看板の視線への対人恐怖、軽い社交不安障害+限局性恐怖症(DSM5)か~黒井千次『庭の男』(2022年・共通テスト・国語)

☆追記: 小説全体についての別記事新たにアップ

 黒井千次『庭の男』全文レビュー~居場所も力も失った高齢男性(家の男)の不安と性的倒錯(窃視症))

   

   

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毎年、ネットで注目を浴びてる共通テスト(旧・センター試験)の国語の問題。今年はツイッター検索を見る限り、第1問の評論の方が話題になってる感じだが、あえてまた第2問の文学(小説)で記事を書くことにしよう。最近はこんな時くらいしか、小説を読む機会が無くなってる。

   

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今年(2022年、令和4年)の作品は、黒井千次(せんじ)『庭の男』、1991年。講談社文芸文庫『黒井千次自選短編集 石の話』に収録。自選ということは、作者本人の自信作か、お気に入りということだろう。

   

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出題される前の情報はなかなか見当たらないが、国立国会図書館HPで調べると、どうも雑誌『群像』91年1月号が出典(初出)らしい。p.158-173だから、単純計算すると17ページの著作で、問題で引用された部分は全体の5分の1前後だろう。

       

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黒井千次について検索をかけると、内向の世代、サラリーマン、日本文芸家協会理事長、日本芸術院長、文化功労者といった言葉が並ぶ(コトバンク、ウィキペディア他)。東大・経済学部卒。本名、長部舜二郎。日本大百科全書は「舜治郎」と書いてるが、おそらく誤字で間違い。現在89歳の大御所だが、さすがに近年は作品の発表が減ってるようだ。

   

『庭の話』は58歳の時の作品だから、ひょっとすると本人の体験をリアルタイムで描いた私小説かと思ったら、全く違ってた。本人は早めに会社を辞めて、作家に専念。ただ、同世代の労働者たちが定年退職などで会社を辞めた後、どうするのか、どうなるのか、気になるのは自然なこと。

    

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問題は毎度おなじみ、河合塾HPからダウンロードさせて頂いた。問題の分析を読むと、「第2問は、かなり解きにくい問題もあるが、全体としては昨年の第1日程とさほど変わっていないと思われる」とのこと。一昨年以前のセンター試験時代との比較はしないということか。本文の分量はやや少なめだが、後で変則的な問いが入ってる。

  

  

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出題された範囲だけだと、あらすじは次の通り。ネタバレなので注意。ちなみに小説の全文は、いずれ近い内にチェックしたいと思ってる。

      

会社勤めを終えて自宅で過ごすことが多くなった男性(私)は、隣の家の庭の立て看板に書かれた男が気になりだす。自分はまるで案山子をどけてくれと頼む雀のようだ、とも感じてる。隣家の息子(まだ少年)のためのプレハブ小屋に立てかけられた、単なる看板。

  

それでも何とかどけて欲しいと思ってた時、道でたまたま少年と出会ったので、看板を移動するか裏返しにして欲しいと頼むが、無視されて「ジジイ」と叫ばれてしまう。その日の夜になっても看板はそのままだったので、「私」は隣家の庭に侵入。看板は予想外にしっかりした作りで、針金で固定されてて、動かすことも出来ない。

  

あ奴はあ奴でかなりの覚悟でことに臨んでいるのだ、と認めてやりたいような気分がよぎった」。ここで問題の本文は終了。

   

   

      ☆     ☆     ☆

引用された箇所だけ読むと、まるで一件落着のようにも感じられるが、おそらく小説の全体はそうなってないと想像する。少年を少し見直すことと、看板の男への不安・恐怖とは、別次元の話のはず。

  

一読した後、いつもの事ながら作家は変な話を考えるなと思ったが、よく考えてみると、私も似たような体験をいくつもしてた。すぐには思い出せなかったということは、不快なものとして、私の心の奥、無意識へと抑圧されてたのかも。

     

最初に思い出したのは、小学生の頃、実家のリビングルームに貼ってあったポスターかカレンダー。女性が多かったと思うが、その目線がなぜか気になり始めたのだ。

  

そこで、自分の位置を横にずらしてみたけど、写真や絵の視線は私を追って来る。下にズレても逃げられない。どうも、被写体がカメラや画家に目線を向けてた場合、作品を見る側にそうした心理的な効果が発生するようだ。怖いというほどでもなかったが、子供心に、変なことがあるものだな、とは思った。

     

次に思い出したのは、田舎から首都圏に出て来た後、部屋の窓から道を挟んだ位置にあった、よその家の窓。そこに人影を見たことは確か一度もないが、私はその窓がかなり気になってた。距離は20mくらいか。そこからライフル銃で撃たれるような不安を感じたのだ。ひょっとすると、その窓にぶら下がってた風鈴の音が大きく響いてたことも関係してるかも知れない。

  

さらに、そう言えば人形や古い絵も怖かったなと思い出した。それは視線とはあまり関係ないが、要するに、人間に似た、人間ではない存在だろうか。

     

ちなみに、ロボット開発の世界では「不気味の谷」という用語があるらしい。人間にある程度似たロボットやアンドロイドは不気味だが、もっと似て人間そっくりになると、不気味さが消えるとか。

   

  

      ☆     ☆     ☆

小説の引用箇所の場合、序盤に、看板は「裏返されればそれまでだぞ」とか、「一方的に見詰められるのみ」といった表現があるので、その男性=「私」が気になって仕方ないのは主に、「庭の男」の視線だろう。本物の人間ではないが、他者の目線、まなざしの力、圧迫感。

  

そこで、関連する語句(フレーズ)で画像検索を行ってみたが、意外とピッタリ来る画像が見当たらない。目立つのは、完全なホラーか、あるいは女性の日本人形とか。単なる男の絵か写真で、なるほど怖いなと思えるものがないのだ。

  

あえて、著作権フリーのものから引用するなら、こんな感じだろうか。ただ、不審者イラストはちょっと目線が怖すぎるし、逆に案山子は目線がない。案山子は、十字架に磔(はりつけ)になった罪人や犠牲者の姿にも見える。

      

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上のどちらも真っ黒になってる辺り、黒人が文化的・社会的な「黒」の扱いに異議を唱えるのも無理ないこと。ただ、申し訳ないが事実として、少なくとも日本人には、真っ黒の人物のイラストは恐ろしく感じられるのだ。先天的な反応か、後天的な学習効果なのかはさておき。

      

お化け屋敷の中は暗黒だし、怪談には深夜が付き物。今回の小説で、主人公が「庭の男」と対面したのも、懐中電灯が必要な夜中だった。

     

   

     ☆     ☆     ☆

続いて、視線の不安について検索すると、すぐヒットしたのがNHKの昨年秋の健康記事。"「人が怖い」「視線が気になる」と感じる社交不安症の症状、チェック法、治療"。

  

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社交不安症は、人と関わるさまざまな状況で強い不安を感じ、日常生活に支障を来すようになる病気です。かつては『対人恐怖症』と呼ばれてました」。治療は、薬(SSRI=選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や認知行動療法を用いると。

   

かつては、というより、今でも「対人恐怖」という用語の方が遥かに分かりやすい。それが専門家によって「社会不安障害」と呼ばれるようになったのは、米国精神医学会の精神疾患マニュアル『DSM』の影響だろう。social anxiety disorder の直訳。

   

ところがこの訳語がさらに、「社交」不安障害とか「社交」不安症という馴染みのない訳語になってしまってる。socialの訳が「社会」から「社交」へと変更されたのは、2008年らしい。社交などという言葉は、社交ダンスくらいしか使わないので、誤訳に近いと言いたくなるし、実際、批判もある。

   

しかし、それなりの事情もあるようだ。英語の social を「対人」と訳すのは難しい。一方、社会というより、人との「交わり」に関する障害、症状だから、社「交」の方が誤解が少ない、といった感じか。

  

さらに、「disorder」を「障害」と訳すのも偏見や誤解をもたらす恐れがあるから、単に「症」と訳すことも認めると。結局、「社交不安症」という奇妙な用語になってしまったから、あまり普及してない。

    

   

      ☆     ☆     ☆

最後に、精神医学の世界的バイブルであるDSM5(第5版)の解説書を調べると、小説の主人公の場合、社交不安障害というより、「限局性恐怖症」に近いかも知れない。

   

そもそも、本物の人間と看板の人との「社交」不安というのも、不自然な発想だし、主人公の場合はほとんど知らない少年にわりと強気で自分から近づいて話しかけてる。怖いのは、単なる看板に描かれた「庭の男」のみだから、かなり限定された恐怖だ。

          

限局性恐怖症というのも変な専門用語で、一般にはほとんど使われてないが、元の英語は specific phobia 。何か特有のものに対する恐怖症。

  

診断基準は、「特定の対象または状況(例:飛行すること、高所、動物、注射されること、血を見ること)への顕著な恐れと不安」など。もちろん、看板の男という例は挙げられてないが、わざわざ不法侵入までするくらいだから、特定の対象への顕著な不安だろう。1対1で立ち向かったのだから、恐怖とまでは言えず、むしろ不安と言うべき。

