子どもの原風景と運命、イメージと現実の連鎖~『教場0 風間公親』第6話

(向坂) 自首します

     息子は あいつは

     画家を目指すそうです

(風間) 素敵な作品ですね

(向坂) もっといいものを描けます

     あいつなら

        (脚本 君塚良一)

    

    

      ☆     ☆     ☆

終盤のグロテスクな惨劇の前、殺人事件解決のシーンの台詞はキレイに決まってた。風間(木村拓哉)の「素敵な作品」という言葉には、二重の意味が込められてる。

   

表面的には、画廊の外側のショーウィンドーに飾られた、向坂(こうさか:筒井道隆)の絵。熊乃背山の風景画。そして深層的には、向坂の実の息子、絵の才能が豊かな匠吾(城桧吏:じょう・かいり)。カンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)に輝いた、是枝裕和『万引き家族』の子役。

   

欲を言えば、向坂(筒井道隆)が「あいつなら」と言う前に、2~3秒の無言の間(ま)があればもっと良かった。長岡弘樹の原作『教場0』第2話では、少し間が空けてあるのだ。まあ、ドラマのラストには千枚通しの襲撃を長めに挿入したから、その分、絵の話の時間が削られたと。

    

   

     ☆     ☆     ☆

売れない画家である父の絵と、才能ある息子の小学校時代の絵。2つの描き分けは絶妙だった。たぶん、絵画制作スタッフ2人の内、亀山裕昭が描いたか、あるいは深く関わった絵だと思う。

   

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上が、遠野(北村匠海)の依頼でわずか2日で描き上げた、実の父の絵。逮捕か自首までに時間が無かったこともあるけど、才能がいま一つだと思う。実際、ドラマでも原作でもそうゆう設定になってた。

   

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それに対して、上の絵は、小学生が描いたにしてはかなり上手い。空、山、野原、微妙な色使いになってる。家の青い屋根や茶色い川の濁流(道?)が単調になってるのは、わざとだろう。元々は、空も単なる青にしてたのを、実の父のアドバイスで微妙な色にしたわけか。

    

匠吾にとっての「原風景」とは、直接的には自分が子どもの頃にスケッチブックに描いた上の絵。ただ、実の父の絵をたくさん見て育ったはずだし、実の父という存在自体が原風景といえる。「熊乃背山」という名前は象徴的で、「父の大きな背中」を表すもの。

   

   

     ☆     ☆     ☆

もちろん、実の母であって現在の母でもあるお母さんも含めて、匠吾にとっては実の親子3人の生活が原風景。だからこそ、そこに割って入った歯医者・苅部(浜田信也)の姿は、単なる不気味な歯の絵にされてた。

     

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サブタイトルの「画廊の三枚の絵」は、直接的には、上の3枚。向坂に呼び出された苅部が冷淡な言葉を続けたのは、この3枚の並びに内心、激怒したからだろう。

   

こちらは、もう1人の絵画制作スタッフ、 長内江海(おさない・えみ)が担当か。twitterを見ると、2人の画家は以前から知り合いみたいだ。亀山が先輩格。

    

   

      ☆     ☆     ☆

苅部が殺されてしまった直接的な原因は、彼が、向坂が大切に保存してた匠吾の原風景の絵を床に投げ捨てたから。ただし、その絵は終盤までずっと宙吊り状態になってて、何度かチラッと一部が映っただけだった。演出・プロデュースは中江功。

   

もちろん、苅部に対する恨みや劣等感も、向坂にはずっとあったはず。妻が歯医者と浮気して、そのまま離婚、再婚、親権獲得。おそらく妻にしてみれば、苅部のお金と裕福な生活、社会的地位が魅惑的だったはず。

   

単純化すると、向坂の芸術性に、苅部の「頭」が勝った形になってる。歯科医になるための頭脳と、現実的な損得を考える「頭の良さ」。だからこそ、頭を切断されてしまった。手首の切断は、指紋の削除と共に、歯科医の商売道具の破壊になってる。

     

原作小説の方では、偶発的な殺人事件みたいになってた。向坂と苅部に体格差があるから、苅部が吹っ飛んでしまったのだ。何しろ、向坂は「熊乃背」の熊。苅部(かるべ)は軽(かる)いのだ。

    

    

      ☆     ☆     ☆

今回、映像的に地味にこだわってたのは、バスを降りるシーン。3回か4回、映されてる。最初、匠吾の前に降りた女子高生が地味にちょっと可愛かった♪

     

バスを降りるという行為。なぜかドラマでは人名が変えられてたけど、原作では2人の画家に関するエピソードになってる。キリコのある絵をバスの中から見たタンギーが、バスを降りて、やがて自ら画家になったとか。

     

ちなみに、その絵は右肩が少し下がってる男の裸体の絵なのだ。切断死体と似た特徴を持ってるのは、偶然なのか、必然なのか。ドラマでは、ペイントレーという画家(おそらくフィクション)とある若者の逸話へと変更されてた。

   

   

     ☆     ☆     ☆

フィクションといえば、画廊の外のウインドーに飾られてた、ソレーユという殺人犯の絵。これも創作で、検索しても実質的に何も実話がヒットしない。あえて言うなら、16世紀に実在した画家カラヴァッジョだけど、画風が全く違ってる。    

    

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ソレーユというのは、フランス語で「太陽」。燃える太陽と、殺人の血を合わせたような赤色が際立つ絵が印象的で、匠吾は悟るように遠野にこう語ってた。

  

「この絵。ソレーユっていう画家は殺人者だったんですよ。それでも立派な絵をいっぱい残してます」。

    

その絵の題名がまた興味深い(細かっ・・♪)。「オビディエンス」(obedience)。従順とか服従という意味の英単語で、特に親への従順さを指す言葉。

   

画家で殺人者の父親を持つ息子として、匠吾はこれから過酷な運命に従って生きることになる。しかし、もう、「父に従う」しかないのだ。進路も含めて。

   

    

     ☆     ☆     ☆ 

従順といえば、遠野も高校時代に病死した彼女に対して従順だった。死ぬ直前に彼女が病院から郵送してくれた写真と、裏側の言葉に従って、パトカーに乗る刑事を目指すしかない。

    

少し背伸びしても、結果的に刺されるとしても。「あなたの夢が叶うことを祈ってます。必ず叶えて!」。

      

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今、思えば、前回の風間の言葉「背を向けた」というのは、今回の展開の暗示、フラッグだったのかも。千枚通しフード男(森山未來)がいるかも知れない方向に背を向けてしまったのが、致命的な失敗だった。来週、輸血で助かるのかも知れないけど。

    

   

      ☆     ☆     ☆

最後に、赤い絵に話を戻そう。今回のドラマは、最初から最後まで、赤色のイメージの連鎖ができてた。

          

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まず、風間が暗い部屋から出るシーン。ドアの向こうに、赤いランプとその反映(?)が見えてる。つまり、濃い赤と、薄い赤。手前の右下には、赤い花がぼんやり映ってる。ズームレンズの焦点は、赤いランプに合わせてある。

  

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その直後、ズームレンズは手前の花に焦点を合わせる。左には、落ちそうな赤い花びら。右上には、落ちそうにないしっかりした赤い花びら。

    

偶然にしては良く出来てるのだ。赤いランプと落ちそうな赤い花が、遠野。薄い赤ランプとしっかりした赤い花が、風間の象徴。

  

   

     ☆     ☆     ☆

そして終盤では、一連の悲惨な襲撃シーンの始まりに、横浜のシンボルである観覧車・コスモクロックが赤くライトアップされてた。

   

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その後、観覧車のライトみたいに丸く赤く染まったのが、遠野の傘。

   

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そしてクライマックス。右目を刺されたまま、千枚通しを抜こうともせず、瀕死の遠野に傘を差しかける風間の向こう側には、赤いネオンサイン。暗闇と赤。鮮明なコントラスト(対比)になってた。

  

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現実の世界でも、イメージのつながりが出来る。例えば、匠吾の山の絵と、向坂の山の絵。

  

また、イメージと行為のつながりもある。例えば、キリコの絵と、タンギーがバスを降りて画家になったこと。あるいは、画廊の外の真っ赤な絵と、向坂の死体切断。

    

そして、フィクションの世界でも、イメージのつながりが作られてるのだ。ランプ、花びら、観覧車、傘、ネオンサイン。赤い映像の連鎖。。

   

  

      ☆     ☆     ☆

なお、個人的に気になったのは、画廊の外の少女の絵。氷山の階段を下りるような姿だけど、よく見ると、氷山は女性の裸の姿に見える。上の端には、2つの乳房の下側。その少し右下には、へその穴。

    

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そう見るなら、これは女の子が母親の胎内から生まれ落ちる様子を描いた絵だろう。階段の曲がり方は、胃腸の線に似てる。幼い子どもの幻想なら、胃腸の先の肛門からの出産も不思議ではない。

    

そういえば、匠吾は顔つきもキャラ的にも女性的な少年。実はこの絵こそ、匠吾の最古の原風景なのかも。

     

ちなみに、精神分析学における「原光景」とよばれるシーンの代表の1つが、出産なのだ・・という話をすると長過ぎるから、もう止めとこう♪

  

教場0・第6話の世帯視聴率は8.3%、個人視聴率は4.9%。ビデオリサーチ調べ、関東地区。「今こそ」、踏ん張りどころか。風間も、ジャニーズ事務所を代表するスター、木村拓哉=キムタクも。それでは今日はこの辺で。。☆彡

  

   

   

cf. 一筆書きできない道、奇点を2コに修正すべき&万力で締め付けられる黒い心、光と影の映像美

    ~『教場0 風間公親』第1話

 いじめ不登校の子どもの母親、担任教師への殺意から自分が逃げるべき~『教場0』第2話

 1人でできないことは2人で・・自殺ではなく他殺だと示す「毒のある骸(死体)」~『教場0』第3話

 孤独の胎衣(えな、たいい)、虐待の冷水、幼児を覆う流れは親の涙か・・~『教場0』第4話

 カンニングの法則、SNSや地図のトラップ、大学教授のパワハラもどき~『教場0』第5話

 「ロカールの法則」とフランス語原文、サブタイトル「第四の終章」の意味~『教場0』第7話

   

      (計 3694字)

    (追記43字 ; 合計3737字)

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朝日be漢字抜け熟語(四字)のヒント、手紙末尾の「草草不一」の意味・由来とか&強い南風で15km走

(6日)RUN 15km,1時間16分05秒,平均心拍 137?

