冬(寒い日)にスマホの電源が急に落ちる物理的な理由・原因~電池の内部抵抗が増加、端子電圧が降下、保護回路が作動

今週は5日間で13800字近くも書いてるから、残り2日で1200字 (^^ゞ 僅かな字数で中身のある事を書くには、数式が便利。

   

最近、スマホやタブレット(旧iPad)の電源がいきなり落ちることが数回あった。慌てて充電し始めると、電池はまだ20%前後も残ってる。

      

「冬 スマホ 低温 電源」とかで検索すると、情報は多くて、みんな経験してるらしい。ただ、物理的・数学的に一貫した説明はなかなか見当たらない。私が試しに簡単にまとめてみよう。図は、山形大学のサイトから引用・加工した。

   

  

     ☆     ☆     ☆

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図の赤枠が電池で、元々の電圧が「起電力」。Veと略記。そこから内部抵抗rのせいで少し減ったのが、電池の外側でのフツーの電圧(端子電圧V)。負荷抵抗Rというのは、端末がもたらす抵抗。以下、VeとRは定数と考えるが、Vと電流Iはrに応じて変化する変数。

     

 =Ve-Ir

  =Ve-{Ve/(r+R)}r

  =Ve{1-r/(r+R)}

  =Ve・R / (

   

∴ 内部抵抗が増す → 端子電圧が減少 → 端末の保護回路が作動 → 強制終了。

  

  

     ☆     ☆     ☆

寒い時はリチウムイオン電池の電解液の粘度が上がって、イオンが移動しにくくなり、内部抵抗rが増す。auの会社・KDDIの説明を参照

  

なお、高温も、端末には悪影響だから、冬の使い捨てカイロには要注意! 今日は早くもこの辺で。。♪☆彡

   

      (計 611字)

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量子もつれ(エンタングルメント)の実験的検証~ノーベル物理学賞2022、授賞・受賞理由(英文和訳)

日本人にとって最後の期待だった文学賞も落選。2022年のノーベル賞は、日本では盛り上がってないが、むしろこれが普通なんだろう。今までが盛り上がり過ぎてたし、そもそも日本ではノーベル賞を特別扱いし過ぎなのだ。五輪も同様。

   

今年の各賞の中だと、私が一番興味があるのは、ノーベル物理学賞の研究対象である、量子もつれ、量子エンタングルメント(quantum entanglement)。

  

この妙な言葉は、15年前のドラマ『ガリレオ』第4話の黒板にも落書きされてた(円端具流、第1シリーズ)。当時はまだマイナーな専門用語に過ぎなかったが、少しずつ社会に浸透しつつある。意味はともかく、言葉だけは。

   

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     ☆     ☆     ☆

entangle という英単語の基本的な意味は、もつれさせるとか、巻き込むなど。複数の物事に良くないつながりが生じる時に使う言葉だ。

  

ところが、少なくとも今では、量子もつれというのは非常に期待されてる最先端の現象。学問的な研究者だけでなく、経済界や日経新聞からも熱い視線が注がれてる。

  

正直、私はほとんど理解してないし、まったく納得してない。理論か実験か解釈か、どこかに致命的な欠陥が隠れてるのに誰も気付いてないだけではないか? そう思ってしまう。

    

「ベルの不等式が破られたから、そんな可能性は否定されてる」とかいう、よくある識者の説明にも、強く疑問を持ってる。天国の天才アインシュタインも、奇妙でオカルト的な遠隔作用(?)みたいなものには、いまだに納得してないはず。相対論的に不可能なはずの、光速を超える情報伝達にも見えてしまう。

     

しかし一応、恒例の受賞理由の英文和訳を短い記事にしとこう。おそらく今後も数十年、世界中で話題になることだろうしし。英語の公式サイトから引用させて頂いた。

   

   

     ☆     ☆     ☆

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ノーベル物理学賞2022

  

スウェーデン王立科学アカデミーは、ノーベル物理学賞2022を次の方々に授与することを決定した。

アラン・アスペ、仏   ジョン・F・クラウザー、米国  アントン・ツァイリンガー、オーストリア

   

もつれ状態の光子の実験を通じたベルの不等式の破れの確認と、量子情報科学の開拓に対して

  

もつれ状態 - 理論から技術へ

    

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(イラストの作者はいつものように、ニコラス・エルメヘド。モデルの3人は、左から、アスペ、クラウザー、ツァイリンガー。)

     

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アラン・アスペ、ジョン・クラウザー、アントン・ツァイリンガーはそれぞれ、もつれた量子状態を用いて、画期的な実験を行った。それらの実験では、たとえ離れている時でも、2つの粒子が1つの単位のようにふるまう。彼らがもたらした結果は、量子情報に基づく新しい技術への道に光をもたらした。

    

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量子力学の途方もない効果については、応用の発見が始まっている。現在、量子コンピューター、量子ネットワーク、安全な量子暗号情報伝達など、広大な研究分野が存在する。

      

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この発達における一つの重要なポイントは、量子力学においてどのようにして、2つまたはそれ以上の粒子が、いわゆるもつれ状態になっているのか、ということである。もつれ状態のペアになった粒子の1つに起きることが、別の粒子に起きることを決定する。たとえ、それらが遠く離れていても。

    

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長い間、その相互関係は、もつれたペアになっている諸粒子が隠された変数を含んでいるからではないか、という疑問があった。各粒子に含まれている何かが、実験で粒子が示す結果をもたらしているのではないか。

  

1960年代、ジョン・スチュワート・ベルが、自らの名前を付けた数学的な不等式を開発した。その不等式によると、もし隠れた変数があるのなら、多数の測定の相関関係は決してある値を超えないだろう。

  

しかしながら、量子力学は、ある種の実験はベルの不等式を破るだろうと予言する。その結果、他ではあり得ないほど強い相関関係が示されるのだ。

   

  

     ☆     ☆     ☆

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上は、クラウザーの実験の概念図。中央のカルシウム原子に特別な光を当てて、もつれ状態の光子を左右に放出させる。左右それぞれ、光子の極性を測定するフィルターを置く(異なる傾きの穴が開いてる)。一連の測定によって、ベルの不等式の破れを示すことができた、とされてる。

   

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上はアスペの実験。光子の放出を増やすと共に、フィルターも左右それぞれ複数用意して、切り替えられるようになってる。それによって、装置の影響を避けるらしい。と言っても、上図を見ると、フィルターごとに粒子の反応(?)の波線が変化してしまってるが、これは別に構わないのだろうか?

  

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上はしばらく後のツァイリンガーの実験。中央のクリスタル(水晶)にレーザーを当てたらしい。複数の測定装置(フィルターなど)の切り替えには、ランダムな乱数を利用。さらに、遠くの複数の銀河(コマみたいなイラスト)からの信号によって、左右のフィルターを制御する実験もあったとのこと。

    

   

     ☆     ☆     ☆

ということは、先行する2人の実験ではまだ完全には確証できてないと考えたのだろう。しかし、ツァイリンガーの実験で、どの程度の確証の度合いになったのかも不明。

   

とにかく、分からない事だらけの話で、頭脳もつれ状態、思考もつれ状態になるのであった。このもつれは原因や影響がハッキリしているので、量子もつれではない♪ それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

    (計 2182字) 

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家庭崩壊の恨みを抱く古芝=山上徹也、手作りの科学的武器で政治家の暗殺を計画~『ガリレオ 禁断の魔術』レビュー(数式解説付き)

湯川 科学を発展させた要因は色々あるが

   最大の原動力は 世界を豊かにしようとする探求心

   すなわち 希望だと僕は思っている

   「科学を制するものは 世界を制する」

   いい言葉だ

   

高校の恩師 湯川君は本当に純粋そのものといった生徒でね 

     まあ それゆえ 心配なところもありました

  

   

     ☆     ☆     ☆

9年ぶり(!)の『ガリレオ』シリーズの新作ドラマ、『禁断の魔術』。期待通りすごく面白くて、懐かしかった♪  テーマ曲や挿入曲(菅野祐悟)も効果音もいい。フジテレビとか、どうしてもっと早く作らなかったのか、不思議なほど。

    

このブログでは過去17年間、毎日いろんな事を書いて来たが、最もこだわって来た作品といえば、『ガリレオ』なのだ。第1シリーズのドラマの第1話以来、レビュー、数式解説、原作小説との比較など、50本ほどのマニアックな記事をアップしてある。この記事の末尾に、一部の記事のリンクを並べとこう。

   

   

      ☆     ☆     ☆

ところで、マニアックとは、どうゆう事か? 例えば今回だと、新しく相棒(?)に起用された新木優子が魅力的で、いいね ♡ というような感想はネット上に溢れてて、Yahoo!のアクセス・ランキングの1位にもなってた。もちろん私も、それは思う。下のPR写真は、フジテレビの公式サイトより。

    

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新木の出演を見るのは、『コードブルー』以来だと思うが、あの頃より綺麗になってるし、濃い化粧が似合う。スタイルも良くて、福山雅治と並ぶ美男美女の姿も様(さま)になってた。長い髪は、そのままでもポニーテールでも良し。

   