   

   

      ☆     ☆     ☆

なお、試しに英語版ウィキペディアで、scopophobia(視線恐怖症)の項目を確認すると、「社交不安障害+限局性恐怖症」という私の個人的な見方はかなり正しいようだ。

   

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視線恐怖症は、数ある恐怖症の中でもユニークなものである。見られることへの恐れは、社交恐怖症と限局性恐怖症の両方だと考えられる」。

  

いずれにせよ、男性=「私」が、隣の庭の看板の男や視線を気にするのは、退職して家に引きこもりがちになった生活と深く関わってると思う。妻を除いて、他者との関係が珍しくなると共に、どこか自分の現在の状況を恥ずかしく思ってる。外部から、暇な隠居生活だね、と嘲笑されてるように感じてしまう。何となく罪悪感もある。

   

だからこそ、「ジジイ」という言葉が余計に胸に響いたわけだ。家にいるだけで社会的には役立たずの高齢者になってしまったという、自分の淋しい実感を増幅されてしまったから。まだ未来に大きな可能性を持ってる若い少年によって。

  

  

     ☆     ☆     ☆

ただ生きてるだけでいい。そう言ってくれる人、そう認めてくれる人が周囲にいるかどうか。そう、自分で思えるかどうか。超高齢化社会の日本にとっては重い現実的問題だろう。もちろん、その一方では、高齢者の生活を支える労働や生産を担う人達も必要なのだ。医療、介護だけでなく、生活全般において。

   

共通テストの初日の朝、東京大学で高齢者を含む3人の刺傷事件を起こした高校2年生の少年も、東大医学部など行かなくても十分生きていけると思えれば、こんな事にはならなかったはず。医学部など、他にいくらでもあるし、医者以外の職業もいくらでもある。理由、原因、背景はどうだったのか。今後の続報に注目しよう。

       

れでは今日はこの辺で。。☆彡

  

 

     

cf. フィクションとしての妖怪娯楽と、フーコー的アルケオロジー(考古学)~香川雅信『江戸の妖怪革命』(21年・共通テスト・国語)

 妻、隣人、そして自分・・戦争をはさむ死の影のレール~原民喜の小説『翳』(2020年センター試験・国語

 妻と再会できた夜、月見草の花畑~上林暁『花の精』(2019センター試験・国語)

 自転車というキュウリに乗って、馬よりゆったりと♪~井上荒野『キュウリいろいろ』(18センター国語)

 「春」の純粋さと郷愁が誘う涙、野上弥生子『秋の一日』~17センター国語

 キャラ化されない戦後の人々、佐多稲子『三等車』~16センター国語

 啓蒙やツイッターと異なる関係性、小池昌代『石を愛でる人』~15センター

 昭和初期の女性ランニング小説、岡本かの子『快走』~14センター

 幻想的な私小説、牧野信一『地球儀』~13センター

 鷲田清一の住宅&身体論「身ぶりの消失」~11センター

    

       (計 4678字)

  (追記76字 ; 合計4754字)

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精神障害者等の犯罪者、全体的には健常者より少ないけど、放火・殺人に限ると・・(『犯罪白書』)&7kmウォーク

(16日)Walk 7km,1時間15分,平均心拍 112?

消費エネルギー 470kcal?(脂肪 190kcal)

    

いつもの事ながら、事件の生々しい映像はやはり、たまたま居合わせた一般人の動画になる。マスメディアもすぐ駆けつけるけど、どうしても遅れる。

   

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上の画像は、視聴者がNHKに提供した動画のキャプチャー。縦型だからスマホか。この動画の煙と消火活動の状況から考えると、屋外まで煙が立ち込めた時間はかなり短かったのかも。こんな状況で、はしご車の一番上から放水する消防隊員にも頭が下がる。一酸化炭素中毒は大丈夫なのか。

    

この種の火災事件の度に話題になるのが、煙。炎ではなく、煙でやられるらしいし、煙の動きは非常に速いらしい。朝日新聞デジタルは、窓から上半身を出して、なるべく下側の空気を吸う、「くの字」呼吸を紹介してた。理屈は分かるけど、一歩間違えると落下してしまうから、ビミョーな所か。

  

ちなみに朝日の報道写真はどれも、既に落ち着いた後の様子になってた。窓ガラスには、「働く人の西梅田こころとからだクリニック」の文字。

  

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Google Earthでクリニックの位置を確認すると、赤丸のあたり。大阪というか、関西の中心。

  

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まだわりと新しいクリニックで、受付と待合室は、白とベージュ系が基調のキレイな内装。真っ白なソファーの色を保つだけでも、清掃の手間がかかるはず。ところが、たまたま見たある患者の口コミでは、清潔感が星5コ中の1コになってた。しかも、開院2年後の評価で。

  

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これは要するに、大変な人達を相手にしてるということだろう。といっても、その口コミに対しては否定的な評価が多かったから、ごく一部の患者が大変というべきかも。

   

院内の写真を見ても、清潔感が最低評価の場所には全く見えない。特に、カウンセリングルームは、パソコンのキーボードやライトまで含めて、トータルで上手くデザインされてる。

  

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報道によると、2つ上の写真の左側の受付の前あたりで出火したらしい。結果論からいうと、その火をくぐって手前側のエレベーターや非常階段に向かって避難すべきだったのかも知れない。しかし、その場で急に大きな炎を見たら取り乱すのは当然。男が置いた紙袋(?)に入ってた中身は、何だったのか。

   

   

     ☆     ☆     ☆

この容疑者とされる男の自宅でも火事が起きてたらしいから、おそらく意を決した計画的犯罪だろう。男の情報はまだ少ないけど、こころの問題を抱える人間であるのはほぼ確実。

  

ここで思い出すのが、この種の事件の度に出て来る「有識者」のコメント。患者の犯罪は統計的に少ないことが分かってるので、世間の偏見が心配だといった感じのお話だ。今まで何度もその種の専門家のコメントを見て来たけど、私の実感とはかなりズレてる。ただ、自分で調べたことはなかった。

   

今、最新の令和2年版・犯罪白書(法務省)を見ると、興味深いデータが提示されてた。最近、話題の統計の改ざんはおそらく無いと思う。警察庁の統計が元になってるし、時間に追われて次々とアップデートしていく数値でもないので。

  

  

    ☆     ☆     ☆

精神障害者等による刑法犯 検挙人員(罪名別)。

  

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犯罪の全体で見ると、「精神障害者等」の犯罪率は、一般人(または健常者)よりかなり低い。

  

ここでいう「精神障害者等」の定義は、普通の精神疾患の患者とは微妙に違ってるみたいだから分かりにくいけど、おそらく日本の人口の3~5%前後だと思う(数百万人)。ところが、検挙総数に占める割合は僅か1%にすぎない。

     

ところが、殺人と放火という重大犯罪だけに限ってみると、割合が非常に高くなってる。特に放火は極端に多い。

   

もちろん、絶対数は少ないけど、割合的には一般人の数倍という計算になる。そうした重大な統計的事実に触れることなく、世間の「偏見」に注意を促す「専門家」というのもどうかと思う。犯罪白書がわざわざ1つの章を設けて特別に分析してるのには、明確な根拠があるのだ。長崎国際大学の論文(著者・金澤由佳)を見ると、はるか昔からほぼ同じ傾向があるようだ。

       

一応、人権派らしき団体・医療観察法NETによる反論(障がい者寄りの姿勢)にもリンクを付けとこう。個々の犯罪の中身まで調べる余裕はいま無い。ともあれ、深夜の時点で24人とされる犠牲者の方々に、合掌。。

   

   

     ☆     ☆     ☆

一方、単なる一般の小市民は一昨日、7kmウォーキングしてみた。前日、ちょっと無理してリハビリ・ハーフを走った直後だから、まだダメージが残ってたけど、スピードを抑えて完歩。正直、私にとっては、7kmジョグの方がラクだったかも。片足に全体重が乗ってる時間が長いからか?