消費エネルギー 633kcal?(脂肪 177kcal)

   

朝日新聞・土曜朝刊、別刷beのパズルについては、「絵むすび」と「推理」を中心に多数の解説記事を書いてるけど、「漢字抜け熟語」の記事はまだ少ない。ちゃんと書いたのは2本だけ。他に、ちょっと呟いたのが2本。

    

わりとアクセスも多めなので、一昨日(23年5月6日)の問題について、軽くヒントを書いとこう。一部の答しか書いてないけど、ネタバレになるので、ご注意あれ。文字通り、四字熟語の途中の漢字が抜けてる穴埋めパズルで、文系向け♪ お正月の拡大版には、三字熟語や五字熟語も含まれてる。

     

ちなみに、ウチの過去記事は、2017年に1本、2023年に1本書いてる。どちらも正月の拡大版をまったり解いた内容。例によって、何も書かずに頭の中だけで解くと、かなり脳トレになる。

   

  

     ☆     ☆     ☆

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左上から右下に向かって、漢字の数が少ない順に並べてある。漢字が書かれてない四字熟語が3個。漢字1つだけ書かれてる熟語が14個。漢字2つの熟語が4個。

   

基本的には、右下から考えて行くと解きやすいけど、今回は漢字2つが書かれてる熟語4個の内、私がすぐ分かったのは2つだけ。まず「15 点倒 1」は、「三点倒立」。中学か高校の体育の授業で練習した覚えがある。15番の漢字は「三」。1番の漢字は「立」。

  

実はこの時点でもう、応募用の答(1、2の順でできる漢字の言葉)は予想できる。おそらく、今の時期に使われる2文字の熟語で、1文字目が「立」だから、多分、アレだろう♪

   

   

     ☆     ☆     ☆

それは書かないことにして、次に私がすぐ分かった右下の熟語「14 活排 5」は、「生活排水」。14番の漢字は「生」。5番の漢字は「水」。

   

すると、「15 権 10 1」、「5 14 昆 19」、「20 14 運 12」も推測可能。ただし時々、読者を間違えさせる引っかけ問題があるので、要注意! 今回だと、「16 10 16 厘」は間違えやすい・・とだけ書いとこう♪

    

そこで間違えると、つられて、「6 6 11 16」も間違えやすい。すると、Google検索で奇妙なサイトに誘導されやすいのでご用心! 私はちょっと操作不能っぽい感じになってしまった。

   

そこがどうかはともかく、検索アクセスだけを狙った怪しい海外サイト(ほぼ英語)は時々見かける。検索結果をタップ・クリックして飛んでも、欲しい情報はないのだ。Googleの情報収集ロボットを騙すプログラミングで作ったものだと思う。

    

    

      ☆     ☆     ☆

話を元に戻そう。もう月曜になったことだし、ズバリ書くと、「6 6 11 16」の答は「草草不一」。今、入力して漢字変換すると、「草々不一」と出たけど、最初の2文字は同じ6番だから「草草」が正しい。

      

「草草不一」は、手紙の最後に付ける言葉のようで、私は単なる「草々」しか知らなかった。「草々」「草草」は、おそらく「怱々」(そうそう)の漢字だけ簡単にしたもので、要するに、「慌ただしく」書いた手紙で申し訳ございません、という意味。不一」とは、「一」でないこと。つまり、「いちいち全てを書いた」十分な手紙「ではない」ことを謝罪する言葉。

  

結局、「草草不一」で、慌ただしく書いた不十分な文面で申し訳ありません、という意味になる。漢字は表意文字だから、いちいち全て、意味があるのだ♪ もうこのくらいのヒントで、十分だろう。。

   

    

     ☆     ☆     ☆

一方、体育会系でもある小市民の方は、一昨日(土曜)、15km走って来た。かなり疲れてたけど、翌日(日曜)がずっと雨の予報になってたから、その分までまとめて距離稼ぎ。長めに走ると、ポラール心拍計のサイトの評価も高くなる♪ ・・っていうか、10kmくらいの短距離だと、かなりスピードを出しても評価が低いのだ (^^ゞ

   

変なダメージのない完走を目指して保守的に走って、トータルでは1km5分04秒ペース。ま、こんなもんでしょ。気温22度!、湿度67%、風速7m!。天気図的にはそれほどでもないのに、台風みたいな暖かい強風が吹いてた。物が飛んで来てケガする恐れがあるから、ずっと警戒しながらランニング。

  

新・心拍計は少し低めに出てると思うけど、わりとマシな値で、補正はせず。あぁ、大型連休後の月曜はダルイな・・とかボヤキつつ、ではまた。。☆彡

   

    

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           平均心拍 最大

往路(2.4 km) 13分26秒 120 129 

LAP 1(2.1) 10分51秒 132 138

  2   10分43秒 139 144 

  3   10分37秒 141 144 

  4   10分29秒 145 152

  5   10分24秒 144 148 

復路(1.9)   9分35秒 140 152

計 15km 1時間16分05秒 137(81%) 152(89%)

     

       (計 1945字)

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坂本龍一の遺作(白鳥の歌)が校歌、過疎地に新設で起業家育成、神山まるごと高専&10kmラン

(3日)RUN 10.3km,51分47秒,平均心拍 133

消費エネルギー 414kcal(脂肪 112kcal)

   

この春の新設校、私立「神山まるごと高専」の校歌は、あの世界の坂本龍一が作ってたらしい。未完の遺作。後世まで残る、印象的な歴史になった。最後の曲のことを一般に、「白鳥の歌」(スワン・ソング)と呼ぶらしい。白鳥は死の間際に美しい声で鳴くというお話。

   

画像は、テレビ東京のニュース動画より。棚田(!)だった土地に、木造平屋建ての校舎を建築。だから校庭に段差があると。意図的に残したわけか。国内で19年ぶりの高専新設。

    

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今の所、公式HPでは公開されてないけど・・と書いたところで、念のためにYouTubeをチェック。坂本本人との(?)約束で、楽曲は公開できないらしい。入学式で1回だけ流す約束で、録画・録音は厳禁とされてた。新設校の側としては絶好のPR素材だから、「是非!」とお願いしたはず(個人の推測)。

     

今後、隠し取りの動画が拡散しないことを祈りたいけど、生徒も大人(親・報道その他)も野心家が集まってそうだし、誰かが炎上覚悟で狙って来るかも。色んな意味で、普通の学校ではない

   

   

     ☆     ☆     ☆

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徳島県、名西郡、神山町。人口5000人弱の過疎地。半世紀前には2万人いたらしい。過疎の僻地の町おこしで、高等専門学校。正直、ちょっと先が見通しにくい。短い動画だけでも、かなりクセの強さを感じる。いや、個性的というべきか。

    

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「モノをつくる力で、コトを起こす人が 世界を 良くしてくれると、 本気で 信じています」。

   

この文章と書き方、特に「コトを起こす人が世界を良くしてくれる」という部分は、明らかにインパクトを狙ったものだろう。「事を起こす」という言葉は普通、「事件を引き起こす」ことを意味する。新興宗教や反体制的な政治活動とのつながりを匂わせて、とにかくまず名前を売ると。

    

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399人が受験して、一期生44人が合格。倍率9倍の意外な人気は、起業家育成という独特の方針もあるとは思うけど、学費無料という点も大きかったはず。企業から出資を募って、年間200万円の学費を無償化(5年間)。

   

この先、運営は大丈夫なのか、不安を感じる人は少なくないだろう。入学金23万円はいいとして、全寮制の寮費・年間100万円は高めだと感じる。

   

運営法人の理事長・寺田親弘も起業家。会社のSansanは、名刺管理サービスで国内トップ、東証プライム上場だから、現在は勝ち組。

   

  

     ☆     ☆     ☆

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母に教えられて即決したという、埼玉県(!)の起業家志望の女の子、鈴木結衣さん。堂々とした応答で、可愛くて、洋服も髪型もオシャレ。名前もシンプルで綺麗。早くも、周囲の大人たちから注目されてると思う。テレビ局も狙って映したはず。