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あるいは、安部元首相を手作り銃で暗殺した山上徹也容疑者を思い出したというような感想も、あちこちのツイッターで呟かれてる。原作小説は7年前、2015年のものだが、その物語と今年(2022年)の大事件との類似は簡単にわかること。

   

    

      ☆     ☆     ☆

しかし、「消火器」について書いてる人は、ネット上に(ほとんど)誰もいない♪ 「ガリレオ 消火器」でツイッター検索をかけると、何もヒットしないのだ。

     

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上の画像は、ドラマのラスト近く。執行猶予になった受験生、古芝伸吾(村上虹郎)と、女子高生・由里奈(森七菜)が仲良く勉強する姿が映る。ピンク・パープルの可愛いニットでオシャレした由里奈の幸せそうな顔が微笑ましい。

  

この2人の真ん中に、ハッキリと「消火器」のプレートが映されてる♪ 「熱すぎ」て、火を消さないといけないほどだと。これは岡田道尚の脚本には書かれてないはずで、演出の三橋利行かカメラマン、美術スタッフらの遊び心だろう。

   

  

     ☆     ☆     ☆

あるいは、ガリレオ・湯川学(福山雅治)が、後で殺されるフリーライター・長岡(平原テツ)に、「レールガン」の物理学的な説明を行う研究室のシーン。

     

私は、湯川の身体がジャマで、黒板の真ん中が見えないのが気になってた。ようやく見えたと思ったら、そこに「ア・マチャ」と書いてたのだ♪ 下の写真の下側の真ん中。あっ、まちゃ! 福山の愛称は基本的に「マシャ」だが、「まちゃ」と呼ばれることも時々ある。

   

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これは物理学的には、「アーマチャ」(armature:電機子)であって、簡単に言うと、レールガンで弾(たま)を高速で発射する力を生み出すもの。

       

こちらは消火器とは違って、単なる偶然かも知れない。でも、ドラマの黒板には第1シリーズから、「円端具流」(エンタングル)のような完全な語呂合わせ、言葉遊びも書かれてた。私はその辺りまで細かく見て、楽しんでる♪ ウチはそんな感じのマニアック・ブログだ。

   

   

     ☆     ☆     ☆

映像のチェック以上にこだわって来たのが数式の解読で、今回もまず数式の記事だけアップしたかったが、ドラマではお馴染み、書きなぐりシーンの数式がどうしても意味不明。残念ながら、とりあえず、数式だけの記事はパスして、総合的なレビュー(批評)、感想を書くことにした。

   

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上の画像の下半分が、最も強調されてた式で、おそらく上半分にも同じ内容が書かれてる。aをo(オー)と書き間違えてるようだが、多分こう書きたかったのだろうと推測。しかし、意味は「さっぱり分からない」♪

  

 cos(tan⁻¹ v₀² √A/mg)

   

vではなくrかも知れないし、oではなくeかも知れないし、2ではなくz(ゼット)かも知れないが、いずれにせよ意味不明。レールガンやプラズマの学術論文も色々調べてみたが、似た式はまだ発見できてない。ちなみに、福山の手書き文字のvは、rに見える傾向がある。

      

  

     ☆     ☆     ☆ 

上の式について一応、「論理的」に解釈してみよう。終盤で自動車の窓ガラスにマジックで書きなぐる、お約束の爆笑シーン♪

    

古芝が犯行を狙ってるのは、地鎮祭ではなく野球場の始球式だろうという話になった時、湯川は地図を眺めて計算。殺人兵器のレールガン(ダミーではなく本物)がある場所を特定してた。といっても、一度はわざとウソをついてたが。

     

場所を特定する式で、しかもmg(おそらく、質量×重力加速度)と書かれてるのだから、野球場のマウンドの位置から兵器の場所を逆算して求める式のような気がする。

  

しかし、単なる斜方投射なら既に映画『真夏の方程式』でも出てたし、こんな式にはならない。v₀²(?)は初速度の2乗としても、ルートとか係数A(?)は意味不明。

  

ちなみに、『真夏』のロケットの方程式は下の通り。8年半前の数式レビューで解説してある。高校1年か2年の物理の標準~発展レベル。

     

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     ☆     ☆     ☆

そもそも数学的に見た時、「cos(tan⁻¹ ・・・)」という式は、妙な組み合わせだ。

    

そのまま受け取ると、三角関数cos(コサイン)と、tan(タンジェント)の逆関数との合成関数に見えるが、それは数学的に、単なる三角比(長さの比)になってしまって、小難しげな三角関数を2重に書く意味はない。

   

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上図の三角形ABCは、英語版ウィキペディアより。底辺AC、高さBC、斜辺ABの直角三角形。

  

tan⁻¹(BC/AC)=Θ

∴ cos{tan⁻¹(BC/AC)}= cosΘ = AC/AB

    

このように、cos(tan⁻¹ ・・・)という計算は、単なる三角形の辺の比になってしまう。

  

  

     ☆     ☆     ☆

過去、『ガリレオ』で物理的に無意味な式が強調されたことはないと思うが、少なくとも三角関数の合成に関しては、単なる見せかけの式のような気がする。

  

おそらく、このドラマでも、東野圭吾の原作小説でも、古芝がcos2Θ=2cos²Θ-1という加法定理(高校2年の基本、倍角公式)を教えるシーンがあるから、そのコサインを無理やり入れて難しげに見せかけたのだろうと想像。

    

ただ、科学監修の岩尾徹(東京都市大学)は本物の物理学者で、大学の著者略歴には「ドラマ『ガリレオ』では、ひらめきの式を担当」とまで書かれてる。もうちょっと調べて、何か分かれば、新たに数式の解説記事をアップしたい。

  

ちなみに、冒頭の黒体放射(Black body radiation)の「プランクの法則」(Plank's law)は正しかった。帝都大学1年生の古芝が、助手の栗林(渡辺いっけい)の間違いを指摘した「-1」も正しい♪ あの話は、レールガンのプラズマの連続スペクトルと関連するもの。

  

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あと、レールガンを解説する黒板の左側に書かれてた、電流と磁界(磁力)に関する「ビオ・サバールの法則」の積分も、正しかった。

   

無限の長さを持つ直線の電流を想定して、-∞から∞まで積分する広義積分。大学1、2年レベルだが、三角関数を用いた置換積分も含め、 理系の高校3年生ならすぐ理解できるものだ。なお、竜巻の実験の方程式はまだ調べてない。

   

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      ☆     ☆     ☆

話変わって、物語、ストーリーについて。といっても、既に公式サイトその他でネタバレ的なあらすじは拡散してるので、これは普通の話だ。ただ、まとめ方が多少、違うだけ。ここでは、事件のポイントだけに焦点を当てて、時系列に沿って見てみよう。番組や小説の中での登場の順番ではないので、念のため。誤解が少し混ざってるかも知れないので、悪しからず。

     

まず、政治家の大賀仁策(鈴木浩介)が中心になって、茨城県つくば市・・じゃなくて光原市に、スーパー・テクノポリス(先端科学技術都市)を作る計画が進む。もちろん、実在する研究学園都市や原発関連施設を意識したフィクション。

    

その取材を通じて、古芝伸吾の姉・秋穂(朝倉あき)は大賀と男女の関係になる。やがて秋穂は妊娠。運悪く体調が悪化したようで、大賀と密会するはずのホテルで倒れる。大賀はそれを見て、かなり年上の秘書・鵜飼(中村雅俊)に電話。鵜飼の指示に従って、救急車を呼ばず、密かにその場を立ち去る。秋穂はそのまま死亡。病死扱いになった。

   

ところが、伸吾が気づいてしまう。経済的な支援が無くなったこともあって、伸吾は大学を退学。地元の中小企業・クラサカに就職。工場や機械を使用して、大賀を殺すレールガンの製作に打ち込む。それは、高校の先輩である湯川に教えてもらって、部員集めのために公開実験したものだった。

    

そのうち、そこの社長の娘・由里奈と親しくなり、製作現場を見られてしまったこともあって、彼女に殺害計画を話す。彼女はそれを止めたいから、大賀の周辺をさぐる計画反対派のジャーナリスト・長岡に話して、動画ファイルも渡す。

  

長岡はそれを、光原市の反対運動の仲間に話したが、相手はお店の経営難で金に困って、鵜飼に買収されてた。いきなり後ろから長岡を襲って殺害。まもなく、長岡のペン型ボイスレコーダーによる録音を通じて、犯行が発覚。逮捕。

   

しかし、伸吾は会社を辞めて身を隠し、大賀を狙い続ける。由里奈に電話で、地鎮祭での犯行計画を話すが、これは警察をかく乱するためのダミー計画。実際は、地鎮祭の直後、野球場の始球式での狙撃を狙ってた。

  

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最後は、湯川が先輩として、命がけの説得。殺したいのなら、今ここで、自分が手伝おう。でも、天国のお父さんやお姉さんが喜ぶと思うか? 死んだお父さんはノートに、「科学は人を救うためのものである」と書き残してた。お姉さんは、『科学を制する者は世界を制する』という言葉はみんなを幸せにするための呪文だ、と新聞記事に書いてた。

     