      

トータルでは1km11分弱のペース。気温9.5度、湿度70%、風速2m新・心拍計はまたおかしなデータになってるから、この記事冒頭のデータでは補正しておいた。いまだに脚が痛いな・・とか思いつつ、ではまた。。☆彡

  

      

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       (計 2036字)

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眞子さまの診断名「複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と、国際的な分類基準(ICD11英語版、DSM Ⅳ・5)

2021年10月1日、宮内庁は、秋篠宮家の長女・眞子さま(29歳)と小室圭さん(29歳)の結婚を発表。その際、眞子さまが複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されていたことも明らかにされた。下は朝日新聞デジタルより

   

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会見に同席した、精神科医の秋山剛・NTT東日本関東病院品質保証室長が中心となった診断ということだろうか。そもそも、PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)は昔から有名な病名だけど、複雑性PTSDという言葉は聞き覚えがない。

   

  

     ☆     ☆     ☆

この診断名は、英語の Complex PTSD の訳語。略すと、C-PTSD。この場合のコンプレックスとは、複合的な状態を表す英単語で、日本語でありがちな劣等感という意味ではない。

    

2018年に発表されたICD11(国際疾病分類・第11版)で導入された新しい診断名で、まだICD11は(2022年頃まで)日本で正式採用されてないはずだから、ちょっと踏み込んだ診断と言える。

  

さらに調べてみると、WHO(世界保健機関)が発表するICDの該当箇所と並ぶ、もう一つの精神疾患(心の病)の診断基準、DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル、米国精神医学会)では、この診断名は見送られてるようだ(後述の英語版Wikipediaより)。したがって、世界の専門家の間でも、この診断に関する合意は十分には形成されてないことになる。

   

ということは、やはり担当する主治医の個人的見解が大きく働いてるのだろう。そこから確認してみよう。   

  

   

     ☆     ☆     ☆

複雑性PTSDの診断に関する発表全文は、以下の通り(朝日新聞デジタルより引用)。

  

 眞子内親王殿下は、ご結婚に関する、ご自身とご家族及びお相手とお相手のご家族に対する誹謗中傷と感じられるできごとを、長期にわたり反復的に体験された結果、「複雑性PTSD」(複雑性心的外傷後ストレス障害)と診断される状態になっておられます。

 PTSDでは、強い恐怖を感じるトラウマの体験のために、トラウマを想起させる出来事の回避、何らかのきっかけによるトラウマの再体験、些細な刺激で強い脅威を感じるといった症状が起こります。

 「複雑性PTSD」は、ICDの第11版で、2018年に新しく導入された診断名です。この診断名は、PTSDと診断されていた方の中で、長期的に反復する、逃れることが難しい人為的なトラウマを体験していて、「自分には価値がないと思い込む」「感情が不安定になる」「他の人との関係を避けてしまう」といった持続的な症状のみられる方を特徴づけるために導入されたものです。「複雑性PTSD」は新しい診断名ですので、現在PTSDと診断されている方の中にも、実際には、「複雑性PTSD」の診断に該当する方がかなりおられると思います。

 「複雑性PTSD」は、言葉の暴力、例えば、ネット上の攻撃、いじめ、ハラスメントなどでも起こります。こういったトラウマを体験すると、どなたでも「複雑性PTSD」になる可能性があります。ネット上の攻撃、いじめ、ハラスメントなどのために、尊い生命が失われていることは、みなさまよくご存じの通りです。

 (引用、終了。赤色の強調は引用者による。)

    

   

     ☆     ☆     ☆

続いて、ICD11の英語原文を見てみよう。数字とアルファベットによる分類記号は、6B41。つまり、心・行動・神経の障害の中で(6)、心理・社会的な神経症的側面が強いものの内(B)、41番目。直前の6B40が、普通のPTSDとなってる。

   

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普通のPTSDに加えて、次の特徴があると書かれてる。改行は引用者によるもの。

   

In addition, Complex PTSD is characterised by severe and persistent

 1) problems in affect regulation;

 2) beliefs about oneself as diminished, defeated or worthless, accompanied by feelings of shame, guilt or failure related to the traumatic event; and

  3) difficulties in sustaining relationships and in feeling close to others.

   

   

大まかに日本語訳を書くなら、(1)感情表現の調節の問題、(2)自分はもう打ちのめされてダメだ、恥ずかしいという信念、(3)対人関係の維持における困難、が重く執拗に続いてるということ。

  

前述の秋山剛医師の、「自分には価値がないと思い込む」「感情が不安定になる」「他の人との関係を避けてしまう」という説明は、ICD11の説明の順番を変えて、(2)(1)(3)の順に平たく説明してることが分かる。

    

   

     ☆     ☆     ☆

最後に、すべての病気を扱うICDよりも専門的な、米国精神医学会の診断基準DSMについて。英語版ウィキペディアのC-PTSDの項目には、次のように説明されてた

   

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つまり、DSM第4版への採用が考えられてたけど、実際には1994年に不採用。続く2013年の第5版でも不採用のままで、結局、PTSDという診断は1つにまとまったまま掲載されてる。下の英語版原書の目次でも確認可能。

   

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とにかく、要するに、深刻な病気だからもっと配慮して欲しいという要請。当サイトでは、これまでもかなり控えめに書いて来たが、より一層注意深く見守ることにしよう。

   

とりあえず、ご結婚おめでとうございます。ではまた。。☆彡

    

       (計 2294字)

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子どもの睡眠からの起床、アラーム(電子音)より早く目覚めるのは母親の声、もっと早いのは足音か♪

フーッ。。 ようやく仕事が終わったのに、一息つくヒマも無く、今日の分の記事に追われるブロガー (^^ゞ もう疲れて眠いけど、時計の時刻表示を見ただけで目が覚めてしまう。

  

しかし、それは私が起きてるからであって、寝てたら時計は見れない。その代わりになるのが、音だ。音は寝てても結構、聞こえるというか、反応してしまう。

    

今日(21年8月25日)の朝日新聞・朝刊コラム「天声人語」には、ちょっと面白い実験結果が書かれてた。要点だけ書くと、小学生はアラームの電子音より遥かに早く、母親の声で目覚めるというお話♪

   

   

      ☆     ☆     ☆

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研究者は滋賀大の大平雅子教授(38歳)ら。ちょっと美人に見える写真もある・・とか学者仲間が言うと、セクハラやルッキズム(外見主義)で厳しくバッシングされるはず(笑)。

  

とにかく、夏休みに小学生13人を昼寝させて、深い眠りに落ちたことを脳波で確認。目覚めるまでの時間は、ピッピッピッの電子音だと平均310秒(5分10秒)。かなり遅いけど、5分後のスヌーズで起きたのかな? 私もよくやってる事(笑)

    

続いて、それぞれの母親が録音した声だと31秒。見知らぬ女性の声だと25秒。アラームの約10分の1の速さ。しかも、「いつまで寝てるの!」とかしかりつける怒鳴り声は禁止♪

   

誤差の範囲とはいえ、見知らぬ女性の方が早いのはどうしてかね? 被験者の子どもが男の子で、萌え系の可愛い声とか?♪

   

   

     ☆     ☆     ☆

マニアック・ブロガーは当然、なるほど、面白いね・・では済ませない♪ 直ちに、出典(元の研究論文)を探してみたけど、いくら探しても論文は見当たらず。

  

すぐヒットする関連情報は、共栄火災の情報ものしり帖というページ。2019年に、「夏休みも目覚めスッキリ」という記事がアップされてる。もとの情報は、毎日新聞が提供してるようだ。  

  

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「人の声で目覚めた場合は、起床後も注意力が高く、誤りが約2分の1に減少しました」。

   

目覚まし時計のメーカーから反論を用意してるかも♪ そもそも13人で1回行っただけの実験みたいだから、科学的エヴィデンス(根拠)としてはかなり弱い。

   

   

     ☆     ☆     ☆

では、元の研究はどこまで精密に行ってたのか。検索語やフレーズを変えて調べまくると、ようやく情報が分かった。論文ではなく、口頭の研究発表が2回あったらしい。

   

最初が、2018年2月5日。学部生か大学院生の朝倉大晟との共同発表。「目覚まし音の違いが覚醒度及び覚醒後の持続的な注意力に及ぼす影響」。第45回・滋賀県学校保健学会、一般講演。

    

次は、大平雅子の単独で、2019年6月28日。「目覚まし音の違いが覚醒度及び覚醒後の持続的な注意力に及ぼす影響」。日本睡眠学会・第44回定期学術集会。全く同じ題名と内容の発表を、別の学会で行ったわけか。いいのかね?

  

口頭発表以外にも、2019年3月の卒業論文(または修士論文)として、朝倉の単独で同名の研究が出てた。

  

以上が、「テンメイのRUN&BIKE」ブロガー、テンメイによる2021年8月25日のブログ発表だ♪ 少なっ! いや、でもこんな所まで調べる人間は他にいないだろうし、検索アクセスは入ると思うな。月に1コくらいは(笑)。淋しっ。。

   

   

     ☆     ☆     ☆

早くも最後に、私自身の経験について。私も子どもの頃は、実家で母親に叩き起こされてた♪ 朝だけじゃなくて、試験勉強の時とか♪ 朝は、父親が部屋の外から怒鳴ることもあったけど、それは母親の命令によるもの(笑)

   

一番すぐ目覚めたのは、母親がノシノシと階段を上がって来る足音(笑)。私の部屋は最初、中二階という変な場所にあって、やがて本物の二階に移ったけど、どちらも階段の上。あのノシッ、ノシッと近づく足音ほど怖いものはない♪

   

ドアを開けられる前には必ず目覚めてた。・・っていうか、そう言えば部屋に鍵はついてなかったのかな? 中二階は無かったけど、本物の二階はあったような気もする。まあ、これはテンメイ回想録の記事ではないから、良しとしよう。

   

とにかく、目覚めの早い順で言うと、結論は次の通り。

  

 ①母親の足音  ②母親の怒鳴り声  ③目覚まし時計のベル(ジリリリ!) ④アラームの電子音(ピッピッ)

   