    

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そして、サプライズということになってた、校歌の場面でのスクリーン紹介。黒い背景に白字で弔意を表しつつ、「作曲 坂本龍一  作詞 UA」。この未完の遺作を誰が引き継いで完成させるのか。あるいは、初めから作り直すのか。

     

いずれにせよ、校歌より大切なのは、学校運営と授業、生徒指導。私も瀬戸内海出身の田舎者だから、過疎地の苦境や淋しさはよく分かる。学校、幼稚園、お店、次々と消えて、子どもの姿も見かけなくなってしまった。

   

ネットとデジタルの時代に、地方がどれだけ活躍できるか。案外、最大のライバルはAIかも。とにかく、44人の生徒の皆さん、地域と共に、頑張って!♪

   

   

     ☆     ☆     ☆

一方、単なる小市民ランナーの方は、前日の荷物ウォークの疲れが足腰に残る中、昨日は軽めに10kmラン。最後に0.3kmのオマケ付き。

   

軽めといっても、最近はすぐ自然にスピードが上がって行く。終盤は1km4分半近くまでペースアップして、トータルでは1km5分02秒ペース。心拍も低くて、いいね♪

  

気温17.5度、湿度40%、風速2m。新・心拍計はほぼ正常に作動。ちなみに終盤のグラフの上下は、信号待ちによるもの(細かっ・・)。上は長袖1枚で、意外と暑くなかった。

   

最近、書き過ぎが多かったから、今日もあっさりこの辺で。。☆彡

 

  

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          平均心拍 最大

往路(1.9km) 11分08秒 113 124 

LAP 1(3.1) 15分59秒 133  143

  2   15分00秒 144 149

復路(2) 9分40秒 142 150 

計 10.3km 51分47秒 133(78%) 150(88%) 

   

     (計 1803字)

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近代ロケットの父・ゴダードの名言「昨日の夢は、今日の希望であり、明日の現実になる」、英語出典(『ROCKET MAN』)

先日は打ち上げ「中止」だった、日本の国産ロケットH3初号機。今回(23年3月7日)は「失敗」となった。といっても、失敗の様子は動画を見ても分からない。遥か上空で、第2段エンジンのトラブルが発生したらしいから。

    

このニュースについて、私は先日の「中止」騒動と合わせて感想を書こうと思ってたが、やはり止めとこう。それより、再度の打ち上げの前日(3月6日)、朝日新聞・朝刊のコラム「天声人語」が面白いエピソードを紹介してたので、そちらを取り上げる。

    

「・・・ゴダードは液体燃料ロケットの打ち上げに史上初めて成功し、近代ロケットの父と呼ばれた。名言を残している。『昨日の夢は今日の希望であり、明日の現実となる』

 

▼これをあいさつのたびに引用した生徒会長がいたというから驚く。中学時代の諏訪理さん。2千倍を超える競争を勝ちぬいて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士候補の一人となった。46歳での合格は歴代最年長だそうだ・・・」

  

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       ☆     ☆     ☆

当サイトでは、今まで、多数の名言を扱って来た。名言サイトの類は世界中にあるが、日本語、英語その他、言葉の出典を書いてないことが多いし、しばしば本人が語ってない偽物の言葉も掲載してる。それをうっかり引用してるテレビ番組も少なくない。

    

今回も正直、キレイ過ぎる言葉だからちょっと不安だったけど、どうも本物らしい。1次資料として、日記と報道が残ってるようで、それらを元にした本格的な伝記(2次資料)もすぐ発見。名言の出典探しとしては、わりと簡単な部類だった。実物を見ておこう。

    

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『ROCKET MAN』、David A. Clary(デビッド・クレイリー)著、2003年。インターネット・アーカイブで限定公開されてた。巻末に付いてる大量の注と文献を見るだけで、かなりの労作だろうと想像できる。

   

   

      ☆     ☆     ☆

下が、ゴダード(Robert H. Goddard)の言葉を引用した箇所。第1章「記念日」。1904年、高校の卒業式で、卒業生の男子代表として行った演説のラスト。

     

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途中までの英文は、ごく大まかに文脈だけ書いとこう。── 我々は無知だから、未来について確実なことなど何も語れない。真剣に誠実に努力して初めて、将来を予言できるのだ ──。

  

・・・and he should derive courage from the fact that all sciences have been, at some time, in the same condition as he, and that it has often proved true that the dream of yesterday is the hope of today and the reality of tomorrow.

      

そして誰もが、次の事実から勇気をもらうべきなのだ。すべての科学は、ある時期、自分と同様に未熟だったが、しばしば真実だと示されてることがある。昨日の夢は、今日の希望であり、明日の現実なのだ。

     

細かい話だが、最後はbe動詞の現在形「is」があるだけで、科学の歴史の事実を述べてる。だから、朝日新聞の「明日の現実になる」という翻訳は選ばず、「現実なのだ」と訳しておいた。もちろん、現実になると訳した方が一般ウケするだろうし、文法的・慣用的にもおかしくはない。

   

ちなみに、ゴダード本人にとっての一番の「記念日」は、この演説の日ではなく、その5年前だったらしい。はしごを作って、木に登って、遠くを見たそうだ。はしごが、ロケットの比喩。木が、宇宙や星(火星とか)の比喩、メタファーだろう。

    

    

      ☆     ☆     ☆

なお、ゴダードのスピーチの全体は、夢は現実になるというような明るい話ではないようだ。むしろ、現実にするまでの大変な道のりに焦点を当ててるのだろうと思う。

  

実際、タイトルも、「On Taking Things for Granted」。普通に訳すと、物事を当たり前だと考えることについて。当たり前で済ませる発想が、エラーにつながるという考えもあったらしい。

    

ただ、このタイトルには、もう一つの意味が密かに重ねられてると思う。自分の夢は必ず現実になる。そんなの当然だ。この熱い人間的な思いこみは、新分野の開拓者にとって重要なのだ。もちろん、成功するとは限らないどころか、失敗の方が多いだろう。しかし、多数の失敗がやがて、革新的な成功につながる。

   

ただし、誰がいつ成功者として輝けるのか。それはなかなか分からない。神のみぞ知るとまでは言わないが、専門家でも予測困難だろう。「昨日の夢は、今日の悲観であり、明日の非現実となる」。これもまた、厳しくありふれた事実なのだ。

   

それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

      (計 1938字)

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戦場の男性(彼)への思いをのせた乙女の軍歌『カチューシャ』、ロシア語から英語への直訳で意味を解釈

一昨日(2023年2月23日)、NHK『ニュースウォッチ9』を流し見しながらPCをいじってると、冒頭から聞き覚えのあるメロディーが流れて来た。有名なロシア民謡だろうとは思うけど、曲名は分からない。

    

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ウクライナ侵攻1周年を前に、ロシアのモスクワでイベントが開かれて、「全員で戦地にいる兵士を思うロシアの有名な楽曲を合唱しました」。最後はプーチン大統領も登場、祖国と家族を守ろうと、檄を飛ばしたと。

  

産経新聞によると、このイベントは「祖国防衛の日」2月23日(祝日)の前日、22日にモスクワ中心部に近いルジニキ競技場で開催されたもので、若者向けのコンサートみたいな催しとのこと。

   

   

     ☆     ☆     ☆

有名なら曲名くらい出せばいいのに、西側の国営放送NHKとしては、悲惨な戦争と曲名を結び付けたくないということか。

   

マニアック・ブロガーとしては直ちに検索開始。Youtube動画で『カチューシャ』だと突き止めた後、歌詞の意味とか、髪飾り(ヘアバンド)のカチューシャとの関係とか、色々と調べることになった。

    

先に、ファッション用語としてのカチューシャについて簡単にまとめると、そもそも歌とは関係ないらしい。トルストイの小説『復活』のヒロイン、カチューシャの名前が、日本の舞台で演じた女優・松井須磨子の髪飾りと結びついたとかいうお話。

   

日本語のウィキペディアも含め、少ない情報が錯綜する中、最も信頼できそうなのは東京新聞の記事だろうか。とりあえず、今はこだわらないことにしよう。

    

    

      ☆     ☆     ☆

一方、歌詞の意味について。日本語のウィキは、もともと2番までしかなくて、ハッキリ戦争との関係を語る言葉はなかったと説明してるけど、何を根拠にしてるのか出典がついてないし、英語版ウィキにもフランス語、ドイツ語ウィキにも、そのような説明は見当たらない。

   

ここでは、4番までのロシア語を英語に直訳した(ように感じられる)歌詞の一種(ヴァージョン2)を参考に、私が日本語訳と感想を書いてみよう。世界中のサイトに各国語の歌詞が溢れてる100年近く前(1938年)の曲なので、著作権はあまり気にしなくていいと考える。

    

ちなみに、わりと有名な日本語の歌詞(関鑑子;り~んご~の花ほころ~び~・・)は、かなり意訳や省略が入ってるように思われる。特に、戦争とか兵士を思わせる言葉を全てカットしてるようだ。ある意味、非常に上手い和訳ではある。

    

   

      ☆     ☆     ☆

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 リンゴと梨の花が咲いた

 川には靄が立ち込めて来た

 彼女は川辺にやって来た カチューシャ!