伸吾は涙を流して、殺人計画を断念。器物損壊罪で起訴されたが、執行猶予。再び、帝都大学を目指して受験勉強開始。今度は医学部ではなく、理工学部を目指してるようだ。科学を制して、みんなを幸せにするために。。

     

   

      ☆     ☆     ☆

ドラマを見てる途中からもう、伸吾と山上徹也容疑者がかぶって見えた。山上に関する大量の報道が正しいと仮定するなら、いずれも家族に関する強いうらみの増大と暴走。

       

父の死の後、伸吾は、母親代わりの最愛の姉を見殺しにされて、山上は母親を奪い取られて、どちらも人生が大きく暗転。うらみを政治家1人に差し向けてしまう。別に、政治家1人の責任というわけでもないのに。

   

伸吾の場合でも、姉が本気で大賀を愛してたことは理解してたし、基本的に病死だということも理解してたはず。それでも、憎悪と攻撃は1人に向けられてしまう。伸吾も山上も、それしかないと思いこむ。自分でも多少の疑問を抱きつつ。

      

それなりの頭脳と実行力は持ってるから、思索=試作を重ねて、ひそかに武器を製造。多くの人々が見てる中で、暗殺を実行しようとする。伸吾は運良く、湯川に止めてもらった。しかし、山上は、誰にも止めてもらえなかった。警備担当にも。。

   

   

      ☆     ☆     ☆

伸吾と山上に共通するパターンは、精神分析学的には、「エディプス・コンプレックス」とも考えられる。母親的な存在への強い愛着と、父親的な存在への強い憎悪。古代ギリシャのエディプス神話以来の、普遍的な構造だ。

   

伸吾の場合、大賀への憎しみは、父親への憎しみの歪曲でもある。素晴らしい科学者だと尊敬した父は、対人地雷を作ってた。父にも、科学にも、ひどい裏切りを受けたと思ってしまう。その意味では、伸吾にとって、科学も「父」なのだ。

    

科学という父は、母親代わりの姉も奪ってしまった。科学振興の公共事業や、それを推進する政治家の形で。母を取り戻すことはできないけど、父を殺すことなら可能。だから、大賀を殺す。それは、科学という「禁断の魔術」を殺すことでもある。殺人兵器の製造に利用するのだから。

    

山上も、もはや母を取り戻すことはできそうにないし、旧・統一教会の幹部という「父」を殺すことも難しいけど、それと少し関係があるらしい安部元首相を殺すことなら可能かも知れない。しかも、元首相は長く日本のトップにいたから、まさに父親的存在でもある。無意識の内に、恨みや憎悪は、目の前にいる父親である元首相に向けられる。転移していく。。

   

このような状況だと、1人で立ち直るのは困難だから、誰かの支え、サポートが大切になる。カウンセラー、セラピスト、精神科医、心療内科医、先輩、友人、恋人、etc。

  

伸吾の場合、別の父である湯川が助けてくれた。山上の場合、もっと早く、強く、フリー・ジャーナリストに相談してれば・・と思ってしまう。しかし、現実の世界に「たら」「れば」はない。ゲームと違って、やり直しやリセットもない。

 

    

     ☆     ☆     ☆

私はこのドラマ、すごく楽しめたし、キムタク主演の春ドラマ『未来への10カウント』での村上虹郎の役(家庭の影響で屈折した乱暴者)も思い出して興味深かった。でも、見終わった直後、疑問や不満も色々と感じたのだ。

    

例えば、古芝伸吾の最後の扱い。殺人計画は未遂に終わったとはいえ、執行猶予ですぐに大学受験、女子高生と仲良く勉強という展開は、あまりに甘口すぎる。テレビのフィクションとはいえ、現実の山上と比較しなくても、これでいいの?、と思ってしまった。

     

あと、湯川の扱い。殺人未遂とか共謀のようなことをしたのに、何のお咎(とが)めもなく、平然とニューヨークへ。主人公の天才科学者とはいえ、いくら何でも甘すぎる。私はオンエア中、なぜ草薙(北村一輝)はすぐに湯川を撃たないのか、と苛立ったほど。湯川の腕を狙ってもいいし、撃ち殺してもおそらく不起訴だろう。刑事として正しい行動、非常手段として。

   

実は、その辺り、原作小説ではもっと納得しやすい話になってるのだ。伸吾はドラマほど甘い流れにはなってないし、湯川にも当然、取り調べがある。そして、草薙も湯川に対して、疑問を抱いたまま終わってるのだ。もし伸吾が望んでたら、湯川は本当にレールガンを大賀に向けて発射してたのだろうか?

   

私は、発射してると思う。それは「純粋な」湯川のやりそうなこと。伸吾にレールガンを教えて、科学の正しい扱いを教えなかった自分への罰。教え子の代わりに、自分が殺人をおかして、自分自身の人生も終わらせる。草薙の言葉を使えば、責任感。純粋すぎて、いつの間にか人間としてやってはいけない事までやってしまう。高校の恩師が心配してた通りの展開だ。

    

私の判断や価値観だと、本当に殺人犯となった男は別として、罪の重さの順番は、伸吾、湯川、大賀。つまり、倒れた恋人・秋穂を放置しただけの大賀の罪が最も軽い。少なくとも、救急車を呼んでも助からなかったとかいう、鵜飼の説明を信じるなら。

  

ところがドラマでは、まるで大賀が最悪のような結末になってた。この点も、小説はまったく違うのだ。テレビと小説の違いとも言えるが、なぜテレビではこんな扱いになってしまうのか。そこには、全国1000万人レベルの視聴者の問題もあるだろう。その点こそ、マスメディアがあまり厳しく追及できない所なのだ。マスメディアのお客様は、一般大衆だから。。

    

   

      ☆     ☆     ☆

また長くなったから、そろそろ最後の話にしよう。「科学を制するものは世界を制する」。この言葉に、良い意味と悪い意味が重なってるのは、ドラマの途中からすぐ分かってたことだ。そもそも、「制する」という言葉は強すぎて、攻撃的な負のニュアンスがかなり含まれてる。

    

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それよりも興味深かったのは、その言葉が「皆を幸せにする呪文」だと新聞に書いた、秋穂の考え。これは、「科学を制するものは世界を制する」と唱えれば、みんなが幸せになる、という意味ではない。

    

むしろ逆で、「みんなが幸せになる」ように、その呪文を唱えるべきだ、という意味だ。同じ言葉でも、そこに込める思いに応じて、良いものにも悪いものにもなる。それは、向き合い方によって善にも悪にもなる、科学と同様なのだ。

  

こう考えると、なぜドラマであれほどインスタント・コーヒーが強調されてたのか、分かるだろう。インスタント・コーヒーは、呪文や科学と違って、扱い方が簡単なのだ。誰がいれても、どんな器でも、それなりに美味しい。だから、湯川も草薙もくつろげるのだ。

   

   

      ☆     ☆     ☆

なお、原作者の東野圭吾が、映画『沈黙のパレード』に関して、「ガリレオはこれでゴールインなのでしょうか?」という意味深なメッセージを出したらしい。制作サイドの裏事情をふまえたものだろうが、「また映像作品を作ってください」という意味も当然、含むはず。 

   

次は、9年後ではなく、5年以内の新作を期待しよう♪ それでは今日はこの辺で。。☆彡

  

  

  

cf. 真解=深海の光を目指す水ロケット~『ガリレオ 真夏の方程式』(レビュー)

 ガリレオ『真夏の方程式』の数式、水ロケットの飛距離・初速度・発射角

   

    ・・・・・・・・・・

 宗教、科学、自然と人間~『ガリレオ2』第1話・幻惑す

 スイングバイによる軌道修正~『ガリレオ2』最終回・聖女の救済(後編)

 男子の中で泣く女~『ガリレオXX・内海薫』愚弄(もてあそ)ぶ   

   

    ・・・・・・・・・・   

 『ガリレオ2』第1話の数式、誘電体のマイクロ波加熱における電力半減深度

 『ガリレオ2』最終回の数式、浄水器と管内の水の乱流&層流  

  

  ・・・・・・・・・・

  解けない問題、χ(カイ)=愛 ~『ガリレオ 容疑者Xの献身』 (数式込み)

   

  ・・・・・・・・・・・・・

 天才・湯川が示した物理学の解読と検証~『ガリレオ』第1話

 サンタを信じた科学者へのプレゼント~『ガリレオ』最終回

  『ガリレオ』第1話、レーザー光線の計算式

  『ガリレオ』最終回、核爆弾処理シーンの数学的解説

  

   ・・・・・・・・・・

 『ガリレオ』第1話、ドラマと原作の比較

  『ガリレオ』第1話の脚本チェック☆

   

      (計 7340字)

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恋多き天才アインシュタイン、再婚した妻エルザよりも、義理の娘イルゼを愛して結婚したかったのか?