次の日本睡眠学会で報告する予定♪ 入ってないだろ! それでは、まだ寝れないけど、今日はあっさりこの辺で。。☆彡

    

        (計 1779字)

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うつ病(抑うつ状態)の心理検査尺度CES-D、日本語訳と英語原文(米国NIMH、Radloff)の対比

心理的な検査、テストというものは、英語圏を中心に多数発表されてるし、中身が単純で似てるので、これ自体に特別な注目ポイントはない。ただ、女性タレントがブログでうつを発表した時に画像まで載せてて、かなりのメディアも記事にしてたので、つい調べることになった。

   

CES-D scale(Center for Epidemiologic Studies  - Depression scale:疫学研究センター・抑うつ尺度)。

  

最後の「scale」(尺度)という英単語を省略したり意訳したりしてることが多いが、省略すると単なる米国国立精神保健研究所(NIMH)のセンター名に近くなってしまう。

   

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センター所属のラドロフ(L.S.Radloff)が1977年に開発して、世界に普及。一般人の自己報告用。平均して90%の精度があるとか言われてるが、日本人や日本語で同じとは限らない。もともと曖昧で論争的な精神状態の計測だから、精度を求めるのも困難。

   

   

     ☆     ☆     ☆

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上の写真は「小林礼奈さん」に渡された、CES-D検査結果用紙。自分でブログに公開してるし、既に各種メディアで拡散してるし、そもそも自分でクリニックのグループの広告にも出てるから、縮小引用は許容範囲だろう。

   

堂々と公表してるから、ステマではない。人気も知名度もある、ゆうメンタルクリニック。私も前から知ってる。

    

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ただ、彼女は失礼ながら名前も顔も知らなかった。グラビア系のタレントのようで、過去のニュースを検索すると、お笑いコンビ・流れ星の瀧上伸一郎との結婚や離婚が話題になってる。離婚後も対立してるらしくて、ストレスも大きくのしかかってるはず。

   

  

     ☆     ☆     ☆

尺度の中身自体は、既にあちこちのサイトの画像で公開されてるので、ここでは元の英語原文(ブラウン大学)と日本語訳(産業医科大学)との対比に注目してみる。単純な直訳ではないのだ。

  

全部で20項目の簡単な質問リストを提示。過去1週間、どのくらいの頻度で質問文のように感じたか、4段階(0点~3点)で回答する。

   

ネガティブな16項目では、少ない方が低い点数。ポジティブな4項目では、少ない方が高い点数。合計点が高いほど、抑うつ的だと判定。16点以上が抑うつ状態。

     

 ほとんど、または全くなし (1日未満)

 たまに、または少し (1~2日間)

 時々、またはかなりの時間 (3~4日間)

 ほとんど、またはずっと (5~7日間)

  

ちなみに上の4段階の日本語は、私が元の英文から直訳したもので、日本で広まってるものとは少し違う。日本向けの画像を見ると、「感じることはなかった」といった日本語が後半に付いてるが、英語原文にそうした言葉は入ってないので、念のため。

  

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どのくらいの頻度で感じたかをたずねてるので、頻度の4段階には「感じた」という言葉が入らないのは自然なことだ。入れると重複になる。

   

   

     ☆     ☆     ☆

1.普段は何でもないことが煩わしい。

  I was bothered by things that usually don't bother me.

これは日本語も英語もほぼ同じ。ただし、英語は過去形で、過去1週間の報告だから過去形の方が正確。

  

2.食べたくない、食欲が落ちた。

  I did not feel like eating; my appetite was poor.

これもほぼ同じ。ただ、食欲が「落ちた」のではなく、poor(乏しかった)ということ。落ちたと訳すと、ずっと食欲がない人の場合におかしな事になってしまう。

  

3.家族や友達から励ましてもらっても、気分が晴れない。

  I felt that I could not shake off the blues even with help from my family or friends.

ほぼ同じだが、直訳は「たとえ手助けがあったとしても」。そう書かないと、もともと家族や友達がいない場合に困る。

  

4.他の人と同じ程度には、能力があると思う。 (頻度が少ない方が高い点数

  I felt I was just as good as other people.

「能力がある」ことに限らず、「good」(良い)かどうかが本来の設問。

   

5.物事に集中できない。

  I had trouble keeping my mind on what I was doing.

これはほぼ同じ内容で、上手い翻訳。

  

6.ゆううつだ。

  I felt depressed.

これもそのまま。

  

7.何をするのも面倒だ。

  I felt that everything I did was an effort.

「面倒」というと、始めるまでの嫌気の意味合いが強くなる。元は effort(骨折り、苦労)だが、意外と訳しにくいから、面倒という訳は適切かも。

  

  

    ☆     ☆     ☆

8.これから先のことに対して積極的に考えることが出来る。 (頻度が少ない方が高い点数

  I felt hopeful about the future.

「積極的に考える」という言い回しは一般にはほとんど使われない堅い表現なので、普通に「未来に希望を感じる(または、感じた)」と訳す方がいい。

   

9.過去のことについてくよくよ考える。

  I thought my life had been a failure.

これはかなり異なる。「くよくよ考える」のではなく、「人生は失敗だったと考える」だけ。

   

10.なにか恐ろしい気持ちがする。

  I felt fearful.

これはほぼ同じ。

  

11.なかなか眠れない。

  My sleep was restless.

なかなか眠れないと言うと、布団に入ったのに寝付けないという意味が強くなってしまう。あまり眠れないとか、十分眠れないと訳すべき。

   

12.生活について不満なく過ごせる。 (頻度が少ない方が高い点数

  I was happy.

不満なく過ごせると、ハッピーでは、かなり違うはずだが、日本人の性格や文化も絡んで訳しにくいのは事実。

    

13.普段より口数が少ない。口が重い。

  I talked less than usual.

これは前半だけにすべき。「口が重い」というと、言うべきことを言わないようなニュアンスになってしまう。

   

14.一人ぼっちで寂しい。

  I felt lonely.

「一人ぼっちで」は無い方がいい。一人でなくても lonely (寂しい)ことは普通にあるので。

  

  

     ☆     ☆     ☆

15.皆がよそよそしいと思う。

 People were unfriendly.

よそよそしいだと、もともと親密な関係に限られてしまう。好意的でないとか、冷たいの方が近い。

    

16.毎日が楽しい。 頻度が少ない方が高い点数

  I enjoyed life.

その時々、あるいは1日単位の感情をたずねるのだから、「毎日」という言葉はない方が適切。

  

17.急に泣き出すことがある。

  I had crying spells.

急に、ではなく一時的にと訳す方が近いが、それだと堅いので、急にという訳で良い。

   

18.悲しいと感じる。

  I felt sad.

これは、時制を除いてそのまま。

  

19.皆が自分を嫌っていると感じる。

  I felt that people dislike me.

皆というより人々だが、皆という訳の方が自然か。

    

20.仕事が手につかない。

  I could not get "going".

これはかなり違う訳で、ほとんど誤訳に近い。仕事の場面に限ったとしても、かなり意味が違う。原文は、何かをやり始めることが出来ない、動き出すことができないということ。ただ、そもそもの英語原文が曖昧すぎるかも。

   

   

     ☆     ☆     ☆

というわけで、英文和訳に限っても、色々と問題を含んでいる検査だと分かった。最も疑問なのは、カッコで日数を示している点。

    

本来は日数ではなく時間がポイントだから、日数を補助的に入れるのなら小文字にすべきだろう。1日どころか、1時間の内にでも色々と気分は変わるものだ。

     

肝心の自己報告については、私の場合、元の英文で計算して、22点前後。診断は「軽度抑うつ状態」。もう少し悪化すると病院に行くレベルらしいから、注意すべきか。

  

しかし根本的に、これほど単純な基準で人間の精神状態を測定しようという発想自体に大きな問題を感じる。人間は、疫学統計の論文を書きやすくするために生きてるわけではないし、向精神薬の開発を簡略化できるようにできてるわけでもない

  

精神科医とかカウンセラーなどは、そういった基本を常に頭に入れておくべきだろう。「ほとんど、またはずっと」。なお、今週は計14151字で終了。ではまた来週。。☆彡

    

      (計 3409字)

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日常生活や仕事での「イップス」(yips)~動かない身体と心との闘い

最近は多少マシになってるけど、私は昔から(意外と)人前で緊張

するタイプで、特に身体が思うように動かなくなることが多かった。

 

よく覚えてるのは、ほとんど初体験だったシティホテルの宴会場の

アルバイト。次々とディナー料理をテーブルに出したり下げたり

する中で、苦戦したのは細かい手の動き。

 

醤油(?)か何かを若い女性客の前に出した(or 注いだ)時には、

醤油差しを持つ指が震えて、受け皿とカタカタカタとぶつかる音が

したから、女性客は笑ってた (^^ゞ 別にイヤな笑い方ではなかった

けど、そのシーンは強烈に印象に残ってる。

 

田舎から出て来て、1年後くらいの貴重な経験。それから数年経った

今でも(笑)、緊張というか力み過ぎというか、どうしても出来ない事

は数多い。

 