 高い土手、険しい川岸に

   

 美しい故郷の姿と、霞(もや・かすみ)や高く険しい土手の対比が鮮明。もちろん、靄や土手は、遠くの厳しい状況を暗示する詩的表現。ちなみに、リンゴや梨の花が咲くのは春。桜の後くらいの時期らしい。

    

 彼女は歌いに来た

 若い友人 草原の青みがかった鷲のことを

 唯一 彼女が心から愛する人

 もらった手紙を大切な宝物にしてる相手

   

 2行目がちょっと変わった歌詞だけど、ロシア語で3行目に合わせて韻を踏んでるような気がする。青という色は、赤と共に国を表す色かも知れない。この記事冒頭のNHKの映像を参照。ロシアの国旗は、白・青・赤。青色は、名誉と純潔性を表すとのこと。

    

    

     ☆     ☆     ☆

 おぉ 少女の歌よ

 輝く太陽まで飛んで行け

 彼方の戦地にいる戦士を見つけて

 ずっと待ってるカチューシャの言葉を届けて

  

 4行目のカチューシャと訳した言葉は、カーチャ。どちらも、同じエカテリーナという名前を元にした愛称らしい。日本語なら例えば、まさこという名前を、まちゃこ、まこ、と略すようなもんだろう。

   

 彼が 若き乙女のことを思い出すように

 彼女がいま歌ってる声を届けて

 彼に 母国をしっかり守らせて

 愛は カチューシャが守るから

    

3番と4番は、この英訳で読む限り、いわゆる擬人法だろう。空高く飛んでいく歌声を、メッセンジャーみたいにとらえたもの。

  

手紙とかメールの類と違って、歌声は本人とつながったまま遠くに拡散する所が特徴的。短時間で消えてなくなる所も、人間的で切ない。。

  

   

      ☆     ☆     ☆

カチューシャの曲のウィキペディアは、世界51ヶ国の言語で書かれてる。それだけ普遍的な思いを乗せた名曲ということ。恋人や家族への思い、祖国への愛。政治・社会の態勢も、時代や人種も無関係。

       

いつ、どこでも、カチャーシャや彼が無数に存在してることは忘れないようにしたい。それでは今日はこの辺で。。☆彡

     

     (計 1827字)

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円盤型ロボット掃除機(ルンバ他)がイスの脚に閉じ込められる理由♪&岩穴に幽閉された『山椒魚』(井伏鱒二)

どうゆう記事タイトルだよ!♪・・と自分ツッコミしたくなるけど、元ネタと発想は twitter からお借りしたのだ。

    

最初の出会いは、itmedia・ねとらぼがYahoo!に配信した記事だけど、ここではまず、一番最初にバズった twitter を見とこう。「迷い込んでしまい、2度と出てこられなくなった友人の家のロボット掃除機が切なそうでした」。

   

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動画を見たい方は、元のツイートへどうぞ。ロボット掃除機が可哀想とかいうより、「実家が全焼した」方が遥かに気になる人もいるはず♪

   

一方、ねとらぼ的な軽いノリの面白タイトルだと、下のようになる。「なぜ、入れたw」「涙が止まらない」。絶対、涙は出てないはず(個人の感想・・笑)。

   

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     ☆     ☆     ☆

マニアックブロガーはウケた後、直ちにこの円盤型ロボットの機種を突き止めた♪ ルンバじゃなくて、Eufy(ユーフィー)のRobovac(ロボバック)だろう。バキューム(吸引)するロボットから付けてる、そのまんまの名前。後退という意味のバックではない。

    

さらに、物理的・数学的な考察も行ってみた。なぜ入れたのかというより、なぜ、入れたのに出れないのか?

   

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ここでは、4本脚の椅子で考えてみよう。図で4つの緑の丸点が、イスの脚を表してる。円盤ロボットも、複雑な自走はせず、単純に物理的に動くと考える。高校物理(力学)の衝突みたいに。

   

上図のように、円盤ロボットが真っ直ぐ真ん中に入って来れば、反対側へとキレイに通過できる。ゴミ集めはちょっと不完全だけど♪

    

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ところが、上図のように、4本脚の正方形に対して円盤が斜めに入って来ると、中で向こう側の脚に衝突する可能性が高い。1度ぶつかってしまうと、その後、何度かは衝突し続けるはず。電池切れになるまで動くのかどうかはともかく♪

   

五本脚のイスだと、もっと脱出しにくくなると思われるけど、証明は難し過ぎるので省略♪ あっ、これを数学論文にまとめれば、無駄な発明に与えられるイグノーベル賞を受賞できるかも(笑)

    

    

     ☆     ☆     ☆

元に戻って、ツイートの返信を流し読みしてると、マニアが笑えるものが1つあった。「小説『山椒魚』を思い出した」♪ いいねが1つしか付いてない辺りも、切なくて、いいね(笑)。ツイートの最後に丸(句点)が無いのも、味わい深い書き方。

    

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一部の国語の教科書にも載ってるらしい、井伏鱒二の短編代表作『山椒魚』。初出は1929年、雑誌『文芸都市』。著作権が切れてないから青空文庫とかで無料閲覧することはできないけど、アマゾン電子書籍の無料サンプルで読めることを発見♪ 表題作が無料。太っ腹だね、新潮社☆

   

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ちなみに、日本語ウィキペディアの「サンショウウオ」の項目は、青空文庫へのリンクを貼ってるけど、全く別の小説(北大路魯山人)なので念のため♪  

    

上の表紙のイラストからも分かる通り、生物としての山椒魚は、見た目が不気味な両生類。特に、作家の井伏がイメージしてたのは、巨大なオオサンショウウオらしい。近所で見かけたら魚(ギョ)っとしそうだけど、フツーのお魚(さかな)ではなくて、イモリの類。ちなみに、似てるけどヤモリとは別種らしい(細かっ・・)。

    

オオサンショウウオは、穴にもぐる生態がある。下は、広島市安佐動物公園の紹介記事より。

   

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      ☆     ☆     ☆

で、円盤型お掃除ロボットと小説『山椒魚』の何が似てるのか? 簡単にあらすじを書いとこう。内容のネタバレになるので、ご注意あれ。

    

山椒魚は、狭い岩屋(岩の穴の部屋)に入ってる内に、出れなくなってしまった。元々、出入り口が小さかったし、2年の間に身体が大きくなったのだ。特に、頭がつっかえてしまう。いくら頑張って試しても、外には出れない。

   

穴から外の世界(谷川)を眺めて悪態をついたり、嘆き悲しんだりしてる内に、山椒魚の性格は意地悪になる。そこへカエル(蛙)が1匹、岩穴に迷い込んで来たから、山椒魚は自分の頭で穴に栓をして、カエルが脱出できないようにした。カエルはあきらめて、穴の中の凹みに入り込む。その後はお互い、悪口の言い合い。

  

1年後、カエルがもうダメだと言うと、山椒魚は「お前はどういうことを考えているようなのだろうか?」とたずねる。カエルは答えた。「今でもべつにお前のことをおこっていないんだ」。。

    

    

      ☆     ☆     ☆

確かに、学校の国語の授業には手頃な作品だろう。生徒がそれぞれ色んな解釈をできるし、最後のオチも謎めいてちょっと面白い。

   

この最後の和解みたいな箇所を、晩年の井伏は削除してしまったらしいけど、その訂正に関しては、とりあえずスルーしとこう。

   

単なる動物の童話と考えても、ちょっとヒネリが効いてるし、途中の文章表現は流石に文学的になってる。例えば最後、カエルが歎息をもらす場面。他の誰にも書けない表現だろう。

  

それは『ああああ』という最も小さい風の音であった。去年と同じく、しきりに杉苔の花粉の散る光景が彼の歎息を唆したのである」。

   

川の穴に風は吹かないし、川の穴の中に花粉が散るとは想像しにくい。せいぜい、花粉が流れるとか漂うとかだろう。それでも、イメージのつなぎ方が美しい詩的効果をもたらしてる。

   

    

     ☆     ☆     ☆

もちろん、普通に考えれば、この話は哀れな人間たちのメタファー(比喩)。特に、自分の頭がつっかえて脱出できないというのは、文学者も含めて、頭でっかちな大人たちへの皮肉、風刺になってる。

   

自分の頭のせいで不幸になって、逃げ場がないから、他人まで引きずり込んで不幸にすると。ひょっとすると、作者としては、自分に否定的な評価をくだす批評家・読者たちへの不満もあるのかも。

   

しかし、それら全てが人間存在であって、しかもお互い、たかが数十年~百年の命。その後は、花粉みたいに小さな無数の粒になって世界に拡散するだけ。そう思えば、最期のひと時、微笑んでみんな許そうという気にもなる。

   

カエルが「今では」でなく「今でも」と語ったのは、最期の間際のキレイな嘘、やさしいウソだろう。本当はずっと、山椒魚に対して激怒して来た。巨大な敵をどうすることも出来ない、ちっぽけな自分にもずっと怒ってた。

    

でももう、すべて終わりなのだ。せめて、目の前にいる唯一の仲間とは、ケンカ友達みたいに笑ってお別れしたい。「今でも・・おこってはいない」というカエルに、人間の切なさ、愛しさを感じるのであった。

