言うか、発行所は大倉書店と服部書店の連名。著作者は本名・金之助。
「吾輩ハ猫デアル」。活字の種類と大きさ、イラスト、全体の配置、可愛いデザ
インだね♪ 今でもレトロ感覚でフツーに通用すると思う。上のハンコは、「帝
国図書館蔵」と書いてるのかな。ついでに、有名な本文冒頭も紹介しとこう。
「ワガハイハネコデアル」(+猫3匹)、カワイイ! イラストの下には英語で、
「I am a Cat」と書いてる(多分)。読者の落書きではないと思う(笑)
☆ ☆ ☆
さて、この記事は「回想録」シリーズの13本目だから、私の個人的な思い出話
がメインであって、内容に関する感想やレビューはいずれ後ほど書く予定。
この本は、私が小学校時代に、母親がプレゼントしてくれたものなのだ。誕生
日だったか、何かの記念だったか、思い出せないけど、単行本の小説を貰っ
たのはこれが最初で最後だと思う。実家のどこかにまだあるのかな?
画像検索しても出て来ないけど、文庫や新書サイズの安い本じゃなくて、箱に
入ったハードカバーの上製本。わが家の家計的には贅沢品だったと思う。母
親がこれを選んだ理由は全く不明。本人の趣味ではなかったはず。私がおね
だりしたのでもない。
ただ、自宅には少年少女向けの世界文学全集と日本文学全集がズラッと並ん
でたから、私はすべて3回くらいは読んでる。もちろん、ルパン、ホームズ、明智
小五郎とかの推理小説は一通り読んでたし、国語の教科書を読むのもわりと好
きだった。
にも関わらず、『吾輩』だけはすぐ挫折してしまったのだ (^^ゞ 最初の2ページ
で挫けて、あきらめる前に最後の2ページをチラッと見ただけかな(笑)。あの
結論を知ってしまうと、子供心としては、推理小説で犯人とトリックを知ったの
も同然。母親に、「高かったのに・・!」(笑)とか注意されたけど、もう読む気に
ならなかった。。
☆ ☆ ☆
では、なぜ本好き少年がすぐ挫折したのか。ポイントは4つだろう。長さ、文体、
古さ、そして、主人公が人間ではなく猫であること。
長いということは、本が重いということでもある♪ 少年の手でハードカバーを
持つと、大きくて重い。文学全集だと、子供向けのやさしい文章に書き換えら
れてたはず。ところが『吾輩』は、元のままだったか、あるいは中学生向けだっ
たか、まだ可愛い少年にとっては文章がちょっと堅苦しくて難しかった。
おまけに古過ぎて、最初からつまづいてしまう。吾輩=名無し猫が「始めて」
見た人間は、「書生という人間中で一番獰悪(どうあく)な種族」♪ 書生なん
て言葉を聞いたのは「初めて」だし、意味も分からない。「時々我々を捕まえ
て煮て食う」人がいるの?(^^ゞ
ちなみに小説の漢字は、「初めて」ではなく「始めて」なのだ。ひらがなは現代
仮名遣いに直してたと思うけど、簡単な漢字はそのままだったと思う。そういっ
た細かい点でも、ちょっと敷居が高いのだ。
☆ ☆ ☆
そして、最後かつ最大の難関は、猫♪ そもそもウチの近所では、犬の方が人
気で、猫はマイナーだった。私自身も、犬を可愛がった覚えはあるけど、猫を可
愛がった記憶は無い。3月31日の朝刊(森まゆみ)によると、夏目家に黒猫が
迷い込んだ時、漱石の妻も追い出そうとしたとの事(笑)
その猫が主人公になって、人間の言葉で人間を語るのだ。やたら冷めた「上
から目線」での批評=批判♪ 当時の私の言葉なら、猫のくせにエラそうに・・
って感じだ。風刺とか人間観察とかいう言葉も、まだピンと来てなかった頃。
現代日本でも、猫がこれほどブームになったのはここ5年くらいだろう。私も今、
ネットで写真や動画を見るとカワイイと思うし、猫目の女の子も好きだけど、猫
耳は趣味じゃない(笑)。子供の頃は、猫というだけでかなりの距離感があった。
擬人法とか擬人化と呼ばれる手法も、最近はサブカルチャー的な流行になっ
てるけど、当時の私だとせいぜい、怪獣・怪人の類に感情移入するのが精一
杯。正義の味方はもちろん、人間の類なのだ。人間に似た姿で、宇宙「人」と
か人造人間とか呼ばれてるし♪
☆ ☆ ☆
というわけで、吾輩は『猫』に挫折した少年である。名前はテンメイだ。今度こ
そ、最後まで読み通して、読書感想文を書きたいと思ってる。小学校時代から
サボリ続けて来た、宿題として。
とりあえず、明日も連載はお休みだから、月曜日に忘れないようにしよう。ま、
ネットの青空文庫でも無料で読めるんだけどネ。近代デジタルライブラリーよ
り軽いから、お手軽だけど、出来れば新聞小説として毎日、最後まで読み続
けたいな。まだ一度も成功してないし、衰退が顕著な古典的文化だから♪
古き良き伝統は継承すべきなのだ。それでは今日はこの辺で。。☆彡
cf. 夏目漱石『心(こころ) 先生の遺書』の題名(タイトル)&自転車
夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳した伝説の出典など
(計 2646字)
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