 

      ☆       ☆       ☆

スポーツで、精神を集中する時に緊張し過ぎて震えや硬直を起こす

ことは、イップス(yips)と呼ばれてる。yipの複数形。

 

語源的には、子犬が甲高い音でキャンキャンッ!と吠える時の

泣き声だとか説明されてるようだけど、人が失敗した時のうめき声

とはあんまし似てないと思う。

 

特に、典型的な症状とされるゴルフのパットのミスだと、紳士・淑女

のスポーツだから、せいぜい小さなうめき声とかため息が普通だろう。

私の場合は、黙って苦笑したり顔を歪めるパターン♪

 

スポーツだと、私はテニスのサーブが苦手で、特に試合だと急に

身体が固まってしまう。練習試合でもダメなくらいだから、生まれて

初めて市民レベルのシングルスの大会に出た時は、ガチガチに

なって逆に観客を集めたほど (^^ゞ 普通のストロークも振り切れて

ないから、すっぽ抜けで次々にアウトになってボロ負けだった。

 

 

     ☆       ☆       ☆

このイップスという言葉。私はかなり前の朝日新聞のスポーツ記事

で読んだと思うけど、スポーツ以外の日常生活や仕事に使う例は

ほとんど増えてない。

 

たぶん、「固まる」、「緊張しすぎ」、「壁にぶつかる」とか、「もっと

リラックスして」とか、普通の言葉で十分対応できるからだろう。

深刻な症状の場合なら、精神疾患の言葉も色々と使える。

 

ただ、私はもっと広く使われていい便利な言葉だと思うし、個人的に

自分に対してよく使ってる。たとえばここ1ヶ月半だと、書くべき数学

記事がどうしても書けなかった。能力や時間の問題より、心理的な

硬直なのだ。自縄自縛。興奮はしてない(たぶん♪)。

 

で、いざ縄がほどけて身体が動くようになると、案外スムーズに事が

進んだりする。最近、数学記事が続いてるのは主にそうゆう理由

なのだ。まあ、別の特殊な事情もいくつか絡んでるんだけど。。

 

 

     ☆       ☆       ☆

ブログ関連だと他にも、毎年恒例、各種のレジャー人口の推移記事

を今日ようやく更新できた。冷蔵庫に溜まってた物も無事に処分。

お腹は大丈夫みたいだ(今の所は・・笑)。

 

PCデータも外付けHDDにバックアップしたし、iPadもiOS12

にアップデート。放置プレイだったスマホや昔のPCも、引っ張り

出して来て使用。仕事でも、ずっと出来なかった事が少しずつ

出来るようになって来てる。

 

ただ、根本的にやる事が多過ぎて、とても処理が追い付かないし、

何から始めるべきなのか迷ってしまう。やる事も、持ち物も多過ぎ

なのだ。

 

これはこれで、イップスとは別次元の問題みたいだから、改めて

考えてみることにしよう。物事を大量に集めて放置する溜め込み症

は、「強迫的ホーディング」(Compulsive Hoarding)と

して精神障害に認定されてる (^^ゞ。病気か!

 

まあ、薬も治療も不要。単に「捨てればいい」んだけど、ときめくモノ

が多過ぎて、世界の近藤麻理恵のコンマリ片づけメソッドも通じず♪

ブログみたいに、ときめかないのに続けてしまうものもあるし。仕事

もときめかないな。

 

そういえば人生自体もあんまし、ときめかないかも(笑)。コラコラ!

ときめかなくても、人は生きる。それが天命=テンメイなのだ。

あぁ、まだ仕事しなきゃ! ではまた明日。。☆彡

 

          (計 1641字)

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うつ発病から1年、回復に向かう将棋のプロ棋士~先崎学『うつ病九段』

たまたま今日、2018年10月17日、昨年春から大注目の将棋界の天才児・藤井聡太七段が新人王のタイトルを獲得した。

   

まだ16歳、あどけない顔つきの高校1年生で、プロ棋士というより将棋大好き少年といったイメージの方がピッタリ来る。羽生竜王以来かそれ以上、数十年に一人の逸材と言われるほど。

   

スマホ使用疑惑事件で大揺れだった将棋界と日本将棋連盟は、彼の活躍をはじめとして、ネットの動画配信、SNS、映画、漫画などのおかげで、倍返しの人気を獲得。一部の女流棋士たちは、ちょっとしたアイドル的扱いにもなってる。

   

こうしたV字型の盛り上がりの中で、まるで逆行するかのように、うつ病の谷底に沈んでいた将棋指しが1人いた。先崎学・九段、現在48歳。羽生世代の有名棋士で、今回の著書でも同期の大棋士を「羽生」と呼び捨てにしてるのが目立つ(同学年)。

   

スマホ騒動の火消しにも尽力したらしい先崎が、将棋界から2年ほど遅れてV字回復を目指す姿を描いたのが、『うつ病九段』(文藝春秋)だ。副題は、「プロ棋士が将棋を失くした1年間」。すぐ読み終えた友人から頂いたので、さっそく拝読。簡単に感想その他をまとめてみよう。

   

ちなみに私も田舎の少年時代は微かにプロを夢見たことがあるし、このブログには精神医学関連の記事も多い。個人的にも身近な話だった。

   

下は奥様の囲碁棋士、穂坂繭・三段のツイッターより。『週刊現代』の「泣けるインタビュー」と、2人で1年前から経営する囲碁将棋スペース「棋樂」もPR。

   

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     ☆       ☆       ☆

この本を知ったのは、先月の朝日新聞の書評欄(9月29日朝刊)。「売れてる本」(7月刊行で28000部)として、タレント精神科医・香山リカが好意的にレビューしてたのを読んでたのだ。題して、「発病から詳述した“心の良書”」。

   

このレビュー・タイトルには、香山自身の考えも少し反映されてると思う。反論というほどではないけど、著者・先崎とは微妙にズレた見解で、わりと普通のものだ。

   

本文後半で香山はこう語る。「著者は何度も繰り返す。『うつ病は脳の病気』」。その後で香山は、心やそのふれ合いも大切だと強調。おまけにタイトルに「心の良書」と書いてるわけだ。「脳の良書」ではなく♪

  

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上は先崎が精神神経科に1ヶ月間(17年7月末~8月末)入院した、慶応大学病院。「綺麗という一言・・・看護師さんたちも綺麗」で、先崎が「顔で面接をしてるんですか?」とたずねたら、そうなんですよ、分かります?」と即答されたそうだ(笑)。

   

美女は金と力のある場所に集中する。古今東西、変わらぬ真理♪

   

   

     ☆       ☆       ☆

話を戻そう。先崎は心の揺れ動きや微妙なひだをわかりやすい言葉で記録してるが、脳の具体的な話や写真・図解はないし、薬の名前も作用メカニズムの話もない。脳の病気を引き起こしたのは心のストレスでは?、といった本質的な問いかけもない。

   

にも関わらず、彼が「脳の病気」だと繰り返すのは、基本的に兄の精神科医(先崎章、埼玉県総合リハビリテーションセンターか)の影響だし、現代精神医学の主流(の強調)とも言える。

   

先崎の数ヶ月前に同じ文藝春秋社から出た、歴史学者・與那覇潤の『知性は死なない 平成の鬱をこえて』も、その路線で学術的に論じた著作。

   

薬と休養(休職、入院)で脳の機能を回復させれば治る、あるいは実生活が可能な程度に緩和されるというのが、「うつ病(大うつ病性障害)」の標準的考えだ。正確には、軽症は別として、中等症・重症のうつ病に対するもの(日本うつ病学会・治療ガイドライン)。

   

脳内物質セロトニンを、SSRI(選択的セロトニン再取込阻害薬)で実質的に増やせばいい、とか。商品名なら、ルボックス、パキシル、ジェイゾロフトなど。もともと自分の脳にあった物質を、薬の助けで有効活用する。改良版のSNRIなら、トレドミンとか。

   

   

     ☆       ☆       ☆

ただ、医学以外の社会的現実もあるようだ。それほど具体的には強調してないものの、心の病、精神の病に対する偏見のようなものを感じてるらしい。こちらには薬物療法は効かない。

    

ここ20年ほど、有名人が続々と告白する時代になってるが、まだ近寄りがたい雰囲気は残ってるし、閉鎖病棟や拘束に限らず、治療の現実の問題も報道されてる。ヨーロッパの先進的で共生的な動きに対する、日本の現場の遅れも指摘される。

   

先崎は本の末尾近くでこう語る。もちろん、かなりの実績とプライドを持つ自分自身に跳ね返ることも承知の上で。

   

 「医者や兄は、今は理解がある世の中だし、精神病なんてものは昔のことばであるという。だが、実際はそんなに単純なものではあるまい。 ・・・偏見がある・・・。他者に優越感を持つことによって快感を得る人間が多いことを知っている」。

   

   

     ☆       ☆       ☆

「精神病」という言葉は伝統的に、重くて治りにくい病(分裂病=統合失調症など)を意味して来た。

  