 

   

     ☆     ☆     ☆

なお、お掃除ロボットのAIが進化したら、椅子の脚に対して怒るかも♪ 「ジャマだよ! どけよ!」とか(笑)。実際、似たような話は既にITの世界で色々とあるらしい。つい最近も、Microsoftの新検索システムの不適切発言が叩かれてた♪

   

まあ、人間もAIも、山椒魚やカエルと似たようなものだろう。有限の事物に幸いあれ♪ そう言えば、穴から出れないといえば、『アルジャーノンに花束を』の原作記事で話題にしたプラトン「洞窟の比喩」もそうだね・・っていうのは、美青年ファンへのご挨拶だったりする♪ あれからまだ8年しか経ってないのか。

   

最後は唐突に、天皇陛下、お誕生日おめでとうございます♪ それでは今日はこの辺で。。☆彡

     

      (計 2905字)

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梅崎春生『飢えの季節』(23共通テスト)、全文レビュー~戦後の日常・欲望・幻想をユーモラスに描くエッセイ私小説

いきなり個人的な話で恐縮だが、私は市民ランナーなので、ダイエットが必要になる。しかし、ずっとストイックに我慢するのは難しい。昨日も、昼食は抜いたが、夜になって小説の全文を読みながら一気に3食分も食べてしまった。

     

・・・というのは自虐的な軽口で、私に関する事実だ。食べてるだろ!、我慢してないだろ!、とか突っ込みたくなる。2023年・共通テスト・国語・第2問で扱われた梅崎春生(うめざき・はるお)の短編小説「飢えの季節」も、基本的にはそういったトボけた内容なのだ。

     

例えば去年の共通テストの黒井千次『庭の男』みたいに、全文を読むともっと小説らしい異常で劇的なものが描かれてるのかと予想してたが、全く違ってた。最初から最後まで、微笑を誘うような軽妙なエッセイ調の文章が続く。

   

ただ、これが単なるエッセイとかコラムではないのは、長くて詳細な描写で、最低限の一貫した物語(ストーリー)があって、やや分かりにくい非日常的な文学的表現も含んでるから。ストーリーとは、新しい職場に入って辞めるまでの、飢えと食べ物を中心としたエピソードの流れ。

    

   

     ☆     ☆     ☆

それでは、全文を簡単にレビューして行こう。批評というより、文字通りのレビュー、見直すこと。ネット上に(ほとんど)見当たらない正確な書誌情報を含む、長めの個人的感想。

      

私が使ったのは、小説の初出の雑誌である『文壇』第2巻・第1号(前田出版社、1948年・昭和23年1月)と、『梅崎春生全集・第2巻』(沖積舎、1984年・昭和59年)。雑誌は、国立国会図書館デジタルコレクションのデジタル画像でネット閲覧した。

  

なお、共通テスト実施直後の1月15日に、問題文などに関する記事はアップしてある。ただし、その時点では、小説全体の終盤の5分の1しか読んでなかったことになる。

      

 誰が、何に、どれほど飢えているのか?~梅崎春生『飢えの季節』(初出『文壇』2巻1号、2023年・共通テスト・国語)

    

   

     ☆     ☆     ☆

まず、国会図書館のサイトで検索してもなかなか到達できなかった、掲載雑誌の小さなサムネイル画像をお見せしよう。なぜか、この号の画像だけ表示しにくかったが、出版社名を入れて検索し直すとようやく出て来た。

  

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これだけ小さい画像だと全く見えないが、実はこの表紙には、鉛筆らしき書き込みがある。数字と英語で、意味不明。それだけを見ても、かなり限られた読者層を対象にした文芸雑誌だろうと想像できる。戦後の混乱期だから、紙にも不自由して、メモ代わりにしたのかも知れない。

     

雑誌の価格は2円。小説本文の記述と合わせると、現在の貨幣価値なら100倍~200倍、200円~400円くらいだろうと推測。現在の文芸雑誌より安いのは、中身が少ないからと考えれば納得しやすい。

   

最後の編集「後記」には、「創刊以来始めての創作特集」と書かれてた。細かい話だが、「初めて」ではなく「始めて」。当時の漢字の使い方だろうか。後記の最後に、「最近の出版事情の不振」とたたかうと宣言してるが、残念ながら2年間しかもたなかったようだ。2年も頑張った、と言うべきかも知れない。

     

最後の後記と出版情報までで、全体は81ページ。梅崎の小説は、60ページから80ページまで、21ページ。最初だけ、原友木(はら・ともき)によるカット(イラスト・挿画)が付いてる。可憐な花の絵で、主人公の「私」が住んでる田舎のイメージだろうか。「私」自身は、その花に似た感じはしない。画家自身は、名前で検索してもなかなか情報がヒットしなかった。

    

前の記事で指摘しておいた通り、雑誌の目次では、「飢の季節」と書かれてる。「飢え」でも「飢ゑ」でもなく、「飢」。ただ、なぜか本文の冒頭の題名は「飢ゑの季節」になってた。正確には、「飢」と「節」は旧字の漢字。作者名の「梅」も、右下が「母」になってる字体。

   

後の全集では、中盤の235ページ上段から255ページ上段まで。偶然なのか必然なのか、雑誌と同じく全21ページとなってる。ただ、ページごとの内容・区切り方は違ってたから、完全に合わせてるわけではない。内容が一字一句、一致してるのかどうかはチェックしてないが、ほとんど同じなのは間違いない。漢字の字体は違ってる。

   

   

      ☆     ☆     ☆

続いて、小説全体の内容について。共通テストの問題文冒頭では、「第二次世界大戦の終結直後、食料難の東京が舞台である」と書かれてる。間違いではないが、ややミスリーディングな(誤解を招きやすい)説明だと思う。というのも、食料自体は一応あるからだ。

      

戦争で食べ物が不足してるのは事実だが、主人公の「私」の周囲にはかなりの食べ物やお店がある。どこにも食べ物がなくて焼野原をさまよい歩くイメージとは全く違う状況なのだ。

  

では、なぜ彼は「いつも空腹」(問題文冒頭の説明)なのか。それは、食べ物を買うお金が無いからなのだ。私は前の記事のタイトルに、「誰が、何に、どれほど飢えているのか?」と書いた。主人公は、確かに食べ物に飢えてるが、その原因はお金が無いから。お金に飢えてるのだ。

    

その意味では、主人公の飢えに、戦争は直接的には関係ない。お金が無くて食べ物を買えない状況は、21世紀・令和の現代日本でも少なからずあることだ。特に去年(2022年・令和4年)からの物価高騰は、格差社会の下側の食事に深刻な影響を与えてる。

   

   

      ☆     ☆     ☆

では、なぜ主人公「私」にはお金がないのか? もちろん、戦後だから困ってる人は非常に多かったはず。仕事や職場も、無くなったり、制限させたりしただろう。

  

「復員後ただちに上京してみると、私がつとめていた会社のあたりは焼野原になっていて、焼け残ったくさむらの中で蟋蟀〔こおろぎ〕がないているだけであった。社はどこに行ったのか判らなかった。こんな具合で私はうやむやの中に失業したのであった」。

  

これが筆者・梅崎の事実なら、会社は東芝ということか。検索をかけると、確かに東芝(当時は東京芝浦電気)の主力工場が戦争末期の空襲で壊滅的な被害を受けたという情報がヒットする。

    

  

      ☆     ☆     ☆

しかし、小説を読む限り、もしその気になれば、お金の問題はそれなりに何とかなりそうな感じなのだ。まず、上京してアパートを借りるだけでもお金を持ってたことになるし、新聞も読んでて、給料をもらう前から片道2時間の電車通勤を続けてる。多めの交通費は持ってるらしいのだ。往復の交通費だけでも、1食分か2食分の食費にはなるだろう。

   

そして決定的なのは、「失業したのであった」と書いた直後に一言だけつぶやいてること。「そして二箇月ばかり売り食いしてあそんだ」。あそんだのか!、と突っ込みつつ、私はつい笑ってしまった。この辺り、明らかにウケを狙った流れを作ってる。さんざん事細かく、飢えの苦しみを書いた後、

  

「失業したのであった。そして・・・あそんだ。だから金銭的な意味では、私は貧窮の底にいたのだ」。

  

漫才のボケのような言葉のつなぎ方になってる。横の相方が、「あそぶなよ!」と突っ込む所だろう。

   

この独特のボケの流れは、肝心の食事の描写にもある。彼の表現だと、「一食」というのが僅かな量の食事で、「二食」「三食」が沢山の量らい。職場近くの食堂で1ヶ月に食べる全体量は、「登録票」で決まってるから、自分はいつも一食だけで我慢して空腹だ。そう強調しつつ、よく読むとこう書いてる。どうもやっぱり、もっと食べてるような気もするのだ。  

     

「私はこらえきれなくて、二食分を買って食べたこともしばしばあったのだ。しかしそうすれば、必ず昼か晩を抜かねば勘定があわぬ筈だった。それがどんなに辛いことであるか、私自身が一番よく知っていた。だから歯をくいしばっても一食分なのであった。このきびしい戒律を自分に課しているつもりでいても、私の登録票はいつも先の日までくいこんでいたのである」。

   