4連休の初日、朝日新聞・朝刊(20年9月19日)読書欄をサラッと見てると、アインシュタインという名前が目に飛び込んで来た。マシュー・スタンレー『アインシュタインの戦争』、新潮社。朝日デジタルでも掲載中

  

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反戦平和とか反核といった話と、物理学の相対性理論を混ぜた、普通の伝記かと思ったら、全然違うことも書いてた。

  

「私生活をも赤裸々に描いている・・・最初の妻であるミレヴァと離婚できないまま、後に妻となるエルザと暮らし始める。信じがたいことに彼はエルザの娘とも関係をもち、『二人で決着をつけてもらって、どちらとでもいいから結婚したい』と言ってのけたそうだ。」

  

  

     ☆     ☆     ☆

評者の東京大学教授(宇宙物理学)・須藤靖が驚いてるのだから、スクープ的なスキャンダルなのかと思って検索してみると、全然そうでもない。日本語でも一応、数年前にはもうネットに流れてる。ただ、いつものようにと言うか、いつも以上にと言うべきか、信頼できそうな記事は日本語だと(ほとんど)見当たらない。

   

おまけに、紛らわしいことに、別の義理の娘(妹の方)への愛の手紙とか言われるものが一部の個人サイトに流れてて、最初は私も混同してしまった。ちなみにそちらは、スペインで創られた偽物とか言われてるし、根拠も見当たらないし、今回の話とは別だから、ここでは深入りしない。

   

一方、朝日で書いてた義理の娘、姉のイルゼ(Ilse)については、英語で検索すると色々な情報が手に入って、読むのが大変だった。調べるだけで膨大な時間を使ってしまったから、簡単にまとめとこう。

 

  

     ☆     ☆     ☆

イルゼの写真は極端に少ないが、下はウィキメディアより。パブリック・ドメイン(公的所有)。アインシュタインから求婚された5年後くらい、1923年(26歳頃)のもので、宝塚系の華やかな美人に見える。

    

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先に結論のようなものを書いておくと、英語圏では既に25年以上前に出てた情報で、あまり流行ってないものの、それなりの根拠もあるらしい。東大教授もそういった話まではカバーしてなかったわけか。もちろん、100年前の禁断の愛だから、真相や真偽は不明。

       

総合的に見て、個人的には今の所、たぶん本当じゃないかなと思ってる。もし後で、間違ってるという証拠を見つけたら、ここで追記することにしよう。

   

   

     ☆     ☆     ☆

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上が、『アインシュタインの戦争』の訳書と、英語の原書、Matthew Stanley『Einstein's War』。こちらは、原書が2019年に出たばかりということもあってか、アマゾンでもグーグル・ブックスでも中身の情報がほとんど出て来ない。英語版ウィキペディアにも項目はないし、単なる言及さえ見当たらない。

      

義理の娘イルゼとの恋愛について、新事実を載せてる可能性は一応あるけど、それにしてはほとんど英語圏でも話題になってないのだ。

  

むしろ、情報の元をたどっていくと、米国を代表する新聞の一つ、ニューヨーク・タイムズの21年前(1999年)の記事にたどり着いた。「Einstein, Confused in love and, Sometimes, Physics」。アインシュタイン、愛に翻弄されつつ、時々、物理学。

   

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恋愛中毒でたまに物理をするだけでノーベル賞を取れるのか・・とか、妙な驚きも感じるタイトルだが、要するにこの執筆者、デニス・オーヴァーバイ(Dennis Overbye)は、恋愛に注目したらしい。

  

ソース(情報源)は、少しずつ刊行中の『アインシュタイン著作集(または全集)』第8巻、プリンストン大学出版。Collected Papers。

   

彼は99年の春に出たと書いてたけど、出版社サイトから情報を探すと1998年11月末になってた。日付けと実際の流通にはタイムラグ(時間差)があるし、英国と米国(とドイツ語?)の差もあるから、こだわらないことにしよう。

  

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その大著の中の手紙(90年代前半には知られてた)によると、アインシュタインは1918年の春、再婚しようとしてたエルザ(Elsa)よりも、その娘のイルゼ(20歳)と結婚したかったとのこと。彼は1879年3月の生まれだから、38歳か39歳の頃だ。まあ、現在の感覚でも何とか許容範囲か。血縁は無いし、ロリコンとか近親相姦といった話でもない。

     

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この記事の著者がその後出版したのが、『Einstein in Love: A Scientific Romance』。私なら『恋するアインシュタイン ロマンスも科学的に』と訳すけど、翻訳本のタイトルは『アインシュタインの恋』(青土社)。原書の該当箇所はグーグル・ブックスで限定公開されてた(なぜかiPadでは見れるのにPCでは見れず)。

  

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イルゼが、ニコライ(Nicolai)という男性に出した相談の手紙をそのまま読むと、アインシュタインの熱烈な愛と、彼女の困惑が語られてる。彼女は後に別人と結婚してるし、普通に考えるなら、アインシュタインの失恋。順当にふられたことになる

   

   

    ☆     ☆     ☆

ただ、私は元の著作集や手紙の原文も見てないし、著者オーヴァーバイが手に入れた資料も知らない。私だけでなく、そんな専門的な詳しい情報は、かなり検索しても出て来なかった。もちろん、日本語では皆無。

  

というわけで、義理の娘に対するアインシュタインの恋愛は、客観的に言うなら、25年以上前からある不確定情報。現在の個人的な推測としては、ほぼ合ってるような気がする。こんな所だろう。なお、ニコライとアインシュタインの関係はまたややこしいので、ここでは省略。

   

英語の資料を画像とリンク付きで載せただけでも満足して、今日はそろそろこの辺で。。☆彡

   

      (計 2323字)

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NHKドラマ『太陽の子』の物理学、ウラン235濃縮(遠心分離)と核分裂反応式、熱中性子の断面積の数式

昨夜(20年8月15日)、NHKで放送された終戦記念のドラマ『太陽の子』(GIFT OF FIRE)。放送1ヶ月前に、主要な登場人物の1人、「石村裕之」を演じた俳優・三浦春馬の訃報が届いたこともあって、大きな話題になってる。

   

既に、実在人物としての三浦と裕之が重なるといった感想は、ネット上で無数に流れてるので、ここではほとんど誰も書かないような科学的な話を書くことにしよう。

  

このドラマのメイン・キャストである石村修(柳楽優弥)は、京都大学で核物理学を専攻する学生(実在モデルは不明)。実在した物理学者・荒勝文策(國村隼)の元で、原子爆弾(「太陽」、FIRE)の開発に取り組む様子を映す中で、多数の物理的な要素が入ってた。解読できた範囲だけでも、まとめとこう。

       

日本における原爆開発としては、大日本帝国陸軍の「二号研究」(理化学研究所・仁科芳雄ほか)の方が有名だと思うが、ドラマが扱ったのは、もう1つの研究。大日本帝国海軍の「F研究」。Fは、Fission(核分裂)の頭文字か、六フッ化ウランのフッ素の元素記号Fか、よく分からないようだ(日本語ウィキペディア)。

  

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上は、タイトルロールの取材協力3人の1人として名前が出てた、京大名誉教授・政池明の研究書『荒勝文策と原子核物理学の黎明』(京都大学学術出版会)。画像はamazonより。目次を見るだけでも、本格的な内容だと分かる。2018年だから最新レベルか。442ページ、5280円。

      

   

     ☆     ☆     ☆

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修が苦労して窯焼き工房から手に入れてたのが、上の「硝酸ウラン」。今だと普通は「硝酸ウラニル」と呼ばれてる物質で、化学式は、UO₂(NO₃)₂ 。これを修のために手に入れようとした、工房の和風美人の娘さんが亡くなったから、骨の灰のイメージにもなってる。だからこそ、仲間の失礼な発言に対して、修は激怒してた。

      

構成要素の原子記号は、ウラン(U)、酸素(O)、窒素(N)。簡単に言うと、ウラン以外は、空気みたいなもの。ここから、ウラン燃料の原料の代表である6フッ化ウランが作られる。下は原子力百科事典ATOMICAのサイトより

   

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第1式で、UO₃(三酸化ウラン)を作成。

第2式で、H₂(水素)と反応させて、UO₂(二酸化ウラン)を作成。

第3式で、HF(フッ化水素)と反応させて、UF₄(四フッ化ウラン)を作成。

第4式で、F₂(フッ素)と反応させて、UF₆(六フッ化ウラン)が完成。

  

   

     ☆     ☆     ☆

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同じ「ウラン」(原子番号92、陽子92コ)の中でも、中性子の数だけ違う「同位体」が色々ある。天然ウランの99.3%は、U238(陽子92コ+中性子146コ)。0.7%だけが、核分裂を起こすU235(陽子92コ+中性子143コ)

  

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ちなみに上図は私が作ったものだが、元素記号Uの左上に質量数(陽子数+中性子数)、左下に原子番号(陽子数)を書いた図は、専門的なサイトだとほとんど見ない。左下の92は省略されてるのだ。当たり前だからか、あるいは質量数だけに注目するということか。

  

  

     ☆     ☆     ☆

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天然では僅かなウラン235の割合を高めるのが「濃縮」。京大では、理研(理化学研究所)とは違う「遠心分離法」を選択。円筒の中で超高速回転させて、重いU238を外側に、軽いU235を内側に集める方法。

  