だから医学の世界ではここ数十年、その言葉を避け、「精神疾患」、「精神障害」といった言葉に置き換えてる。やわらかい表現なら、「心の病」。

   

しかし、まだ一般社会では、この使い分けが理解されてない。

 「うつ病 → 精神病 → 治らない・リスクが高い・遺伝する」

といったネガティブ思考で、うつ病を必要以上に恐れる傾向は残ってる。だから、うつ病患者を何となく遠ざけることにもなる。

  

より正しくは、

 「うつ病 → 精神疾患 → かなりの場合、治療と周囲のサポートで実生活可能

と言うべきだろう。

     

もちろん、寛解(症状の緩和・軽減)の後、再発のリスクはあるし、退院後の通院・服薬も含め、完治までの道のりは大変だろうが。

 

 

 

先崎の兄が、「必ず治ります」、「必ず安定します」と短い断定を繰返すのは、身近な家族だからこその愛情、思いやりであって、プラセボ(偽薬)的な心の効果はあったらしい。

  

ちなみに「躁うつ病(双極性障害)」は、「うつ病」と微妙に異なる別の病とされ、もう少し困難なので、一応分けて考えるべきだ。

   

   

     ☆       ☆       ☆

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とにかく、回復期(たぶん末期)に入った先崎は、兄の勧めで、1月半ばから3月末にかけて本書を執筆。春から、将棋連盟などの仕事と、上の写真の「気樂」で頑張ってるらしい。これも奥様のツイッターより。東京都杉並区、西荻窪駅から徒歩1分。

   

将棋の公式戦の最初は、6月半ばの順位戦(B級2組)だろう。さすがに初戦も含めて苦戦中、現在までの成績3勝6敗なってるけど、それよりまず、心と身体をしっかり立て直して欲しい。

   

家庭にも、棋士仲間(特に後輩たち)にも恵まれてるようだから、気樂のベランダから見える景色のように、青空が広がることを期待しよう。ひょっとすると、著書の続編もあるかも。闘病中に親身になってくれた弟弟子、中村太地王座との共著『この名局を見よ! 20世紀編』(マイナビ出版)は7月末出版。気樂HPより。

    

  

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    ☆       ☆       ☆

それにしても、凄いのは藤井聡太七段&新人王。正直な先崎は、ふざけんな、ふざけんな、みんないい思いしやがって」と、本の帯みたいに悔しがってるかも♪ 

   

2014年の厚労省・患者調査によると、うつ病関連(躁うつ病込み)総患者数は110万人。医療機関に行かない人も含めると、実態もっと多いはず。健全な嫉妬や焦りも、うつから抜け出すパワーやエネルギーに出来るだろうと祈りつつ、そろそろこの辺で。。☆彡

   

   

P.S. 2020年12月20日、NHK・BSプレミアムでのドラマ化が決定。主人公の俳優は安田顕。

 

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cf. うつ病の診断基準と抗うつ薬~NHK『ためしてガッテン』

 大胆かつ繊細な試論~香山リカ『雅子さまと「新型うつ」』

 携帯連絡が返って来ない時の認知療法スキル(技)~朝日新聞「100万人のうつ」

   

           (計 3074字)

   (追記48字 ; 合計3122字)

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アリストテレス『動物部分論』の間違い♪~「人間のみが、くすぐったくなる」(英訳原文)

週初めの月曜の朝、時間が無いから、わりと楽に書けるコネタで

お茶を濁すことにしよう。一昨日(2018年5月12日)の朝日新聞・

朝刊別刷beに掲載された記事は、面白い切り口だった。

 

 くすぐったくなるのはなぜ?

   (連載「ののちゃんのDO科学」)

 

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記者は小宮山亮磨。取材協力は、ベルリン・フンボルト大学の石山

晋平研究員。

 

 

     ☆       ☆       ☆

結論から書くと、他の仲間たちと遊んで楽しむための脳の仕掛け

ではないか、という推測。もちろん、これは生物学的な解釈の1つで

あって、真相は神のみぞ知る、あるいは理由なしの偶然かも♪

 

本当は、ラットがくすぐったがる写真が可愛いから、その実験の

論文を調べたい所だけど、それより古代ギリシャの賢人の話を

調べた方が地味にウケる気がする。

 

 「(・・・くすぐったくて笑っちゃうのはなぜか・・・)。

  このことは、2300年も昔のアリストテレスという哲学者も、

  疑問に思っていたらしいよ。

 

「らしい」という書き方が気になって、直ちに検索。英語の原文

(の1つ?)がすぐに出て来たので(ウィキソース)、その箇所だけ

引用して、大まかに訳してみよう。

 

『動物部分論』(On the Parts of Animals)

第3巻・第10章より。時間がないので、同時通訳みたいな反射的

翻訳だ。ギリシャ語原文まではチェックしてないので、念のため。

 

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     ☆       ☆       ☆

For when men are tickled they are quickly

set a-laughing, because the motion quickly

reaches this part, and heating it though but

slightly nevertheless manifestly so disturbs

the mental action as to occasion movements

that are independent of the will.

 

人はくすぐられると、すくに笑い出す。なぜなら、くすぐりの動きは

直ちにその部分に届き、僅かではあるけどハッキリと刺激し、心の

能動的な動きを妨げて、意志とは違う反応を引き起こすからである。

 

 

That man alone is affected by tickling is due

firstly to the delicacy of his skin, and secondly

to his being the only animal that laughs.

 

人間のみがくすぐりを感じるのは、まず第一に、皮膚の繊細さ

によるものであり、続いて、唯一の笑う動物であることによる。

 

 

For to be tickled is to be set in laughter, the

laughter being produced such a motion as 

mentioned of the region of the armpit.

 

というのも、くすぐられるとは笑わせられることだからである。

わきの下の領域について述べた動きで引き起こされるように。

 

 

     ☆       ☆       ☆

一番最後の、「the laughter」以降の英語は構文がよく

分からないし、その前にわきの下について語った箇所もまだ発見

できてない。「しばしば言われるような・・」といった一般的な意味

かな? とりあえず保留しとこう。

 

前置詞 by が抜けてるか省略されてるのかも。あるいは、英訳か

英文入力のミスかもしれないし、特殊な省略表現の可能性もある。

 

ともあれ、ラットもチンパンジーもゴリラも笑うし、犬・豚・イルカも

そんな反応を見せるそうだから、アリストテレスは間違ってた。

現実主義者と言われるにも関わらず、現実に動物をくすぐったこと

はなかったのだろう♪

 

ちなみに、一番可愛いのはもちろん女性の反応だ(笑)。合意の

もと、笑い出す直前で寸止めするのが効果的♪

それでは今朝はあっさりこの辺で。。☆彡

 

              (計 1583字)

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吃音(どもり)の多因子モデルCALMS~『ラヴソング』第2話

広平  じゃあ、オレのは? これ。 (白いスニーカーを見せる)

さくら  真っ黒!

広平  いや 違うでしょ。

さくら  心がドス黒い。腹黒い。偉そうなのに小心者。 

     若ぶってスカしたクソジジイ。

     善人ぶったインチキ男。腰ぬけ野郎。

広平  ・・・ それから 他には?

さくら  てか、何しに来たんですか?

広平  (渡したパンフレットの裏にメッセージ:

      もう一度 7秒の勇気を 信じてみない か?

     まぁ、秒数は関係ないけどね。

さくら  ・・・・・・ アハハハハハ♪

広平  ・・・ ハハハハハ♪

滝川  先生、ヘルメットかぶってください。

 

 

           ☆          ☆          ☆

素晴らしい! おばさん・・・じゃなくて、涼子お姉さん(山口紗弥加)のパープ

ル・ミニワンピと黒ストッキングが♪ そこか! ・・・っていうのは毎度お馴染

みの無意味な自分ツッコミだけど、「秒数は関係ないけど」っていうのは広平

(福山雅治)の優しい自分ツッコミだった。靴だけオシャレな滝川(木下ほうか)

のヘルメット突っ込みも、いいね。

 

さくら(藤原さくら)にいい加減な話を連発してバレた直後だから、自嘲気味

に自分ツッコミすることで、さくらのモグりこんだ心を解きほぐす。と同時に、

7秒ではなく、ずっと自分を信じて欲しいと伝える高度なメッセージ。このクソ

みてえなジジイを信じれば世界は変わる(多分)。

 

さくらは、喜び・驚き・感謝の思いを、笑い声の形で一気に爆発させてた。大

笑いする時は、どもらないわけネ♪

 

ということは、さくらの吃音の場合、心理的なストレスがかなり大きいってこと

かな。もちろん、それぞれの個人差も大きいんだろうけど。ちなみに「笑い声

 吃音」で検索すると、他人に吃音を笑われる話がズラッとヒットしてしまった。。

 

 

          ☆          ☆          ☆

さて、久々のひどい風邪で迎えることになってしまった、『ラヴソング』第2話。

最初、「7秒の勇気、世界を変える」とでも題してレビューしようかと思ってたの

に、見逃し動画のサブタイトルを見ると、「7秒の勇気が世界を変える」となっ

てた (^^ゞ そのまんまか!