この話を現代の女の子のダイエット話に直せば、こうなるだろう。「ダイエット、きつ~い! 我慢できなくて、やっぱ食べちゃうこともあるんだ。でもそれだと体重が増えちゃうから、必死にいつも我慢してるわけ。まあ、結局、体重は増えてるんだけどね」。

     

食べてるだろ!、と突っ込みたくなる。実際、登録票の一ヶ月分を早めに食べきったとしても、どうも逃げ道が色々とあるようなのだ。まず、遥か遠くの食堂に行かなくても、家主からまとめ買いして自宅に備蓄してる芋を食べれば済むらしい。

  

15円で1貫目(3.75kg)。150倍すると2250円だから、今現在(令和)の値段とほぼ同じ。たまにはタダで芋を御馳走してもらえることもある。家主の保守的で反共産主義的な話に相槌を打つだけで。「私はひとかけらの芋のために、思想をすら売りわたしたといってもよかった」。この言葉、文脈的には全く重みがない。おそらく誇張表現で笑いを誘ってる。真面目な左翼、共産主義者でもないはず。

     

実際すぐ後で、自分(梅崎春生)の先輩にあたる作家T・Iに対する主の悪口にも話を合わせると書いてた。「やはりひとかけらの芋のために、私は芸術家のたましいも売りわたしてしまったものらしかった」。

  

これはもう明らかに、文芸仲間に向けた大げさなジョークだろう。当時の読者はみんな、T・Iが誰なのかも分かるから、余計に笑えるのだ。おそらく、稲垣足穂(いながき・たるほ)。雑誌の目次の右側に、著作『桃色のハンカチ』の広告まで載ってる(序文は江戸川乱歩)。

  

有名な先輩に対する悪口に相槌を打ちつつ、タダで呑気にイモを食べてる梅崎のとぼけた姿を思い浮かべて、読者は微笑むのだ。T・Iに対する主の悪口も過激。「もっとも役に立たぬ人間」、「あんなのが芸術家だというんかね」、「読んだことはないけんど、どうせろくな小説じゃあんめえよ」。

  

ちなみにT・Iは、「私」の前の住人で、食事付きの恵まれたアパート契約。それに対して、「私」は食事なしの貧しい契約。T・Iでさえバカにされてるということは、私はもっとバカにされてることをも意味してるのだ。この辺り、よく読むと、自虐的なユーモアに満ち溢れてる。

    

話を食べ物の調達に戻すと、芋もあるし、芋を買うお金もある。さらに本当に困ったら、家主の芋を盗むとか、近くの柿を盗むこともできて、実際たまにやってるのだ。盗みに、やり切れない感じがあると言いつつ、深刻な反省は感じられない。というのも、内心の葛藤や苦悩の何倍も、盗んだ食べ物の魅力を書き連ねてるから。

  

泥棒の話の最後も、明らかにふざけた文章になってる。柿の持ち主が、最近、柿が誰かに盗まれてるという話を「私」にするのだ。「『あんたもな、そんな奴めっけたら、遠慮なくしょょぴいて呉んろよな」(注.原文のまま) 私はだまってうなづいた。うなずくより手がないではないか。私はそのとき、お猿みたいにまっかな顔をしていたに違いないのだ。」。

  

反省というより、ヤンチャしたネタを武勇伝にして面白おかしく話してる印象だろう。

    

   

      ☆     ☆     ☆

結局、食べ物に飢えてるのは、お金がなくて、お金に飢えてるから。しかし更に、なぜお金に飢えるのかというと、小説の内部には書かれてないことが原因だろう。既に酒を飲んでカロリー摂取してる可能性もあるが、そこは時期的に確認できてないので保留しておく。

     

それより、この小説自体も含めて、小説の執筆に時間と労力をかけてるからだと思われる。準備となる長い空想も含めて。辞めるまでに会社で働いた期間は短いし、通勤時間を除けば、勤務時間も短め。日曜もヒマ。そもそも、会社に入るまでは遊んでるし、会社もすぐ辞めてる。

    

ということは、創作も含めて、空想・虚構・フィクションに飢えてると考えることも可能。実際、この小説には空想・夢想・幻想の類が最初から散りばめられてるのだ。冒頭、朝の目覚めの描写はこうなってる。起き上がる前に空腹で目覚めて、布団の中で色々と思い浮かべてるらしい。

  

「もはや眼覚めたそのときの私の想像に入ってくるものは、先ず白いご飯にあたたかい味噌汁をそえた朝食の幻想であった。・・・ごはんはつぶつぶに真珠のように光っていた。・・・豚肉の煮たものや秋刀魚の焼きたて。・・・鰻の蒲焼・・・」。

  

一連の空想が終わっても、またすぐ始まる。「乳首を唇から外した幼児のように、私はあわてて次の聯想の乳房にしゃぶりつく。また新しい知が湯気や匂いをたてながら、私の幻の食卓に置かれるというわけであった」。

   

  

     ☆     ☆     ☆

具体的な食べ物の空想を見ても、どうも彼はわりと美味しい物を選んでるような感じで、何でもいいからとにかく空腹を満たしたいという感じでもないのだ。「美味しい食べ物」に飢えてる。それは、小説執筆についても言えることだろう。美味しい小説を書きたい。だから実際、この小説も美味しい内容になってる。戦争の悲惨さや残酷さよりも、平凡な市民の食欲の欲深さ。

     

なお、上の乳首の表現の他にも、性的な表現が2ヶ所ある。「食物の幻想のオナニー」。「しょっちゅう見かける顔のひとりに二十歳位の若い女がひとりいて・・・いつも青いもんぺを穿いていたが、どういう訳かそれが少し破れていて、下着をつけていないのか裸の尻の一部分がむき出しにのぞかれた。いつまで経っても縫う気配もなかった」。

      

精神分析的に、性的欲望を中心に解釈し直すことも可能かも知れないが、さすがにこれだけでは素材が足りないだろう。美味しい性的対象に飢えてるというのも難しい。ただ、まだ若い男性の一人暮らしだから、女性に飢えてるという側面は十分あるはず。

  

少なくとも、悲惨な戦争でみんな食べ物が無くて飢えに苦しんでた・・というような悲しい歴史とは程遠い、軽い語り口の滑稽な小説だった。人によっては、あまりに悲惨だからこそユーモアでまぎらわせるしかなかったと受け取るのかも知れないが、この作品に限っては、日常のユーモラスな観察・表現の方が本質だろう。別の作品なら、戦争の生々しい話も色々と書いてるとの事。

    

   

     ☆     ☆     ☆

いつの間にか6000字も書いてしまったので、もう終わりにしよう。なお、私が一番笑ったのは、職場の先輩の女性・長山アキ子との英語論争。アキ子は「わざわざ自宅から物すごく大きな英和大辞典を・・・あの満員電車にもまれながら抱えて来」て、私を言い負かしたらしい。

   

東大卒の作家の梅崎を力づくで言い負かす、大辞典持ち運び女。これまた只者ではないし、大辞典を買うだけのお金は確保してたのだろう。弁当は「小さな芋のきれはしだけ」で我慢しつつ、争議のリーダーになって会社を解雇されるような側面も持ってた。

  

ともあれ、今日のところはこの辺で。。☆彡

    

       (計 5944字)

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パズル「漢字抜け熟語」の解き方2、三字・四字・五字熟語(難易度5、ニコリ作、朝日新聞be、23年1月14日)

☆23年5月8日の追記: 最新記事を別にアップ。

  朝日be漢字抜け熟語(四字)のヒント、手紙末尾の「草草不一」の意味・由来とか )

   

   

    ☆     ☆     ☆

朝日新聞・朝刊、土曜別刷beのパズル(ニコリ作)については、今まで多数の記事を書いてますが、「漢字抜け熟語」については5年前(2017年)に1本書いただけでした。

    

ところが、一昨日(2023年1月14日)から今日にかけて、その昔の記事にかなりの検索アクセスが入ってます。そこで問題を見ると、なるほど、言葉の数も多いし、内容も難しいですね。

   

私は、ネット検索を100回くらい使って解きましたが、1時間半くらいもかかってしまいました。引っかけみたいな落とし穴も、いくつも入ってます。もう丸2日、経ってますが、せっかく解いたので、久しぶりに記事にしときましょう。

    

   

      ☆     ☆     ☆

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上図が今回の問題。著作権を守るため、わざと読めないくらいに縮小してます。横に7個、縦に9個並んでるので、全部で63コも漢字の熟語が並んでます。しかも、漢字が1つも書かれてない熟語も21コあるので、確かに難易度5(☆☆☆☆☆)のパズルでしょう。

   

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上は、私が解いた様子。文字は読めないでしょうが、すべて赤い字で書き込んでるのが分かると思います。何ヶ所か、間違って訂正してるのも分かるでしょう♪ 四字熟語の「〇〇四〇」と、五字熟語の「〇〇〇〇郎」は、思い切り間違えて、ムダな時間を使うことになりました。

   

  

     ☆     ☆     ☆

解き方は色々ありますが、ここでは右下から始めてみます。右下の2つは、五文字の内、三文字が分かってるから、解きやすいのです。

  

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まず、「46 家 52 務員」。つまり、〇家〇務員の形の五字熟語。これはもう「国家公務員」で決まり。46 の漢字は「」。52 の漢字は「」。