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ただ、計算上は毎分10万回転が必要で、戦時中には実現できなかったようだ。黒板で、毎分回転数をNとして、N=10⁵(=10万)を導いてたが、今のところ数式は解読できてない。最後の式だけは判読できた。

  

N=・・・=10×5×10⁴ / r₀ で、「r₀=5cmト仮定」すると、N=10⁵

     

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遠心分離機は、0(ゼロ)、A、Bと進化する様子が描かれてた。実在した物と対応してるのかどうかは不明。

   

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     ☆     ☆     ☆

荒勝が「Atomic Bomb」(原子核爆弾)と黒板に書いた時の左側には、核分裂反応式と図が書かれてた。

   

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200816l

   

団子みたいなウラン235に、左から中性子nを衝突(吸収)させると、一旦、ウラン236になった後、多数の核分裂反応が起きる。その内の代表的な2種類だけ書かれてた。

  

 235U92 + n → 236U92 → 核分裂

→ 144Ba56 +89Kr36 + 3n (バリウム144、クリプトン89、中性子3コ)

→ 95Y39 + 139 I 53+2n (イットリウム95、ヨウ素139、中性子2コ)

   

どちらの分裂でも、高速の中性子が2~3コ飛び出して、さらに次の核分裂が発生。これが続いて行くのが核分裂連鎖反応。下図はエネルギー総合工学研究所HPより引用。ちなみにこの連鎖反応を制御して、熱エネルギーを取り出すのが、平和利用の原子力発電

  

200816m

  

  

    ☆     ☆     ☆

最後に、1945年8月6日の朝、広島に原爆が落とされた後、荒勝が鉛筆で書いてたメモ。化学反応式に見えるが、あれは数式。あそこだけ見るなら、数学・算数の足し算で、米国大統領トルーマンが英語で演説するのをラジオで聴きつつ、「廣島」と旧字の漢字で記してた。

        

200816n 

  

σ u c = σ u f  +σ u a

   = (4.0 ± 2.1)× 10 ⁻²⁴ cm²

σ u a =(1.1 ± 2.1)× 10 ⁻²⁴ cm²

廣島 one bomb(?)

   

この式は、例の政池氏のpdfファイルにそのまま載ってた。「熱中性子によるウラン原子核の分裂・吸収断面積の測定」という項目。

   

ご本人が作ったファイルではないかも知れないが、入力ミスらしきものが2つある。まず、α(アルファ)とa(エー)の混在。たぶん、aが正しい。あと、面積の単位cm²の「²」が抜けてる。科学者も簡単なミスがあるということだ。

   

200816o

    

σ u c : シグマ・ウラン・キャプチャー。熱中性子のウランによる捕獲(capture)断面積

     遅い中性子が、どのくらいウラン原子に当たるかを表す量。

σ u f : シグマ・ウラン・フィッション。熱中性子によるウラんの核分裂(fission)断面積

     遅い中性子が、どのくらいウラン原子に当たって核分裂を起こすかを表す量。

σ u a : シグマ・ウラン・アブソープション。核分裂を伴わない熱中性子吸収(absorption)断面積

     遅い中性子が、どのくらいウラン原子に当たって核分裂を起こさないかを表す量。

  

意味を考えれば、σ u c = σ u f  +σ u a は当たり前だが、その後の数値を正確に求めたのが荒勝の功績らしい。この理論的な数値をどう利用するのかは不明。爆発の威力、速度、確率、爆弾の大きさなどの計算につながるのだろうと想像する。

   

  

     ☆     ☆     ☆

他にも、アインシュタインらの顔写真と共に、有名なE=mc²を変形した式などが登場してた(質量とエネルギーの等価性)。

   

とりあえず、今日はもう時間切れ。物理や数学など分からなくても、心にしみる感動的で印象的な作品だった。なお、今週は少なめ、計13523字で終了。また来週。。☆彡

  

   

   

cf. 鴨長明『方丈記』と座布団、三浦春馬にたむけるラブコメディー~『カネ恋』第1話

 方丈記「かむなは小さき貝を好む」、『カネ恋』第2話に合わせた意味と現代語訳&プチジョグ

 方丈記「いかにいはむや、常に歩き」、『カネ恋』第3話に合わせた意味と現代語訳&プチジョグ

 方丈記「猿の声を聞いて 涙をこぼす」(原文「猿の聲に袖をうるほす」)、『カネ恋』最終回SPに合わせた意味と現代語訳

       

      (計 2782字)

    (追記184字 ; 合計2966字)

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『行列』森川葵、ダイス・スタッキングの物理(力学)、遠心力と摩擦力&出張ジョグ2

(26日) JOG 10km,52分54秒,平均心拍138

 消費エネルギー 504kcal (脂肪 116kcal)

   

普段、ブログでレビューするドラマとニュース以外はほとんどテレビを見なくなってるから、出張の時くらいはちょっと気を緩めて、珍しい番組を見たりする。

  

昨日は午後、パソコンをいじりながら、ふとテレビをつけてみたら、石川遼と渋野日向子のゴルフ・チャリティー特番(テレビ朝日)をやってたから、流し見してみた。石川はイケメンで爽やかだし、渋野のしぶこスマイルも可愛い。しぶこスタイルも一般市民に安心感を与えてくれる(笑)。コラコラ! いや、水卜アナの断トツの人気も、それが大きいと思うな。

    

  

    ☆     ☆     ☆

正直、ゴルフは一応ルールをちょっと知ってる程度♪ 番組の途中で、「マン振り」なんて言葉を調べたりしてた。120%のフルスイングのことね。ちょっと、やり過ぎって感じのネガティブな意味合いも込めて。

   

プレーの方は、打ちっ放しの練習場に1回か2回、行っただけ。中学時代には教室で、ほうきか何か他の物を使ってパターごっこしてたね。

   

あと、練習場で2日くらい(?)、バイトしたことがある。新幹線の車内販売みたいな感じでサービスするんだけど、コーヒーの淹(い)れ方があまりに素人だったから、女性タレントのお客さんが自分でやってくれた(笑)。あえて実名は書かないけど、いい人だね♪

   

ゴルフ番組は、単純に緑がキレイだし、基本的に静かな流れだから、他の事をやりながら流し見するのにちょうどいい。ただ、オッ!と驚いたのは、ゴルフクラブでゴルフボールをリフティングするお遊び。渋野はあんまし上手くなかったけど、石川は慣れてた。クラブもボールも硬いから、難しそう。

   

   

     ☆     ☆     ☆

でもまあ、それはゴルフのプロだから、わりと納得しやすい。ところが夜、遅い夕食をとりながら久々に見た日テレ『行列のできる法律相談所』は、マニアック・ブロガーの魂をくすぐって来た♪ 女優・森川葵なんて知らなかったのだ(笑)。そこか! いや、名前だけ知ってたけど、ものすごい才能の持ち主とは知らなかった。

  

『それって!?実際どうなの課』という番組で、凄く穴が小さいけん玉を成功させたり、石の水切りで22段?!の記録を作ったり、5段重ね?のグラスの下でテーブルクロスを引き抜いたり、カップ・スタッキングのスピード記録を作ったり。

    

超絶技巧の数々を披露してたらしい。普段から、2つの事を一度にやってるから、1つの事だけに集中すると凄い能力になるとかいう説明。

   

   

     ☆     ☆     ☆

で、『行列』で披露したのは、ダイス・スタッキング(dice stacking)。直訳すると、「サイコロ積み重ね」。見たのは小学校以来かも♪ 種も仕掛けもある、手品の一種かなと思ってた(笑)

  

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画像は日テレ公式ツイッターのPR動画より。この角度だと美人に見えるね♪ コラッ! いや、それより、カップを持った左手がブレてる所に注目。左利きなのか・・って話じゃなくて、動きが速いってことか。テーブル表面とカップのふちの摩擦が小さくて滑りやすいのもあるはず。しかし、これはホントに上手いから、正月のかくし芸大会で勝てそう(笑)。古っ!

  

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わざわざ、おでこの曲面の上に、サイコロを4つ(?)、ちょっと斜めに積み重ねてた。ファンデーションの粘着力が凄い(笑)。そうゆう見方か!