 

自分の平凡な手抜きアイデアを反省して、「7秒の勇気、クソみてえな世界を

変える」にマイナー・チェンジしようかと思ったけど、先日、保育園の暴言ブロ

グを批判した後だから、タイトルに「クソ」とは書けない♪

 

それじゃあってことで、一気に難しい専門的タイトルを付けることにした。これ

なら流石に、ツイッターともカブらないだろう・・・と思って検索すると、お一人だ

ツイートしてて、20コほどのリツイートも発見。写真から俳優の顔をカットし

た上で、「リ・ブログ」させて頂こう。写真左側、ホワイトボードの図式が注目点。

 

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只者じゃないなと思ったら、アカウント名に見覚えがある。番組最後のエンド

ロールに「取材協力」として登場してる、九州大学病院の菊池良和ドクターだっ

た。読売新聞HPの記事を読むと、ご本人も吃音の当事者で、大変な努力の末

にここまで辿り着いたらしい。

 

私は当事者どころか、物心ついて以降、吃音の人と会った覚えがほとんど無い

けど、マニアック・ブロガーとして、もっと突っ込んだ話を書いてみよう。その前

に、モヒカン・ロッカーの方々にも軽くリスペクトを示しときたい♪

 

 

           ☆          ☆          ☆

「このクソみてえな世界を俺たちが変えてやるぜ!」と、ヴォーカルでもドラム

の身代金要求(笑)でも絶叫してた、ロック・バンドと言うか、パンク・バンド。素

人にしては上手いし、様になってるなと思ってたら、やっぱりプロだった。

 

名前はGEEKS(ギークス=オタク、マニア、変人)。挿入歌の曲名は「DIRTY

 BOY」(ダーティー・ボーイ)だけど、未発売の新曲かな? 下はカラー・モヒ

カンのヴォーカル、エンドウ.さんのtwitter。「乱闘シーンでアクション監督の

爺さんにすんごい怒られてビックリしました」とのこと(笑)

 

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「酷いパンクバンド」と自分で書いたり、爺さん呼ばわりしたり、流石の尖り方

だけど、実は3年前に東京マラソンも完走して、ブログで報告してた♪ 健全

なエネルギー発散もちゃんとやってる訳ね。リンクからジャンプする時は、あ

らかじめ音量を絞っといた方がいいかも(笑)

 

 

          ☆          ☆          ☆

あぁ、病人のパワーは既に無くなって来たから、本題に向かおう。検索が少な

くても、書くべき話はある。視聴率が低くても、放送すべきドラマはある。

 

言語聴覚士・夏希(水野美紀)の部屋で、「500マイル」の替え歌を作って音楽

療法する時、ホワイトボード(白板)には五角形の各頂点を結んだような図が

書かれてた。おそらく、吃音理論の有名なモデルだろうと思って検索すると、

偶然にも(?)ドラマの故郷・広島からの論文が無料公開されてた。

 

音声言語医学51、「吃音に対する認知行動療法的アプローチ」、川合紀宗

(広島大学)。認知行動療法は、ものの見方や行動の仕方を具体的かつ直

接的に修正する治療法で、日本の第一人者・大野裕は雅子さまの主治医と

してもお馴染みの有名人だ。ただし、雅子妃に適用してるかどうかは不明。

 

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           ☆          ☆          ☆   

ここでは、吃音を理解するための「CALMSモデル」の構造に、一言だけ日本

語訳に近いものを付加してる。一番上は、Affective(心理・感情面)。その左

下は、Cognitive。これを知識面と書いてるけど、英語との対応を考えると、

思考・知覚の方が近いと思う。

 

そのまた下が、Social(社会性)。社会面と書く方がいいと思うけど、ひょっと

すると新聞の社会面みたいな語感を避けたのかも♪ その右側がMotor 

(口腔運動能力)。英語を直訳するなら、発話動作の感覚-運動制御だ。そ

の右上が、Linguistic(言語面)

 

Cognitiveから右回りに頭文字をつないでいくと、C・A・L・M・S。日本語読み

は不明だけど、「落ち着かせる」という動詞と考えればカームズとかコームズ

という読みになる。

 

以上の5つの側面とか因子が相互的に関連しあってると考えながら、吃音を

多面的に理解していく。だからホワイトボードには、<吃音者の悩みの多因子

モデル>と書かれてた。

 

ただし、ドラマでは元の図を右に1/5回転(=72度回転)してたから、一番上

が「認知 Cognitive」となってた。まあ、その方が右回りにCALMSと読みや

すいのは事実。ちなみに、感情と運動を結ぶ線が無かったのは、スタッフのうっ

かりミスだろう♪ ウチでは福山のヒット作『ガリレオ』の数式でも、不注意と思

われる細かいミスを度々指摘してある。

 

 

          ☆          ☆          ☆

さらにギーク=マニアっぽい所まで進もう。CALMSモデル普及の中心となっ

てるような感じの英語原論文も、無料公開されてた。Healey(ヒーリー)他に

よる、「Clinical Applications of a Multidimensional Approach

for the Assessment and Treatment of Stuttering」。些細な指摘

だが、広大論文の文献名は、「Approach」を「model」と誤記してるようだ。

 

直訳すると、吃音の評価と治療のための多次元アプローチの臨床的応用。要

するに、CALMSモデルを実際に使うという話だ。2011年には、広島大学と

日本音声学会が中心となって、講演会も開催されたとのこと。また、広島だ。

 

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このモデルがそれほど目新しいものでもないことは、著者たちもハッキリ認め

てる。似た先行研究が色々あって、それをまとめ直したものなのだ。直近の2

つだけ参考までに掲載しとこう。Smithと、De Nil。いずれもGoogle books

で公開されてた。著作権の許可は得てるらしい。

 

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これらと見比べると、五角形のCALMSモデルというのは、5つの側面の相互

性と対等性を重視してキレイにまとめたものだと分かる。だからこそCALMS

では、一方から他方への向きを表す矢印を使わず、単なる線で結んでるのだ。。

 

 

          ☆          ☆          ☆

最後に、ホワイトボードを参照しながら、モデルをさくらに適用してみよう。

 

C(認知)においては、「どもる自分が悪い」、「吃音を隠したい」とか考えてる。

A(感情)においては、「どもるんじゃないか・・」(予期不安)、「恥ずかしい」、

「私は劣ってる人間だ」(劣等感)を感じてる。だから、結婚式のスピーチは

断って、救急車を呼ぶのに苦労した直後は激しく落ち込むことになった。そ

の劣等感を、甘える形で臨床心理士・広平にぶつけてたのだ。もちろん広平

は、大人のブロの男性だから、包容力で優しく受け止める。

 

L(言語)においては、どもり易い言葉、どもりにくい言葉とか、細かい言語能

力が関わってる。例えば、菊池医師の場合、実家の下関(しものせき)は言い

やすかったから、しばらく引っ越さなかったとのこと。そう言えば、ドラマのさく

らも、時々スラッと喋ってるような気がする。言葉自体のおかげなのか、状況

の手助けなのかは分からないけど。

 

M(運動)だと、「ど・・ど・・ど・・」と同じ音を繰返す「連発」、「ど・・・・・・」としば

らく音が途絶える「伸発」、「・・・・・・」と最初の音が出ない「難発」。3つのタイ

プがあって、人それぞれ、言葉や状況で変わるようだ。今度から、さくらの特

徴も考えながら見てみよう。

 

S(社会)だと、吃音を他人にからかわれる場面(幼い頃の養護施設の思い出

など)があったし、どもる社交的場面を回避することになる。披露宴、ライブハ

ウス「S」でのNEW STAR LIVE(ニュー・スター・ライブ)。

 

 

           ☆          ☆          ☆

しかし結局、さくらは「7秒の勇気」を出して、せかすサラリーマンのプレッ

シャーをはね返し、ハムカツ&コロッケそばを注文した♪ 違うわ! そうじゃ

なくて、特天海老玉わかめそばでゲップしたって話でもなくて、ライブで歌うこ

とにしたのだ。

 

そのキッカケ、最大の因子はやはり、A、感情だった。原論文の図の通り、A

が最上位なのだ。広平先生、好きという感情から、「一緒に人前に出たい」、

「仲良く練習したい」と考え、ライブという社交的な場面に向かうことを決定。歌

の場合、歌詞も自由にできるから、言語面や運動面も問題ないはず。

 

ただし、問題は広平の隠された心。さくらの姿と歌声に、亡くなった恋人(?)・

春乃(新山詩織)のイメージを重ねてること。と言っても、案外、さくらにバレて

も大丈夫かも知れない。冒頭の高齢女性・志津子(由紀さおり)みたいに、実

は広平以外にも好きな人がいるとか。

 

 

           ☆          ☆          ☆

それはここまでの流れだと、女性の真美(夏帆)である可能性もあるのだ。で、

さくらの取り合いで、広平と真美がバトルするとか♪ 『ラスト・フレンズ』か!