  

その上は、「水 25 両用 40」。つまり、水〇両用〇の形の五字熟語。これは「水陸両用車」か「水陸両用機」のどちらかなので、25 の漢字は「」ですが、40 の漢字は「車」か「機」のどちらか分かりません。引っかけ問題の1つ。

   

   

     ☆     ☆     ☆

ここで、46の漢字が国だと分かってるので、少し左上にある四字熟語「2 間 46 宝」(〇間〇宝)も分かります。〇間国宝だから、人間国宝。ということは、2 の漢字は「」。

  

ここでもう、応募用の答の漢字(1と2)の内、片方が分かったので、カンのいい人なら 1 の漢字も気付くかも知れません。新春特集のパズルだから、1 と 2 で出来る二字熟語はおそらく、新年らしいものでしょう。

   

でも、やっぱり全部、解きたい人が多いはず。そうすると、次に分かりやすいのは、すぐ上の「59 25 移 39 説」。25は陸だから、〇陸移〇説。この五字熟語は、大陸移動説ですね。だから、59 は「」。39 は「」です。

   

この次にすぐ分かるのは、右上の「52 民権 17 39」(〇民権〇〇)。ただ、このサイトではなるべくネタバレにならないようにしてるので、いつものように、ここでしばらく記事を中断します。

    

次の更新(アップデート)は、今日(16日・月曜)の夜の予定です。ではまた後で。。

    

  

    ☆     ☆     ☆

はい。夜になったので、少し先に進みます。52 は公、39 は動だから、右上は公民権 17 動。公民権運動ですね。だから 17 は「」。

  

また、左下の三字熟語「52 31 書」(〇〇書)は、公〇書だから、おそらく公文書。たぶん 31 は「文」でしょう。これだけだと間違ってるかも知れませんが、右側の五字熟語を見ると合ってることが分かります。

   

31 20 高島 26」(〇〇高島〇)。31が文だとすると、文〇高島〇。文金高島田ですね。和装の花嫁さんの髪型。だから、31 は「文」で決定。20 は「金」26 は「」です。

  

さらに、左上の三字熟語「部 50 39」(部〇〇)は、部〇動だから、おそらく部活動。だから、おそらく50 は「活」です。

  

試しにそう考えてみると、右下の五字熟語「35 者復 50 13」は、〇者復活〇。敗者復活戦ですね。ということは、50 は「活」で決定。35 は「」、13 は「」。

  

今日はこのくらいで止めときましょう。次の更新は、明日(火曜)の夜の予定です。ではまた。。

   

        

      ☆     ☆     ☆

では、火曜の夜になったので、もう少し進みましょう。敗者復活戦の少し左上の四字熟語「35 13 投 38」(〇〇投〇)は、敗戦投 38 なので、敗戦投手。38 は「手」です。

   

また、敗戦投手の右の「35 北 30 義」(〇北〇義)は、敗北〇義なので、たぶん敗北主義でしょう。だから、おそらく 30 は「主」

 

その予想が正しいなら、左下あたりの三字熟語「30 1 分」(〇〇分)は、主 1 分になります。ところで、応募用の答は「1 人」で、新春に関係するもの。これでかなり 1 の漢字が分かりやすくなってますが、ここでは保留しときましょう。

  

右側の五字熟語に戻ると、40 は「車」か「機」でしたが、右上あたりに「40 能 51 57 品」(〇能〇〇品)と書いてます。「車能」という言葉はないので、「機能」でしょう。だから 40 は「機」。そして、その熟語は機能〇〇品。たぶん機能性食品だから、おそらく 51 は「性」、57 は「食」でしょう。

   

まだ少しアクセスが続いてるので、明日(水曜)の夜、もう少し書き足すことにします。ではまた。。

    

   

     ☆     ☆     ☆

はい。水曜の夜になったので、最後の更新をします。敗北主義の下の「17 否 6 賦〇否〇賦)は、運否 6 賦だから、検索すると、運否天賦が見つかります。6 は「天」

   

また、左下の三文字「40 48 57」は、機 48 食(機〇食)だから、たぶん機内食。おそらく 48 は「内」

   

最後に、左上あたりの「4 合 13」(〇合〇)は、〇合戦だから、たぶん雪合戦。おそらく 4 は「雪」でしょう。そう考えると、人間国宝の上の4 見障 19」は雪見障〇だから、雪見障子だとわかります。だから 4 は「雪」19 は「子」

   

このくらいでもう止めときます。完成した表を1から順に見ると、なるほど・・と思うでしょう。これも実はヒントです♪ それでは、この辺で。。☆彡

   

   

P.S. 23年3月4日の漢字抜け熟語(難易度4)のヒントは、春は眠いということ♪

      

       (計 2401字)

   (追記106字 ; 合計2507字)

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誰が、何に、どれほど飢えているのか?~梅崎春生『飢えの季節』(初出『文壇』2巻1号、2023年・共通テスト・国語)

☆追記: 小説全体を読んだ感想記事を別に新たにアップした。

 梅崎春生『飢えの季節』、全文レビュー~戦後の日常・欲望・幻想をユーモラスに描くエッセイ私小説 )

   

    

    ☆     ☆     ☆

10年ほど前から、センター試験(現在は大学入学共通テスト)の国語の記事(特に小説関連)を書き続けて来た。

   

その中でも、アクセス数や熟読者数が多い記事が2種類、4本ある。去年(2022年)の黒井千次『庭の男』の記事(試験記事全文レビュー)と、18年の井上荒野『キュウリいろいろ』の記事だ(試験記事全体レビュー)。

      

この2つの小説には共通点がある。普通に問題文だけを読むと正直、あまり面白くはない。前者は変な話で、後者は平凡にも見える。しかし、小説全体を読んだり、深く読み込んだりすると、非常に興味深いのだ。ポイントはどちらも、小説の題名に表れてる。

    

「庭の男」とは誰で、何者なのか? なぜ、庭にいるのか? 「キュウリ」とは何のメタファー(比喩)で、「いろいろ」とはどんな種類なのか? もちろん、そうした考察・分析は、大規模の受験のレベルを超えたものになる。センターや共通テストでは、当たり障りのない「普通」の答を素早く求める力が求められてるのだから。

    

そして、その「普通」とは、基本的には出題者や学校・塾・予備校の教師が決めて、それを素直に学んだ生徒が繰り返していくことになる。コピペ的な再生産。しかしそもそも、小説とか小説家というものは、普通の枠を大幅にはみ出したもののはずだ。

   

その典型が、去年の小説。問題ではカットされたり、スルーされたりしてたが、実は、特殊な性の問題が小説全体で展開されてたのだ。その刺激的な部分を取り除いたのが、試験問題と正解になってた。

  

ちなみに問題・正解・分析は、河合塾の速報ページより。どの予備校・マスメディアでも、夜遅くの22時過ぎになって、ようやく公表。

    

    

      ☆     ☆     ☆

今回の小説「飢えの季節」も正直、普通に読むと面白くはないし、目新しさもない。ロシアがウクライナへ侵攻している現在、戦争の悲惨さを具体的に語ることは教育的に重要だろうが、それだけでは小説独特の価値には届かない。

   

これは私の「個人の感想」というより、かなり多くの感想だろう。ツイッターのネット民たちも、盛り上がってないのだ。せいぜい、主人公の「私」は女性かと思ってたら、実は男性だった・・とかいう感想が目につく程度。

     

戦争または敗戦の直後、食べ物その他、極度に飢えた主人公が、入社後に「夢」を語ってしまって挫折。退職して、新たな生き方へと向かう。問題文の切り取り方や設問、正解から考えると、出題者サイドは、夢や「新たな生き方を模索しようとする気力」(問6)を強調したいようにも見えるが、おそらく元の小説全体は、その逆の内容だろうと想像する。

    

   

      ☆     ☆     ☆ 

例えば、問題文の中央の一文。「・・・ただ一食の物乞いに上衣を脱ごうとした老爺。それらのたくさんの構図にかこまれて、朝起きたときから食物のことばかり妄想し、こそ泥のように芋や柿をかすめている私自身の姿がそこにあるわけであった。こんな日常が連続してゆくことで、一体どんなおそろしい結末が待っているのか。それを考えるだけで私は身ぶるいした。」

   

唐突に現れた、不気味な感じの老爺は、去年の小説なら、庭の立て看板の男(庭の男)に似てる。それは、自分自身の暗い闇の部分を、強調して可視化させる外的存在なのだ。内部の極端な投影としての現実。共同便所の横のうすくらがりで、寒いのに外套もなく、汚れてやせ細った身体で必死に食べ物にすがりつこうとする人間。「人間というより一枚の影」。

   

金儲け主義の会社を辞めた後(問題文の最後)も、「勇気がほのぼのと胸に」と書いた直後、会社についてこう書いてた。「曇り空の下で灰色のこの焼けビルは、私の飢えの季節の象徴のようにかなしくそそり立っていたのである」。

   

そう。会社を辞めた所で、悲惨な現実は目の前に「かなしくそそり立って」いるままなのだ。自らの無力さを感じさせる、強大な負の秩序として。

   

その強大な壁みたいな限界は、自分の中にもあるかも知れない。夢見ることさえ不自由なほど。あるいは、不自由すぎて僅かな夢を見ることしかできないほど。

    