   

何者なの?と思って、ウィキペディアを見ると、ダイス・スタッキングについて一言だけ、「遠心力を使って」と説明してた。なるほど! 画面じゃ分かりにくかったけど、あの手の動きは、左右の直線的な振動じゃなくて、円運動だったのか。

   

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サイコロ入りのカップを握った腕を、扇形に丸く振動させると、腕から遠ざかる方向に遠心力が加わる(普通の言い方では)。だから、4コか5コのサイコロでも、カップ内でほぼ同じ位置に押し付けられて、積み重ねられるのだ。腕の動きの速さと正確さがポイント。

  

ちなみに、物理学的には、遠心力というのは見せかけの力(人が感じる力)。本当は、腕の手前方向に働く向心力(or求心力)によって、サイコロが円運動する、というような説明になる。遠ざかる向きの力というのは実在しない。

   

   

     ☆     ☆     ☆

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では、なせサイコロは上下に積み重ねられるのか? 実はカップを僅かに傾けてるらしい。その状態で、高速で腕を円運動させると、サイコロは遠心力で外側(つまり上側)にずれて、一つずつ積み重なる。カップの底が天井の役割をしてストッパーになるから、数個のサイコロは上の方で静止する(カップに対して)。

     

下に落ちて来ないのは、カップに強く押し付けられて、摩擦力(静止・動)が働くから。最後は、サイコロがぶつかる音や感触が無くなったらピタリと止めて、中身を披露。

  

理屈は分かっても、やれと言われると出来ないだろうし、わざわざストンとした円筒形の専用カップと、重ねやすい(?)サイコロを買ってまで練習する気もしない。

    

要するに、森川葵は腕と手首の動きと感覚が天才的なのか。歌とダンスは苦手とか言ってた気がするけど、今度は他のことに挑戦して欲しいね。とりあえず、拍手、拍手☆

   

   

    ☆     ☆     ☆

それに比べると、ランニングや自転車は単純な動きで、職場のYさんは完全にバカにして斬り捨ててた♪ 実名イニシャルか! まあでも、これもやり続けるのは大変なのだ。ダイス・スタッキングとかとは別の意味で。

  

単なる市民ランナーは、昨日も地道に10kmジョグ。スピードをコントロールして、汗と足腰の負荷を抑えて。頑張り過ぎると続かない。適度な頑張りで、トータルでは1km5分17秒ペース。あぁ、またギリギリで「RUN」ペースを逃してしまった (^^ゞ いや、もっと遅いと思い込んでたもんで。

  

気温23.5度、湿度94%、風速1.5m。心拍計は、また途中でちょっと変な動きをしてたから、そこだけやや高めに補正(LAP4)。今月も残り5日。天気が悪くて走りにくいけど、ノルマ達成を目指して頑張ろう! ではまた。。☆彡

   

   

      時間 平均心拍 最大

LAP 1(2.1km)11分43秒 123 154 

 2   10分53秒 133 149

 3   10分45秒 140 148

 4   10分34秒 145 153

 5(1.7) 8分58秒 152 160

計10km 52分54秒 138(79%) 160(91%)

   

         (計 2569字)

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『やまとなでしこ』(特別編)、欧介のスピーチ全文と物理学者ファインマンの言葉(英語&日本語訳)

20年7月6日、特別編の前編が放送されたフジの人気ドラマ『やまとなでしこ』については、一昨日、結婚披露宴でのケーキの切り方の数学記事をアップした

  

 正十七角形の作図を使った、ケーキの68等分の方法・解説~『やまとなでしこ』(特別編)数学者・欧介

   

あれは結局、ヒネリの入った笑いにつながってたけど、ケーキの活躍で指名された時の欧介(堤真一)のスピーチは、ストーリーにとっても重要。

   

200709a

   

大金持ちの医者を装うウソが分かった後、欧介を嫌ってた桜子(松嶋菜々子)も、スピーチには魅かれてたし、後輩の若葉(矢田亜希子)は感動し過ぎて欧介とラブホテルで宿泊。何もしてくれなかったと怒ってた♪ たぶん、酒の飲みすぎで、出来なかったんだと思う(笑)。アルコールが入ると、集中すべきなのに分散してしまうのだ。何が?!

      

そのスピーチは当然、ネットに既にいくつか掲載されてるようだけど、一般に話し言葉の書き起こしというのは、元の言葉とビミョーに違ってることが多い。以下ではまず、元の言葉と(ほぼ)同じものを書いてみる(脚本・中園ミホ)。その後で、物理学者ファインマンに向かおう。

   

   

     ☆     ☆     ☆

エェ~、突然なので、何を喋ったらいいのか・・。あぁ、そうだ。

ファインマンは、物理学者のリチャード・ファインマンはこんな事を言ってます。

数学や物理というのは神様のやっているチェスを横から眺めて、

そこにどんなルールがあるのか、どんな美しい法則があるのか、探していくことだと。

   

最初からそんな法則はないと思うこともできます。

この宇宙で起こっている事がすべてでたらめで、意味のない出来事の繰り返しばっかりで。

だとしたら、数学者たちは何もする事がなくなってしまうんです。

そんな退屈な宇宙に住んでいること自体、嫌気がさしてしまう。

   

でも、岡本はチェスの謎を解くことを諦めませんでした。

おまけに、ゆりさんのような人とめぐり合うことができた。

ひょっとしたら、人と人が出会う事もそのルールに則っているのかもしれません。

もしそこに何かのルールがなかったら、二人がどこかで出会っても、

そのまますれ違って関わり合うことも言葉を交わすこともなかったはずなのに。

   

宇宙の片隅のこの会場で、僕たちがこうして集まることができたのも、

そして今日、僕達がこんなにハッ・・ハッピーなのも、

岡本がたった一人の女性と巡り会ってくれたおかげです。

運命という一番難しい謎を、今日、彼が解いてくれたような気がします。

おめでとう。

   

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最後のお辞儀で、マイクにおでこをぶつけるコントが絶妙だったから、若葉は大ウケ(笑)。そうゆう見方か! いや、基本的にコメディなのだ。恋愛も大切だけど、笑いも大切。マイクが額にめり込んでる所まで、じっくり味わう必要がある。

        

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     ☆     ☆     ☆

一方、欧介のスピーチの元ネタらしい、物理学者ファインマン(Richard Feynman)。1965年、日本の朝永振一郎と共に、ノーベル物理学賞を受賞。実績ともに人気もトップクラスの科学者だ。

  

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1981年、英国BBCのテレビ・インタビューで神様のチェスの話をしたようで、元の動画は海外からはアクセスできないようになってた。原題は「The Pleasure of finding things out」(物事を発見する喜び)。

  

200709d

   

ただ、検索ですぐヒットする海賊版らしき動画がYouTubeで長年そのままになってるから、黙認されてると言っていい。ドラマと関連する部分は、「Rules of Chess」(チェスのルール)という題の短い動画になってた。

    

それを書き起こしたらしい英文が、あちこちに拡散してる。どれが最初なのかよく分からないけど、どうせ元は40年も前のBBCのトークだし、著作権が問題になるとは思えない。こちらのサイトから、最初と最後の段落を引用させて頂こう。

   

    

    ☆     ☆     ☆

One way that's kind of a fun analogy to try to get some idea of what we're doing here to try to understand nature is to imagine that the gods are playing some great game like chess.

   

自然を理解しようとして我々がここで何をやってるのか、そのイメージを得るための楽しいたとえの一つは、神々がチェスみたいな凄いゲームをしてると想像することだよ。

 

Let's say a chess game. And you don't know the rules of the game, but you're allowed to look at the board from time to time, in a little corner, perhaps.

 

チェスを考えてみようか。あなたはそのゲームの色んなルールを知らない。でも、あなたは時々、盤面を見ることは許されてる。たぶん、片隅からね。

   

And from these observations, you try to figure out what the rules are of the game, what [are] the rules of the pieces moving.

   

そして、それらの観察から、あなたはゲームの色んなルールを、駒の動きの様々な法則を、見出そうと努力するんだ。

  

   

     ☆     ☆     ☆

・・・・・・・(しばらく省略)・・・・・・  

In the case of the chess game, the rules become more complicated as you go along, but in the physics when you discover new things, it becomes more simple.

   

チェスのゲームの場合、進むにつれて、ルールはより複雑になる。でも物理学では、あなたが新しい物事を発見すると、よりシンプルになるんだ。

   

It appears on the whole to be more complicated, because we learn about a greater experience; that is, we learn about more particles and new things, and so the laws look complicated again.

   

より大きな経験について学ぶから、全体としては複雑になるようにも見える。つまり、我々はより多くの粒子やものについて学ぶから、様々な法則がまた錯綜するように見えてしまう。

       

But if you realize that all of the time, what's kind of wonderful is that as we expand our experience into wilder and wilder regions of experience, every once in a while we have these integration in which everything is pulled together in a unification, which it turns out to be simpler than it looked before.

   

でも、ずっと続けてると素晴らしいことがあるんだ。我々がどんどん未経験の領域へと進むにつれて、時々、色んなものが一つに統合されて、以前の見え方よりもシンプルだと分かるんだよ。

   

   

美しい法則とかいうより、シンプルさ、単純さを重視するのが理論物理学らしいというか、ファインマンらしいというか。確か、そんな感じのことは、有名な教科書『ファインマン物理学』にも書いてたような気がする。

  

案外、他の場所でもチェスの話をしてて、中身がちょっと違うのかも。とりあえず、今日はこの辺で。。☆彡

    

          (計 3105字)

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『頭脳王2019』解説2~ジグソー、数列15パズル、太平洋の太陽光発電&地球中心への落下速度

今日は昨日に引き続いて、日テレ

 

『頭脳王2019』の解説2本目を

 

書くことにする。1本目は下の通り

 

 

 

 『頭脳王2019』決勝戦の解説~

 

 水素原子の大迫選手のマラソン

 

 &クジラと関取の綱引き

 

 

 

今回も、スマホ・携帯向けに1行の

 

字数を少なくするので、パソコンや

 

タブレットの方、悪しからず。私の

 

入力はパソコン。

 

 

 

 

 

   ☆    ☆    ☆

 

まずウォーミングアップとして、

 

ジグソーパズル。30ピースの内、

 

1つだけ足りないピースの形は?