性同一性障害というものの存在を認知させた『ラスフレ』、吃音を認知させた

『ラヴソング』。フジテレビが誇る、社会貢献活動なのだ。

 

なお、ゲームの場面で、真美がプレイするキャラ・春麗(チュンリー)にKOされ

た、さくらの超ミニ・セーラー服キャラは、「春日野さくら」(笑)。そのまんまか!

そろそろ体調的に限界なので、今日はこの辺で。。☆彡

 

 

 

cf. 故郷の広島、東京から「500マイル」(800km)~『ラヴソング』第1話

   やさしさに包まれたなら、二重の陽性転移~第3話

   もっかい、もう1回!、音楽療法~第4話

   ブルーハーツ「終わらない歌」、終わる夢~第5話

   月夜に好きよ♪、ろくでなしのダメ男~第6話

   雨の彼方に虹、Leola(太陽の声)「Rainbow」~第7話

   過去の自分との幻想的ふれあい~第8話

   ラヴソングへのラヴソング~第9話

   さよなら、やさしい悪魔(DIABLO)~最終回

 

                         (計 4480字)

            (追記 174字 ; 合計 4654字)

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元少年Aと『絶歌』、香山リカの「サイコパス」という見解(SPA!)を読んで

激しい批判や反発を招く一方、初版10万部はすぐに(ほぼ)完売、5万部を

追加とか言われてる、元少年A『絶歌(ぜっか)』(太田出版)。

 

私は元々、神戸連続児童殺傷事件に関心があったし、当サイトでは精神医

学関連の話もかなり書いてる。だから、すぐに読んで感想を書こうかと思っ

てたが、いまだにその本自体は読んでない。世間の反応の大きさに驚き、

とまどってるからだ。

 

元少年Aが書くこと、出版社が発売することだけでなく、それを買うこと、読

むこと、図書館その他が扱うことまで非難される状況。こうなると、せめて、

1000万円レベルの印税の大部分が被害者の遺族に渡されるのを確認す

るまでは読まないことにしようか・・・とか考えつつ、メディアの情報だけは

それなりに目を通してる。

 

松谷創一郎のレビュー、<「酒鬼薔薇聖斗」の“人間宣言”──元少年A『絶

歌』が出版される意義>も大胆な内容とタイトルだったが、昨日『SPA!』か

ら配信された記事も、別の意味で大胆な内容だ。

 

   香山リカ、『絶歌』から「元少年A」の脳の機能不全を読み解く

 

そもそも彼女は、今春の妙なツイッター事件の後でもあるし、一段と反発を

招きやすい状況だと思うが、今回の記事はなかなか専門的で本格的なもの

になってる。見解が妥当かどうか、根拠が十分かどうかはさておき、精神科

医や心理の専門家達が真剣にじっくりと語る機会はあっていいと思う。

 

彼に似た人間が少なからず存在するのは事実だろうから、具体例に即し

て、理解、事後対処、予防措置を進めていくべきだろう。香山の文章の末

尾は、次のように書かれてた。

 

   いずれにしても、程度の差こそあれ、「素行障害(非情緒的特性タイ

   プ)」の子どもや少年は確実に一定数、存在しており、より効果的

   (社会にとっても本人にとっても)なプログラムの開発が早急に望ま

   れる。犠牲になった方々や遺族のためにも、少年法に守られ、いま

   は社会で暮らす元少年A自身そして今回の手記が、せめてプログ

   ラム作りの一助になることを願いたい。

 

 

           ☆          ☆          ☆

さて、手記を読んだ香山の長文コメント。普通の人にとって、読みやすくは

ないだろう。

 

予備知識があれば、よくある話として、すぐ理解できる部分が多いだろうけど、

病名や精神鑑定、診断基準(最新のガイドラインは2013年の『DSM-5』)

に慣れてないと分かりにくいはず。おまけに、香山(と編集担当者)の不注意

によるミス、書き間違いがいくつかあるから、無用な混乱を招いてる。

 

最大のポイントは、元少年Aがかなりの「サイコパス」(精神病質の患者)で

あって、「『心の闇』といった心理的な問題ではなく、何らかの脳の機能不全

に基づいている」、という主張だ。病名、障害名だと、「サイコパシー」。

 

これについては以前、PC遠隔操作事件の時、当サイトで記事にしてある。

香山の記事には書かれてないが、サイコパシーの診断基準として、「PCL 

-R」(サイコパシー・チェック・リスト、改訂版)と呼ばれるものが使われて

るのだ。20個の項目の内、香山の主張と深く関わるのは次の3つだろう。

 

   良心の呵責・罪悪感の欠如

   浅薄な感情

   冷淡さ/共感性の欠如 (callousness and lack of empathy)

 

香山の表現で言うと、「冷淡で非情緒的」。現在ではこれが、素行障害のサブ

タイプの特徴とされてるようだ。この冷淡という言葉の元になってる英語は

callous」であって、冷たいと言うより、「無感覚」を表す言葉。語源を遡ると、

「皮膚が硬くなってる」という意味だから、触れても感じない状態なのだ。

 

 

         ☆          ☆          ☆  

もちろん、何も感じないからといって、罪と罰は別問題だし、そもそも香山

も、「完全なサイコパスかといえばそれも違う気がする」と書いてる。

 

私はまだ手記を読んでないけど、少なくとも今現在の元少年Aは、サイコパ

スの度合いがそれほど高くない状態だろうと想像する。あの事件以降、既

に18年も静かに経過してるし、今回の出版に関しても相当なやり取りや作

業があったようで、そうした社会生活をクリアして来てるのだから。

 

サイコパスの診断基準PCL-Rの20項目には、「病的な虚言」、「偽り

騙す傾向/操作的(人を操る)」、「貧弱な行動コントロール能力」、「衝

動性」、「無責任」(おそらく、周囲について)、「自分の行動に責任が取

れない」、「仮釈放の取消」といった項目が並んでる。

 

出版に至るまでの大変な道のり(執筆、出版交渉、書き直しなど)をクリア

したことを考えると、これらの項目に当てはまってるかどうかを示す点数は

低いだろう。サイコパシーの度合いは合計点を重視するようなので、ここ

数年に関しては、あまり度合いが高くないことになると思う。

 

 

         ☆          ☆          ☆

とにかく、そもそも心が硬化して無感覚な人間がある程度いて、そこには脳

の問題もあるようなのだ。根本的な治療法の開発には時間がかかるだろう

から、それまでは現実的な妥協の努力を続けるしかない。

 

例えば、元少年Aに対する心理的サポートや医療ケアについて、香山は気

がかりだとしてるが、法的、制度的、実社会的にどうなのか。本来なら、出版

や増刷よりもそちらの方が先決問題だろう。

 

なお、単なる不注意だろうが、香山の記事には少なくとも3ヶ所くらいミスが

ある。まず、素行障害(旧・行為障害)の英語を「condut disorder」として

るが、正しくは「conduct disorder」。また、序盤でサイコパスと「反社会性

パーソナリティ障害」を比較する時、「前者」と「後者」が逆になってる感じだ。

 

さらに、<犯行当時には「素行障害(非情緒的特性タイプ)」と診断された

のではないか>と書いてるが、正しくは、<犯行当時には「行為障害(現

在なら素行障害の非情緒的特性タイプ)」と診断されたのではないか>と

書くべきだろう。

 

「冷淡で非情緒的」(callous and unemotional)なタイプという区分は、

一昨年からの診断基準DSM-5で登場したものだから、犯行当時には

存在しない。

 

 

         ☆          ☆          ☆    

あと、それらのミスとは別次元の話だが、「サイコパス」について語る時、

「一切の良心を持ち合わせていないような人たち」と書いてる。

 

診断基準PCL-Rにおいて、「良心の呵責・罪悪感の欠如」というのは、

20項目中の1つだし、3段階評価である。1つ「に過ぎない」とは言わな

いが、冷静に全体を総合判断する必要があるだろう。

 

とはいえ、香山が専門家として、それなりに突っ込んだ話を書いてるのは

確かだ。次は、脳の専門医や、支援プログラムの専門家の意見などを聞

きたいと思う。とりあえず、今朝はこの辺で。。☆彡

 

 

 

P.S. 9月10日、巷で話題になり始めた少年AのHP(らしきもの)を少し

     だけ見た。と言うか、自己PRに乗せられて見ること自体、気が引け

     るし、メインの「ギャラリー」で、あまりに不気味な絵が大量に描かれ

     てるし、ナメクジの写真もあるから、差し当たりスクロールで飛ばし

     てしまったのだ。かなり引き締まった肉体美も誇示してるけど、本人

     の写真かどうかは不明。

 

P.S.2 翌日、あとがきだけ読んだ簡単な感想を追加した

 

 

cf. 香山リカ『しがみつかない生き方』を読む (上)

   香山リカ『しがみつかない生き方』を読む (下)

   大胆かつ繊細な試論~香山リカ『雅子さまと「新型うつ」』

 

    ・・・・・・・・・・・・・・・

   サイコパス&マインドコントロールの迷宮~『世界仰天』ドラマ・成海朔2

 

                                  (計 3035字)

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