問題文にある夢は唯一、「緑地帯には柿の並木がつらなり、夕昏散歩する都民たちがそりをもいで食べてもいいような仕組」のみだった。空腹で柿を勝手に食べても捕まらない社会。この夢が「都民の共感を得ない筈は」ないと思いこんでたら、会社では散々の悪評。「ただただ私は自分の間抜けさ加減に腹を立てていた」。

    

なお、これがどの程度「私小説」的な実話を含んでるのか分からないが、作家(著者)もあまり夢や勇気に満ちたリアルライフには見えない。「58年ごろからの心身不調に加えて過度の飲酒による肝硬変のため」、50歳で死去。年齢だけ見るなら、ほぼ当時の男性の平均寿命と思われるが、死に方が気になるところだ。アルコールへの飢えは、別の欲望の歪曲だろう。

    

    

      ☆     ☆     ☆

おそらく、小説の全体を読むと、底なしの暗さがさらに確認できると思うので、今年も後ほど別記事で全文レビューを書こうと思ってる。今日は全文が手元にないし、今週は既に制限字数15000字をかなりオーバーしてしまったので、もう止めよう。

       

なお、小説の初出の信頼できる情報がほとんど見当たらないし、問題文には「一九四八年発表」と書かれてるだけだが、おそらく、雑誌『文壇』第2巻・第1号(1948年、前田出版社)だろう。

     

原題は、「飢の季節」らしい。「え」がないし、旧字を使った『飢ゑの季節』(大日本雄弁会講談社)でもない。雑誌の最後に掲載されてることもあり、元のページ数は不明だが、短編小説なのは確実。

   

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マイナーで短命、同人誌的な文芸誌なので、極端にデータが少ない中、他の号の非常に小さいカラー写真なら国会図書館が掲載してた。古書店の一部で扱ってるらしい。

   

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ともあれ、おそらくまた1週間か2週間後くらいに記事を書く予定。今週は計16402字で終了。ではまた来週。。☆彡

 

   

  

cf. 黒井千次『庭の男』全文レビュー~居場所も力も失った高齢男性(家の男)の不安と性的倒錯(窃視症)

 看板の視線への対人恐怖、軽い社交不安障害+限局性恐怖症か~黒井千次『庭の男』(22年・共通テスト・国語

 フィクションとしての妖怪娯楽と、フーコー的アルケオロジー(考古学)~香川雅信『江戸の妖怪革命』(21年・共テ・国語)

 妻、隣人、そして自分・・戦争をはさむ死の影のレール~原民喜の小説『翳』(2020年センター試験・国語

 妻と再会できた夜、月見草の花畑~上林暁『花の精』(2019センター試験・国語)

 自転車というキュウリに乗って、馬よりゆったりと♪~井上荒野『キュウリいろいろ』(18センター国語)

 「春」の純粋さと郷愁が誘う涙、野上弥生子『秋の一日』~17センター国語

 キャラ化されない戦後の人々、佐多稲子『三等車』~16センター国語

 啓蒙やツイッターと異なる関係性、小池昌代『石を愛でる人』~15センター

 昭和初期の女性ランニング小説、岡本かの子『快走』~14センター

 幻想的な私小説、牧野信一『地球儀』~13センター

 鷲田清一の住宅&身体論「身ぶりの消失」~11センター

    

      (計 2913字)

   (追記79字 ; 合計2992字)

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兵庫・西宮神社「福男」選び(福女も可)、一番福の境内230m走タイムは27秒前後か&高心拍15km走

(9日)RUN 15km,1時間14分01秒,平均心拍 148

消費エネルギー 690kcal(脂肪 145kcal)

  

昨日(2023年1月10日)の朝、ネットでYahoo!にアクセスすると、ランキングの上位に「福男」関連の記事が並んでた。

  

コロナ禍の中止を挟んで、3年ぶりの開催。下は神戸新聞HPより。早くもぶっちぎりの先頭になってるのが、今年の福男(一番福)。スタート直後に大きな差が開いてるのは、おそらく扉が両側に開く箇所の真ん前にたまたま並んでたということだと思う(未確認)。同時スタートの陸上競技だと、あり得ない。

     

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兵庫県の西宮神社、「開門神事 福男選び」。日本人なら一度は映像を見たことあるだろう。私も、元・陸上部で今でも市民ランナーだし、瀬戸内海出身だから場所的にも親近感がある。父親譲りのお祭り人間でもあるから、自分でも走ってみたいな・・と思ってた。

  

しかし、試しに調べてみて、あっさり諦めた♪ あの赤い門の向こう側、最前列に並ぶまでの道のりが大変すぎるのだ。抽選であそこに並ぶ確率が非常に低いし、運良く当選しても、前夜から早朝6時頃まで寒い中で待つ必要がある。抽選に参加すること自体が先着と書いてるから、ほぼ半日がかり。下は神社の公式サイトより。 みんな、徹夜なのか、近くで仮眠するのか。

    

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とにかく、陸上短距離のレースに出る方が遥かに簡単らしい。日本選手権の方が簡単かも(笑)。そうなると、境内230m走の優勝タイムも気になって来る♪ まずは、福男競走の様子を見てみよう。NHK『ニュースウォッチ9』の映像より。

  

  

    ☆     ☆     ☆

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「祝復活 全国に福よ届け」。しっかりカメラにアピールして、神社にも賽銭・・じゃなくて福が届くと♪

 

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コースだけは再び神戸新聞より。最初の緩い右折(てんびんカーブ)はいいとして、後半の二つの曲がり角がきついし、角と角の間でクスノキが障害物になってる。

    

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この門をギリギリまで閉じておくスタッフさん達(神職、禰宜)、参加者より逃げ足が速いかも♪ 全力で逃げて、その後から参加者が飛び出してるから、参加者は自力で手で押して開けるということか?

  

  

     ☆     ☆     ☆

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「福男道」を独走する大阪商業大学4年生、植本亮太さん(22歳)。硬式野球部で、50m走は5秒9の俊足。高校では甲子園出場(明石商)。部のユニフォームは、カメラを意識したコスプレか♪ 体型的にも、長距離じゃなくて短距離向き。

  

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「審判の楠」、マジで危ないと思うけど、衝撃吸収のクッションが向こう側に巻かれてるのかね? 待ち構える報道陣も大変。

  

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ストライド(歩幅)が大きいし、手の振りもダイナミック。コーナーの内側、最短距離のコース取り。

  

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最後まで全力疾走。ゴール後は、可愛い巫女さん・・じゃなくて、男性の神職に身体を受け止められてた♪ この係をイケメンにすれば、福女ねらいの女性が増えるかも。

   

応募要項には男性のみとか女性不可とか書かれてないし、過去、実際に女性も挑戦してた(ネット画像が複数ある)。ただ、走力には男女の差が1割ほどあるから、福男になった福女はいまだにいないらしい。ちなみに、後ろには延々と参加者が続いてて、NHKのレポーターものんびり走ってた♪ 抽選なしの人の方が多くて、合計だと約5000人。

  

   

     ☆     ☆     ☆

で、ここまでスクロールして読み飛ばして、タイムだけ探してるあなた♪ もちろん(?)公式記録は無いし、関係者による30秒とかいう非公式発言があるだけ。

 

ただ、わりと信頼できそうな情報源が朝日新聞デジタルにあった(2017年)。二番福、三番福の実績を持ってて、現地で練習(笑)まで積み重ねてる地元の男性(甲子園出場)が、「27秒」という数字を挙げてる。

     

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これは、200mや300mの陸上日本記録と比べても、納得できるタイムだと思う。要するに、陸上トラックでの日本一の速さ(約23.5秒)にはかなり負けるけど、石畳の境内では一番になれるタイム。下は日本陸連HPより。

     

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ちなみに私は、400m走なら58秒で3回ほど走ってるから、30秒くらいなら出せると思う(高校時代なら♪)。でも、既に高校を卒業して数年経ってるから(笑)、やっぱり止めとこう。ゴールの抱き止め係がレースクイーンになったら、考えるかも ♡

  

  

           ☆     ☆     ☆

また意外と長くなって来たから、最後は一言だけ。長距離の小市民ランナーの一昨日は、15km走。厚底カーボンシューズで往路から飛ばし過ぎたからか、心拍だけやたら高くて、スピードはいまいち。頑張ったのに、トータルでは1km4分56秒ペースに留まった (^^ゞ 目標の4分半が遠い。。

  

気温7.5度、湿度75%、風速1.5m。新・心拍計は正常に作動。最大心拍161は久々の高さ。グラフの大きな落ち込みは、信号待ち。

   

珍しく、ちょっと厚手のウェアを上に着てみたら、序盤から暑くて困った(半ば言い訳♪)。それでは、また明日。。☆彡

   

  

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           平均心拍 最大

往路(2.4 km) 12分38秒 133 144 

LAP 1(2.1) 10分37秒 146 152

  2   10分21秒 151 155 

  3   10分27秒 152 155 

  4   10分22秒 154 157

  5   10分08秒 155 160 

復路(1.9)   9分29秒 151 161

計 15km 1時間14分01秒 148(87%) 161(95%)

    

      (計 2165字)

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