 

 

 

京大医学部の賢者・木戸と東大

 

医学部の異才・中島は間違えた

 

けど、東大謎解きの超人・松丸と

 

東大医学部の神脳・河野玄斗は

 

一瞬で正解した。

 

 

 

つまり、速い解き方があるのだ。

 

ネタバレ的にコツをまとめとこう。

 

 

 

190217a

 

 

 

各ピースは正方形で、その辺は

 

真っすぐか凸か凹か、3種類。

 

凸と凹の数が差し引きいくつか、

 

各ピースごとに計算していくと、

 

29個の合計で-2。よって、

 

残りの1ピースは+2のはず。

 

 

 

また29個の中には、真っすぐの

 

辺1本が14個、直角の2辺が4個

 

ある(上図の赤線)。これで真っすぐ

 

の辺は全て揃ってるから、残りの

 

ピースに真っすぐ辺はない

 

 

 

190217b

 

 

 

だから残りの1ピース3辺が凸、

 

1辺が凹と分かる(正答)。

 

 

 

頭の中で29個を組み立てる必要

 

はない。スタッフも、真っすぐの辺を

 

数えやすいよう、下側に集めてた。

 

 

 

 

 

   ☆    ☆    ☆

 

次に、1~15の数列パズル。

 

これもやり方は決まってるし、あの

 

問題は一瞬で解ける配置だった。

 

両手の指を7回スライドさせる

 

だけ。片手は遅い。右上の3、4、

 

7、8は全く触らず。

 

 

 

190217c

 

 

 

190217d

 

 

 

190217e

 

 

 

190217f

 

 

 

190217g

 

 

 

190217h

 

 

 

190217i

  

   

(☆翌年の追記:2020年は下の①から⑥まで、赤い矢印に従って5回動かす問題だった。画像は「ナンバーパズル」アプリを利用。)

     

200219e

  

200219g

 

 

    ☆    ☆    ☆

 

ではいよいよ計算問題に移ろう。

 

まず、太平洋の大きさの太陽光

 

パネルで発電できる世帯数

 

物理の単位さえ分かれば簡単。

 

 

 

190217j

 

 

 

(1日の全発電量)

 

=1億6500万km²×1000W/m²

 

   ×0.1×6h

 

=(165000000×1000000)m²

 

  ×0.1×1kW/m²×6h

 

=99×10¹² (kWh)

 

 

 

(1日で使う電力量)

 

  =18.5 (kWh/世帯) 

 

 

 

∴ (世帯数)

 

 =99×10¹²÷18.5

 

 ≒ 5.35×10¹² (世帯)

 

 

 

 

 

   ☆    ☆    ☆

 

そして最後。地球の中心まで

 

掘った穴にスーパーロボットが

 

飛び込んだ時、落ち始めてから

 

10分後の速さ(km/h)は?

 

 

 

これは数値計算が面倒だし、三角

 

関数微分ルートも出るから、

 

準決勝4人の内で正解者は河野

 

のみ。松丸は1ケタだけ間違えた。

 

 

 

190217k

 

 

 

この問題、私が一番悩んだのは

 

cos(コサイン)の右側のカッコ

 

の中。√(ルート記号)が右端

 

の t まで延びてるように見える。

 

 

 

ただ、それだと面倒すぎるし、色々

 

と計算が合わない。あと、高校・

 

大学の物理の常識的感覚として、

 

cos(定数×t)が基本形となる。

 

 

 

私はその辺が引っかかって、途中

 

で投げそうになったし、あの河野

 

でさえ煩雑とか言ってた計算で

 

間違えてしまった。長さと時間の

 

単位もちょっと迷うし。

 

 

 

解説者(竹内薫?)が「微分積分」

 

とか言ってたから、積分もチラッと

 

考えたほど。実際は数Ⅲの簡単

 

な微分が1回あるだけ。

 

 

 

 

 

    ☆    ☆    ☆

 

では計算式。

 

一般に、aを定数として、

 

cos at を t で微分すると

 

-a sin at (符号は負)。

 

 

 

∴ (速度) dx/dt

 

 =(xの式の t による微分)

 

=-R√(g/R)sin{√(g/R)} t

 

 

 

長さの単位をkmにして代入

 

すると、10分は600秒だから、

 

 

 

(速さ)=(速度の絶対値)

 

  =R√(g/R)sin{√(g/R)}t

 

 =6370×√(9.8×10⁻³/6370)

 

×sin{√(9.8×10⁻³/6370)×600}

 

 =6370÷100√65

 

 ×sin(6/√65)

 

 =637÷80.6×sin0.744

 

 =637×0.677÷80.6

 

 =49×677÷6200 (km/s

 

 

 

(時速)

 

 =49×677÷6200×3600

 

 =49×677×18÷31

 

 =1.93×10⁴ (km/h)

 

 

 

190217l

 

 

 

190217m

 

 

 

 

 

    ☆    ☆    ☆

 

こんな面倒な数値計算は久々か、

 

初めてかも。実戦的には、sin

 

(サイン)の計算はsin0.744

 

に決まってると考える手もある。

 

√65も、使うに決まってるのだ。

 

 

 

地球半径6370kmというのは

 

重力加速度9.8で割り切れる

 

ように定めたクイズ用の値で、

 

普通は6378kmとか。

 

 

 

なお、「速度」(単なる時間微分)に

 

マイナスの符号が付いてるのは、

 

地球の中心に向かうから。つまり、

 

中心からの距離が減る向きに

 

運動してるからだ。10分後なら。

 

 

 

それがプラスになる時。つまり、

 

中心を越えて地球の反対側に

 

向かい始めるのは、sinの式の

 

角度から考えると、約42分後。

 

本当は途中で溶けるけど♪ と

 

いうより、穴が掘れないけど(笑)

 

 

 

 

 

   ☆    ☆    ☆

 

新考察パズルについては、まだ

 

考察中。たぶん先手必勝か、

 

少なくとも引き分けにはできると

 

思うけど、変化が多くて証明は

 

大変。立体三目並べの方が簡単

 

だった。

 

 

 

今週は計14998字で終了。

 

ではまた来週。。☆彡

 

 

 

 

 

cf. 『頭脳王2018』解説2

 

 ~ブラックホール直径&

 

 小平選手の山手線一周

 

 

 

      (計 1994字)

 (追記62字 ; 合計2056字)

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日テレ『頭脳王2019』決勝戦の計算式解説~水素原子の大迫選手のマラソン&クジラと関取の綱引き

☆追記: 翌日以降、続編をアップ。

 『頭脳王2019』解説2~

 ジグソー、数列パズル、太平洋の

 太陽光発電&地球中心の落下 

 

 『頭脳王2019』解説3~

 はさみ将棋チェス(新考察

 ゲーム)、結論は引き分け )

 

 

    ☆    ☆    ☆

この記事とは別の話に気を取られて、

アップに時間がかかってしまった

(言い訳♪)。

 

東大医学部の神脳、河野玄斗が

QRコードを見て「東北学院大学」

と答えた問題。

 

そう聞いてGoogle

検索(すべて、画像)をかけても、

たった一つSNS画像が出て

来るだけ。京大医学部の賢者・

木戸直人が答えた「Face

book」なら情報は多い。

 

一体どうやって河野はそんな知識

を覚えてたのかね? 日テレの

放送作家の台本?(笑)。それが

気になって、計算問題どころじゃ

ないのだ♪

 

 

   ☆    ☆    ☆

しかし、せっかく録画までしたから、

とりあえず2問解説しとこう。最後、

マラソン日本新記録を出した、

大迫傑選手の問題。スマホ向け

に1行の字数を少なくしてある。

 

190216a

 

170cmで2時間5分50秒

の大迫が、水素原子と同じ

1.06×10⁻¹⁰mの

サイズになったら、

42.195km走るのに

何年かかるか?

 

これは単純な算数の計算だけど、

疲れ切った状態でスタジオで

短時間に解くのは大変。編集なし

の生映像を見てみたいね♪ 一体

どのくらい速い計算なのか。

 

まあ、河野は1分あったら20人

の名前を書けると豪語してた

から、字を書くスピードも神レベル

なのかな? テレビを見てると、

人間レベルにも見えるけど。。

 

 

   ☆    ☆    ☆

考え方・解き方と計算式は次の

通り。わざと私の手書き文字で

筆算を掲載。

 

 170cm=1.7m

 2時間5分50秒

  =125分50秒

  =7550秒

 

1年=24×365時間

 =24×365×3600秒

 

(水素の大迫のマラソンタイム)

 =(7550×1.7)÷

(1.06×10⁻¹⁰×24×365×3600)

 =(755×17×10¹⁰)÷

   (106×24×365×36)

 =12835×10¹⁰÷33428160

 =(2567÷6685632)×10¹⁰

=(25670000÷6685632)×10⁶

 =3.84×10⁶ (年) ・・答

 

190216b

 

河野のテレビ映像を見ると、私

とほぼ同じ解き方だけど、割り算で

近似値を使って時間を稼いでた。

256700÷66856。

 

有効数字3ケタだから、5ケタで

割れば十分だと考えてるわけで、

流石に上手くて隙が無い。

 

 

   ☆    ☆    ☆

一方、江戸川乱歩の「南無阿弥

陀仏」を利用した点字暗号に

ついては、『頭脳王』とは無関係

の昔の解説記事参照。

 

 点字を「南無阿弥陀仏」で表す

 換字式暗号~乱歩『二銭銅貨』

 

番組途中からかなりアクセスが

入ってた。「りんねてんしょう」

(輪廻転生)が正解の問題。

 

 

    ☆    ☆    ☆

最後は、決勝戦の冒頭の問題。

シロナガスクジラが関取(雷電)

と綱引きをした場合、クジラに

勝つには何人の関取が必要?

 

190216c

 

クジラの体重は160t(トン)、

10秒間の等加速で時速

50kmに達する力。

 

 160トン=160000kg

 

10秒で時速50kmの加速

 =1秒で秒速 

  5000/3600mのv加速

 =加速度25/18(m/s²)

 

∴ (クジラの力)

 =160000×25/18(N)

  (注.単位はニュートン)

 

一方、関取の人数をx人と

すると、合計体重160x kg。

 

∴ (関取の力)

 =(静止摩擦係数×体重

  ×重力加速度μmg)

 =0.9×160x×9.8(N)

 (注.腕力や脚力は無関係)

 

よって、クジラと関取の力が

つり合う時

 160000×25/18

 =0.9×160x ×9.8

 

∴ =160000×25

  ÷(18×0.9×160×9.8)

 =40000000÷

 (18×9×16×98)

 =2500000÷

  (18×9×98)

=625000÷(9×9×49)

=625000÷3969

=157.4・・・(人)

 

よって、関取が「勝つ」には

158人」必要。 ・・・答

 

190216d

 

最後、四捨五入してしまった

らしい木戸に対して、河野は

冷静に切り上げしてた。

要するに、整数不等式

x>157.4・・ を満たす

最小の自然数xということ。

 

とにかく、12万1371人

参加者の頂点に立った2人とも

お疲れさま。特に神脳・河野君、

おめでとう!

 

 

    ☆    ☆    ☆

なお、地球の中心にスーパー

ロボットが飛び込んだ時の10分

後の速さは、ルートの付け方と

単位の取り方が曖昧だった。

あと、必要なのは数Ⅲの微分で、

積分は無関係。後ほど解説する。

 

チェスとはさみ将棋を合体させた

新考察ゲームは、おそらく先手

(挑戦者側)が最善を尽くせば

必勝だろう。しかも戦略は簡単。

証明できれば記事にする予定。

 

ではまた明日。。☆彡

 

 

cf. 『頭脳王2020』謎解き問題、

  考え方とヒント&プチラン

 

 『頭脳王2018』決勝戦の

 計算解説~大声スーパー怪獣

 の体長、100回転ロボット

     (他にも関連記事あり)

 

      (計 1921字)

  (追記39字 ; 合計1960字) 

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宇宙が収縮する時、時間の矢は逆転する~ホーキング博士が訂正した間違い(英語原文)

今日(2018年3月22日)の朝日新聞・朝刊に掲載されたホーキング

博士の「まちがい」の話を読んで、ちょっと前に読んだ気がするな・・

と思ったので、ネット検索。3月14日の朝日新聞デジタルに、ほぼ

同じような内容の追悼記事が掲載されてた

 

見出しは、デジタルが

 「宇宙観変えたホーキング博士 ノーベル賞と無縁の理由は

紙面だと、

 「共感呼んだ 希代の科学者」。

 

執筆はどちらも、朝日の元・科学医療部長、尾関章。やはりネット

の方が、拡散を呼ぶ見出しだろう。

 

最近、先にネットに出した記事を後で紙面に載せることが増えてる

けど、これは極端な時間差だ。本来なら紙面が先で、HPが後だから、

「時間の逆転」が起きてることになる♪

 

 

      ☆       ☆       ☆

その「時間の逆転」こそ、朝日の記事がこだわったコネタだった。

1985年に京都大学で講演した頃は、博士はまだ何とか声を出せた

ようで、付き添いの青年が言い直す形で聴衆に語りかけた。題名は、

「時間の矢」。過去から未来に向かう時間の流れの一方向性のことだ。

 

朝日によると、博士は、

 “カップが割れる映像を逆回しで見せ、膨張中の宇宙がいずれ

 収縮に転じれば、「熱力学的な時間の向きは逆転する」と語った

 

ところが88年の世界的ベストセラー『A Brief History of

Time』(時間の短い歴史、邦訳「ホーキング、宇宙を語る」)

で自分の間違いを認めて訂正。ついでに、自分は訂正したけど、

間違いを訂正しない科学者もいる、というような批判まで載せてた。

 

朝日は「失敗を逆手にとるちゃっかりぶりに愛すべき人柄が見て

とれる」と好意的に伝えてるけど、愛せない読者もいるだろう♪ 正論

とはいえ、日本人なら自分の立場もわきまえて差し控えるのが普通。

 

ちなみに、天才の追悼記事が非常に温かい絶賛になるのも日本の

特徴だ。海外のニュースでは、夫婦や家族のスキャンダルのような

ものまで詳しく報じられてた。まあ、私も日本人だから、ここに書く

のは差し控えとこう。。

 

 

     ☆       ☆       ☆

前置きはこのくらいにして、本題のホーキングの間違いについて。

私は本を買ってるけど見つからないから、ネットで検索。邦訳の該当

箇所は発見できてないけど、英文なら発見できた。

 

最も役に立つのが、コロラド大学のpdfファイル。著作権の処理が

怪しいけど、米国社会ではあまり気にしないのかも。今回に限らず、

しばしば微妙なファイルが堂々と公開されてるのだ。先日の記事に

使ったブラッドベリの短編小説『霧笛』も同様。

 

ホーキング自身の文章を見る前に、非常に大まかな前提知識を、

ネットで拾った図で確認しとこう。『Gravitation』(重力)

というタイトルの有名な本にあるそうで、その本もさらに他の出典

から引用してるような気もする。ありそうで無い、わかりやすい図だ。

 

180322a_2

 

上図の左端が、宇宙の始まりの大爆発ビッグ・バン(Big Bang)。

左から2番目が、現在の宇宙。まだ膨張中。

3番目は、膨張と収縮の転換点。最も膨張した未来の宇宙。

最後に右端が、ビッグ・クランチ(Big Crunch)。宇宙が収縮、

時間の終わりとされる。

 

 

      ☆       ☆       ☆

あくまで一つの考えであって、最近あまり聞かなくなってるから、

少数派なのかも。ただ、物理学的モデルとしては左右対称で美しい。

 

なお、宇宙が膨張するとか収縮するとかいう話は、例えば星の距離

の変化に着目する。下は英語版ウィキペディア、「Ultimate

fate of the universe」(宇宙の最終的運命)より。

 

180322e

 

右下の点線のモデルの場合、横軸(時間軸)で右側に進むと、縦軸

(銀河の平均距離)でゼロになる。つまり、1点に収縮するということ。 

物質の密度や暗黒エネルギーの密度の想定に応じて、複数のモデル

や理論が考えられる。

 

 

      ☆       ☆       ☆

では、ホーキング自身の説明を読んでみよう。英文をコピペした

後、私が簡単に超訳する♪ 正確な直訳とは程遠いので念のため。

 

180322b

 

 まず私は、宇宙が収縮する段階だと、膨張する段階における

 時間の流れが逆転すると考えた。人々は生まれる前に死んで、

 そこから徐々に若返るのだ。

 

 

180322c

 

 私は最初、無境界条件(宇宙に時間的な端は無いという条件)が、

 時間の逆転を意味すると考えた。しかし、同僚の1人が、必ずしも

 時間の逆転は要求されてないと指摘してくれた。さらに、学生の

 一人が、僅かに複雑なモデルを考えるだけで、収縮は膨張と

 大きく異なるものになることを発見した。

 

 私は間違ってた。収縮期でも、ブラックホールでも、時間の矢は

 逆転しないだろう。

 

 

180322d

 

 自分の間違いに気づいた時、どうすべきか。決して間違いを

 認めない人々もいる(エディントンなど)。しかし私は、間違い

 を印刷物で認める方がいいと思う。良い例がアインシュタイン

 で、彼は宇宙定数を導入したことについて、生涯で最大の誤り

 だと呼んだのだ。

 

 

      ☆       ☆       ☆    

ちなみに、この箇所における説明だけだと、「時間の矢は逆転しない」

という説明にはなってない。単に、「逆転すると考える必要はない」と

いうことだ。

 

もちろん、必要がないなら奇妙な考えを主張すべきではない、とか

いう大前提があるのかも知れない。いずれにせよ、宇宙論における

時間の逆転は我々が経験できるものではないから、科学的な面白話

の類ではある。

 

逆に、心理や思考、創作においては、日常的に時間は逆転可能だ。

実際、ホーキングに限らず、時間の逆転という話は時々あるし、読者

や聞き手もイメージできるのだ。映像をスローで巻き戻してもいい。

 

それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

               (計 2293字)

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